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十五話
***
しばらくして、仁奈は冷蔵庫に入ってた物で何かを作り出す。
男は小さな帳面にメモを取りながら、カウンターに座って辺りを見渡す。
(メニュー札に書かれてる字はみんな手書きなのか?・・・・・・)
男は仁奈のほうを見て、
「ここに書かれてるメニュー札の字ってもしかして手書き?」
と訊ねた。
「そうですよ。みんな手書きです」
「そうなのか・・・・・・ん?」
男は漫画や雑誌が置いてある本棚を見る。
(あれってもしかして・・・・・・)
「え~と夏山仁奈さんだっけ?さっき免許証見せてもらった時そう書いてあったような気がしたんだけど」
「そうです。夏山仁奈です。そういえばあなたの名前をまだ聞いてませんでしたね」
「俺は加藤茂」
「茂さんですか」
「あとさっきから思ってたけど、敬語じゃなくタメ口でいいよ。俺もさっきからタメ口だし」
「そうですか。ではお言葉に甘えてタメ口で話すね」
「所で、本棚に置いてある『雨の時に雨宿りしなかったら』のコミカライズが置いてあるけど、これは仁奈さんも読んだのかい?」
「もちろん。とても面白くて何度も読んだよ」
「そうか」
茂が少しニヤける。
「今日もその映画を観に行ったんだけど、とても面白かったよ」
「そうか、面白かったか。それは嬉しいね」
「嬉しい?」
「あ、いや、俺もこれが好きでそういう話を聞くと自分のことのように嬉しくて思わず・・・・・・」
茂は頭を掻いて、照れくさそうに話す。
「あ~それはわかる。あたしも自分の作った料理や好きなものを褒められるとなんだか嬉しいし」
「あ~だよね。ちなみにどのシーンが好きだったりする?」
「ん~沢山あり過ぎて、迷うけどやっぱり最初に主人公智が雨宿りしてるヒロイン静香に傘を貸してあげるシーンかな」
「あ~あそこか。俺もあそこのシーンは好き」
「一度は静香の前を通り過ぎるんだけど、そこから後ろ歩きで戻って、傘を貸すというのが印象に残ってて」
「なるほどな」
「あとは動物園で迷子で泣いてる男の子をあやすシーンも好きかな」
「あ~あそこか」
「あとは言ったら切りが無いかな」
「確かにな。ちなみに原作小説を読んだことは?」
「ないですね。漫画のほうが読みやすいですし」
「そっか・・・・・・」
茂はなんだか残念そうな声で言った。
「はい、できたよ。召し上がって」
仁奈は茂に料理を渡す。
「ありがとう」
と言いながら、茂は料理の盛られた皿を受け取る。
皿に盛られてたのは半熟のトロトロした玉子にケチャップのかかったオムライスであった。
「オムライスなんて久しぶりだな」
「温かいうちに召し上がって」
「じゃあいただきます」
茂が用意されたスプーンでオムライスを食べる。
「おほっうまっ!」
それを聞いて、仁奈が微笑む。
(玉子は半熟でご飯はお粥に近いけど、俺が酒呑んでたのに気づいて、そういうふうにしてくれたのか?だとしたら・・・・・・)
「さすがプロだな。文句なしの美味さだ」
「それはありがとう」
「そういえば、ここって店兼家なんだよな?」
「うん。そうだよ」
調理をしながら、仁奈が答える。
「何人で暮らしてるんだ?」
「あたし一人だよ」
「一人?」
「そうだよ。父さんも母さんも死んじゃって、この店兼家はあたし一人だけ」
「・・・・・・そうか、ごめん。変なこと聞いちゃったな」
「そんなことはないよ。気にしないで」
仁奈は自分で作ったオムライスを持って茂の隣に座る。
「・・・・・・」
しばらくして──
「ご馳走でした。とても美味しかった」
「ありがとう」
