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セグレンデの二つ耳
ゾックゾクスルヤロ
しおりを挟む「でねでね、じゃあ、日本のどこがいいかな~、って考えてたら、しもうさ!! ビビビッて感じ!?」
ああなるほど——と思いかけて、いやいや、と圭は脳内で否定した。
「下総」は「因幡」と同様、いわゆる旧国名のひとつで、千葉県北部と茨城県南西部に、埼玉県と東京都の東端を加えた地域に当たる。
古くは「総の国」とされた地域が「上つ総の国」と「下つ総の国」の2つに分かれ、このうち、「しもつふさ」が「しもふさ」に転じ、さらに「しもうさ」と呼ばれるようになった——とされる(『上つ総』は『かづさ』に転じ、その後『かずさ』)。
「総」は麻のことで、良い麻がとれたところから「総の国」。
つまり、「しもうさ」の「うさ」はもとの発音では「ふさ」であって、それは麻のことであるから、うさぎとは関係がない……。
が、強く反論したいかと問われれば、そんなことは決してない。
なにしろ、全国的に見ても群を抜いて影の薄い——というか、存在感のないこの地名を、住んでいる人間でさえ日常的に使うことなく、愛着がまったくない。
つい最近まですっかり忘れていたくらいだ。
まあ、気に入ってもらえたのなら、よしとしよう……。
「ま、そういうわけだから♪ 今後ともよろしくね~♥」
「は、はあ……」
カルナはご満悦でニッコニコ。
圭は苦笑い。
通信を終えてから、圭は、あ、と声を漏らした。
(伝えるの忘れたけど……、まさか知っているよね……)
実は、セーグフレード領シモウサと下総国の範囲は一致しない。
北へ半分ずれているのだ。
内閣総理大臣曰く、手賀沼と印旛沼より向こうならまあいいや——とのことで。
したがって、千葉県側では県庁所在地の千葉や主要都市の船橋、松戸、市川のほか、某夢の国でおなじみの某浦安や、成田空港を要する成田の大部分が含まれない一方、茨城県側では、本来は常陸国である部分まではみ出し、筑波山や霞ケ浦まで含まれている。
日本政府における茨城県の認識と重要度なんてこんなものである……。
翌朝。
圭が出勤すると、ちょうど、ルクフェネがソファから起き上がったところだった。
結局そのまま眠ってしまったらしい。
「おはよう……」
欠伸をしながらぐーんと伸びをする。
目は半分眠ったまま、髪はボサボサ。
「何か淹れる?」
「緑茶もらえる? 濃いめの」
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