新宿アイル

一ノ宮ガユウ

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東京トラム

東京トラム(13)

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 こまごめ駅で電車を降りて北改札を抜ける。
 5番出口から地上に出れば、午前零時を回った街は静かだった。

 周辺の地図を表示する。

 斜めに横切るのは山手線で、くっさくの下を通るその線路を南北の本郷通りがこまごめ橋でまたぐ。
 山手線ホームの西の端にあたり、本郷通りの地下を走る南北線は、こまごめ橋をはさんで南北に改札を設ける。

 本郷通りは、右にカーブを描きながら緩やかに下っていく。
 人通りはなく行き交う車も少ない。
 300メートルほど歩いて、坂を下り切ったところがしもふり橋交差点だった。

「……」

 ふと立ち止まって、パルノーは手首に装着した小型コンソールを操作した。
 モジャコの頭の上からジシェがのぞむ。

「どうしたでごさる?」
円環ロンドのコアを検知していない」
「存在してないってこと?」

 モジャコは怪訝に眉をひそめた。

「いまだ健在である以上、位相の変動をまったく検出しないというのは不可解です」

 もっとも、顔を見合わせたところで答えは無い。

 ❖ ❖ ❖ ❖ ❖

 9つの〈追憶のカケラ〉。

【9つ目▶?:?】

 橋の名前を残したのはしもふり橋停留場、現在の霜降橋交差点。


 東京駅八重洲口のとおり三丁目から日本橋、まんせい橋を経由し、しまを通り抜けて本郷通りを北上、こまごめ橋を経由して王子駅前まで結んだ19系統が南北に通っていた。

 本郷追分から先は、現在の地下鉄南北線のルートに重なる。

【路面電車の停留場に名前を残した橋 ➤ しもふり橋】

 川に架かっていた。


 川は、染井霊園付近にあった長池を水源とし、不忍しのばずのいけに注いでいた川。
 上流は谷戸川または境川、下流はあいぞめ川とも呼ばれた。

 市街化の進行にともない、1930年代に埋められたが、いまでも北区としま区、文京区とたいとう区の蛇行する区境に痕跡を留めている。

 ❖ ❖ ❖ ❖ ❖

 交差点の南西の角でハルは携帯おおぬさを高く掲げた。
 足下から4つの正三角形で構成されたシンプルな立体、せいめんたいが回転しながら昇ってきた。

 立体はキラキラと輝く粒子を残して消えていく。
 すると、そこには不思議な容器が残るのだった。


 手のひらにおさまるくらいのあおい、半透明の球体。
 それ自体に光はないのに、夜の色を映して虹のように輝き、見る方向によって表情を変化させる。
 半透明とはいっても容器そのものの色は濃く、中はほとんど見通せない。

 液体なのか気体なのか、傾けると何がゆっくり動いて見えた。

「メモリーカード……じゃない……?」
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