「これだけ美味ければ、お客もそれなりに来てるんじゃないか?」
「まあ、おかげさまで」
「もし、覆面調査員が来たら星三つはとれるんじゃないか?」
と笑顔で茂が言った。
「いやいや、さすがにそれは無理だよ」
と言いながら、嬉しそうに微笑む仁奈。
「ちなみにお代はいくらで?」
「お代はいいよ。今回はあたしが誘ったんだし」
「いやいやそうはいかない、俺は休みと知らずにここへ来て、ベンチで寝て迷惑をかけた。その上ご馳走にもなった。さすがにそのまま帰るのも気が引ける」
「いや、そんな気にしなくて大丈夫だよ!」
「でも、俺は酔ってたとはいえ、いろいろ失礼なことも言っちゃったし・・・・・・」
「大丈夫だよ!確かにムッとしたこともあったけど、茂さんはまだマシなほうだよ」
「ムッとしたってことは多少は怒ったってことだろ?やっぱりこのまま帰っては俺の気が済まねえよ」
「いや、それはその・・・・・・う~ん、分かりました。ちょっと待って下さい」
仁奈が奥から紙らしき物を取る。
そして、
「でしたら、今度はお店が開店してる時に来て下さい。もちろんその時はお代は貰うので」
と言ってお店の定休日が書かれた紙を茂に渡す。
「・・・・・・なるほど、基本的な定休日は月曜日と第一、第三日曜日と第二、第四火曜日か。あとはお盆休みと正月休みね」
「あとはあたしの都合で休む時もあるけど、その時は数日前に手書きで書いた紙を入り口に貼っとくから、お店来た時は入り口を確認してください。それからネットでも確認はできます」
「わかった。じゃあ今度は開店してる時に来るよ」
「うん」
と仁奈が笑顔で言った。
「それじゃあ、今日はありがと」
「いえ、どういたしまして」
仁奈が茂に向けて軽く手を振って、茂は店を出た。
茂が店の入り口を見る。
(ここにも定休日が書いてあったのか。次からは気をつけないとな)
しばらくして、仁奈は冷蔵庫に入ってた物で何かを作り出す。
男は小さな帳面にメモを取りながら、カウンターに座って辺りを見渡す。
(メニュー札に書かれてる字はみんな手書きなのか?・・・・・・)
男は仁奈のほうを見て、
「ここに書かれてるメニュー札の字ってもしかして手書き?」
と訊ねた。
「そうですよ。みんな手書きです」
「そうなのか・・・・・・ん?」
男は漫画や雑誌が置いてある本棚を見る。
(あれってもしかして・・・・・・)
「え~と夏山仁奈さんだっけ?さっき免許証見せてもらった時そう書いてあったような気がしたんだけど」
「そうです。夏山仁奈です。そういえばあなたの名前をまだ聞いてませんでしたね」
「俺は加藤茂」
「茂さんですか」
「あとさっきから思ってたけど、敬語じゃなくタメ口でいいよ。俺もさっきからタメ口だし」
「そうですか。ではお言葉に甘えてタメ口で話すね」
「所で、本棚に置いてある『雨の時に雨宿りしなかったら』のコミカライズが置いてあるけど、これは仁奈さんも読んだのかい?」
「もちろん。とても面白くて何度も読んだよ」
「そうか」
茂が少しニヤける。
「今日もその映画を観に行ったんだけど、とても面白かったよ」
「そうか、面白かったか。それは嬉しいね」
「嬉しい?」
「あ、いや、俺もこれが好きでそういう話を聞くと自分のことのように嬉しくて思わず・・・・・・」
茂は頭を掻いて、照れくさそうに話す。
「あ~それはわかる。あたしも自分の作った料理や好きなものを褒められるとなんだか嬉しいし」
「あ~だよね。ちなみにどのシーンが好きだったりする?」
「ん~沢山あり過ぎて、迷うけどやっぱり最初に主人公智が雨宿りしてるヒロイン静香に傘を貸してあげるシーンかな」
「あ~あそこか。俺もあそこのシーンは好き」
