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「あの子はお前よりも思慮深く、心配は要らないとは思うが……お前のことがあったからな。少し様子を見てから王太子として立てるかを決める。本来ならば、お前が今日ここを卒業したらすぐにでも結婚させて立太子するつもりだったのだが、そうも行かなくなった。そのための儀式の準備も進めてきたのだが、それをそのまま流用するわけにも行かないだろう。少し時期を遅らせることにしよう。」
「そんな!わたしならそんな面倒なことにはならないでしょう!やっぱりわたしをこのまま……!」
なおも言い募ろうとするユーゴであったが、その言葉は国王の深いため息にかき消された。
「はぁ……。…………一度周りをよく見てみろ……。…………皆の目を見て、それでもまだ彼らがお前についてきてくれると思うのか?これだけわたしを含めた大勢を失望させたんだ、お前は。王太子として、時期国王としてお前を認めることなどできない。」
「……っ、そんな…………。」
国王の静かな、だが確固とした決定を告げる声に、ついにユーゴは膝をついた。
「……今後一切、王族の一員を名乗ることを、そしてわたしを父と呼ぶことは許さない。………………衛兵、ユーゴを連れ出せ。…………………………。……お前の道行に、幸あらんことを。」
国王からの命令に、戸惑いつつも逆らうことはできず、会場の隅に控えていた衛兵たちが動き出す。
両脇からガッチリと抱き抱えられる形になりながらもがっくりとうなだれたユーゴは、抵抗らしい抵抗を見せず、おとなしく連れ出されていった。
ガシャガシャと彼らが立てる音が遠ざかっていく。
後に残されたのは静寂のみ。
どう反応するのが正解なのか、皆がはかりかね、声を出せずにいるのだ。
「あの子はお前よりも思慮深く、心配は要らないとは思うが……お前のことがあったからな。少し様子を見てから王太子として立てるかを決める。本来ならば、お前が今日ここを卒業したらすぐにでも結婚させて立太子するつもりだったのだが、そうも行かなくなった。そのための儀式の準備も進めてきたのだが、それをそのまま流用するわけにも行かないだろう。少し時期を遅らせることにしよう。」
「そんな!わたしならそんな面倒なことにはならないでしょう!やっぱりわたしをこのまま……!」
なおも言い募ろうとするユーゴであったが、その言葉は国王の深いため息にかき消された。
「はぁ……。…………一度周りをよく見てみろ……。…………皆の目を見て、それでもまだ彼らがお前についてきてくれると思うのか?これだけわたしを含めた大勢を失望させたんだ、お前は。王太子として、時期国王としてお前を認めることなどできない。」
「……っ、そんな…………。」
国王の静かな、だが確固とした決定を告げる声に、ついにユーゴは膝をついた。
「……今後一切、王族の一員を名乗ることを、そしてわたしを父と呼ぶことは許さない。………………衛兵、ユーゴを連れ出せ。…………………………。……お前の道行に、幸あらんことを。」
国王からの命令に、戸惑いつつも逆らうことはできず、会場の隅に控えていた衛兵たちが動き出す。
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