新宿アイル

一ノ宮ガユウ

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新宿アイル

新宿アイル(16)

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 ——と、デッサは透明なアクアマリンの瞳でリグナを見た。


 なぜ勝てなかったのか——?

 次世代型ルドゥフレーデ——試作だけに終わり廃棄された失敗作。
 すべての能力が中途半端で、単体では何もできない役立たず。

 探査・さくてきに至っては、人間の感覚を借りなければならないというありさまで、できることといえば人間と共闘することくらい。

 すべてにおいてガルバルデのほうが優れている——はずだった。

 結果は見てのとおりで、しかも自分はといえば、肝心なところで役に立たないどころか敵に制御を奪われ、味方を裏切る始末。

 すべてにおいてガルバルデのほうが優れている——?
 笑わせる。

 ルドゥフレーデとガルバルデとでは、開発された年代が半世紀も隔たっている。性能がよいのは当然のことだ、自慢することではない。

 だが、そんなことに自惚れ、現実を見ようともしなかったのが自分だ。

 リグナは変えようのない事実はそのままに受け容れ、それならばどうするべきか、どうあるべきか、ひたむきに考え、無いものは補いあい、手をとりあって歩んできたのだ。
 敵うはずがない。

 ただ、だからといってこのまま諦めるわけにはいかない。

 そん矜持きょうじは隣り合わせだ。
 慢心を捨て、誠実に歩いていきたい。
 自分にもできるだろうか——リグナと同じことを。


 ——と、勝手にアテレコしてみて、うーん、どうだろ? とミチルは自分で否定した。

 丸眼鏡はなんとなーく、デフォルメされたデッサを想像して見た。

 こめかみに怒りのマークのSDデッサがリグナにガンをつけている。
 その後ろには、超極太ゴシック体で「なめんなよ、コラ」という文字が浮かんでいた……。


(絶対に負けは認めないんだろうなー)

 ミチルは思う。

 リグナのほうは、ほんじゃらけー、と我関せず無関心。


 デッサは額の髪飾りから小さなカードを取り出した。

「正攻法では絶対に勝てない。わたしとリグナを完全にシンクロさせろ」

 ミチルはカードを受け取ってゴーグルに挿入した。
 リグナと同期していた感覚に、デッサのものが混じって目が回る——が、目が回って困るほどの運動能力もないのですぐに慣れた。

「いいか?」

 デッサはミチルに指を突きつけた。

「わたしはガルバルデだ。出来損ないのルドゥフレーデにできて、ガルバルデにできないことなどあるはずがない。おまえを信頼してやる。その代わり全力を尽くせ」


 答えを待たずに、デッサはユツァに向かって突っ込んでいった。

 リグナも続いてノランへ。
 ノランは、ヒャヒャ、と笑ってリグナの攻撃を軽く受け止めた。

「ぬるい! ぬる過ぎる!!」

 すぐに反撃に転じ、ノランはリグナを押しはじめた。

 それを、きょうあいな空間と駅の構造物を巧みに使ってリグナはかわしていく——が、ノランのたたみかけるような攻撃は激しく、まるで余裕がない。
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