「一度は静香の前を通り過ぎるんだけど、そこから後ろ歩きで戻って、傘を貸すというのが印象に残ってて」
「なるほどな」
「あとは動物園で迷子で泣いてる男の子をあやすシーンも好きかな」
「あ~あそこか」
「あとは言ったら切りが無いかな」
「確かにな。ちなみに原作小説を読んだことは?」
「ないですね。漫画のほうが読みやすいですし」
「そっか・・・・・・」
茂はなんだか残念そうな声で言った。
「はい、できたよ。召し上がって」
仁奈は茂に料理を渡す。
「ありがとう」
と言いながら、茂は料理の盛られた皿を受け取る。
皿に盛られてたのは半熟のトロトロした玉子にケチャップのかかったオムライスであった。
「オムライスなんて久しぶりだな」
「温かいうちに召し上がって」
「じゃあいただきます」
茂が用意されたスプーンでオムライスを食べる。
「おほっうまっ!」
それを聞いて、仁奈が微笑む。
(玉子は半熟でご飯はお粥に近いけど、俺が酒呑んでたのに気づいて、そういうふうにしてくれたのか?だとしたら・・・・・・)
「さすがプロだな。文句なしの美味さだ」
「それはありがとう」
「そういえば、ここって店兼家なんだよな?」
「うん。そうだよ」
調理をしながら、仁奈が答える。
「何人で暮らしてるんだ?」
「あたし一人だよ」
「一人?」
「そうだよ。父さんも母さんも死んじゃって、この店兼家はあたし一人だけ」
「・・・・・・そうか、ごめん。変なこと聞いちゃったな」
「そんなことはないよ。気にしないで」
仁奈は自分で作ったオムライスを持って茂の隣に座る。
「・・・・・・」
しばらくして──
「ご馳走でした。とても美味しかった」
「ありがとう」
「これだけ美味ければ、お客もそれなりに来てるんじゃないか?」
「まあ、おかげさまで」
「もし、覆面調査員が来たら星三つはとれるんじゃないか?」
と笑顔で茂が言った。
「いやいや、さすがにそれは無理だよ」
と言いながら、嬉しそうに微笑む仁奈。
「ちなみにお代はいくらで?」
「お代はいいよ。今回はあたしが誘ったんだし」
「いやいやそうはいかない、俺は休みと知らずにここへ来て、ベンチで寝て迷惑をかけた。その上ご馳走にもなった。さすがにそのまま帰るのも気が引ける」
「いや、そんな気にしなくて大丈夫だよ!」
「でも、俺は酔ってたとはいえ、いろいろ失礼なことも言っちゃったし・・・・・・」
「大丈夫だよ!確かにムッとしたこともあったけど、茂さんはまだマシなほうだよ」
「ムッとしたってことは多少は怒ったってことだろ?やっぱりこのまま帰っては俺の気が済まねえよ」
「いや、それはその・・・・・・う~ん、分かりました。ちょっと待って下さい」
仁奈が奥から紙らしき物を取る。
そして、
「でしたら、今度はお店が開店してる時に来て下さい。もちろんその時はお代は貰うので」
と言ってお店の定休日が書かれた紙を茂に渡す。
「・・・・・・なるほど、基本的な定休日は月曜日と第一、第三日曜日と第二、第四火曜日か。あとはお盆休みと正月休みね」
「あとはあたしの都合で休む時もあるけど、その時は数日前に手書きで書いた紙を入り口に貼っとくから、お店来た時は入り口を確認してください。それからネットでも確認はできます」
「わかった。じゃあ今度は開店してる時に来るよ」
「うん」
と仁奈が笑顔で言った。
「それじゃあ、今日はありがと」
「いえ、どういたしまして」
仁奈が茂に向けて軽く手を振って、茂は店を出た。
茂が店の入り口を見る。
(ここにも定休日が書いてあったのか。次からは気をつけないとな)
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