自分では満足出来ない旦那様へ

りこりー

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第一章

もういない

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「どういう事だ?きちんと教えてくれ…」

「はぁ…まず、最初は媚薬を盛られて仕方なかったのかもしれない。けれど、媚薬を盛られる前にリタ嬢からの接触はなかったの?」

「いや、何度か接触はあった…と思う」

「なら何故、彼女から距離を取らなかったの?媚薬って何に盛られたの?」

「距離は取ってたつもりだった。それに媚薬は酒に入ってて…」

「それを誰に渡されたの?」

「リタ嬢に…」

 脳無し、馬鹿、考える力もないのかしら…頭が痛い。ため息をつくとびくっとベンジャミンの肩が跳ねた。

「逃げれなかったの?」

「薬で朦朧としていたし…」

「手足は拘束されていた?」

「いや…」

「逃げようと思えば逃げれるでしょ」

「そんな!キャシーは飲んだことないからっ」

「あるに決まってるでしょ。護身術を習う時に媚薬を無理やり飲まされた場合にというものがあるのよ。私でも逃げれるのに貴方が逃げれないわけないわ。結局は意志が弱かっただけじゃない」

 現実を突きつけられて、呆気にとられたみたいだ。結局は自分の選択で、自分の行動のせいなのだ。

「それにそれが私を抱かなかったことには繋がらないわ」

「な!?それだけは違う!」

「まだ言うの?…じゃあ、聞くけど…毎回リタ嬢は何回も強要したの?毎日強要したの?本当に一日も欠かさず?」

「いや、何もなかった日に君に拒否されてしまって…」

「たった一回拒否されて、拒否されるのが怖くなったの?」

「あぁ…」

「じゃあ、閨の時に自分のせいで機能しない夫を何回も見る私はどんな気持ちだったと思う?何回拒否されたんだと思う?それでも、貴方との子が欲しかった…だから、色んな事を試したし、自分の体がダメなのかもしれないと自分を責めたわ。それをたった一回拒否されたからですって?それに私は拒否したんじゃなくて、無理してない?と聞いただけよ…貴方ってすごく自分勝手なのね。まぁ、でも、その穢れた体に抱かれなくて良かったわ」

「……」

 遂には押し黙ってしまったベンジャミンにもう寄り添う気持ちはない。何度も閨を拒否された惨めな自分も、貴方を心から愛した自分も、もう消えてしまったのだ。もう居ない。

「今日はもう遅いから屋敷に居てもいいわ。明日には人を呼ぶから出ていって」

「…もう本当に駄目なのか…?」

「それを聞ける貴方の神経が分からないわ…」

「…ごめん」
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