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第一章
これまでの私の気持ちさえ奪う
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次の日、人を呼び、ベンジャミンの荷物は男爵家へ運ばせた。嫡男家族が居るのだから、すぐにでもまた引っ越しになるだろうけどこっちの知った事ではない。もうどこにでも行ってくれ。顔も見たくないし、見るだけでときめいた茶色の髪と水色の瞳がトラウマになりそうだ。
いざとなったら近衛騎士団だった経験もあるんだから傭兵や騎士団にも再就職できるだろう。アシュントン男爵家からは謝罪の手紙と慰謝料が送られてきた。手紙は受け取ったけれど慰謝料は受け取らなかった。貴族から平民になることが確定してるのだから最後の恩情だった。ベンジャミンの次の家の引っ越し資金にでも使ってくださいと添えた。
それから、何か月間は商会と領主としての仕事が忙しくてベンジャミンの事を考える暇もなかった。仕事に慣れた頃には、あんなに大きかった彼の存在も心の隅っこに移動していた。
「なんだか吹っ切れた顔してるね?」
「そう…?私もう帰るわね、ララが今日は私の好きなビーフシチューですよって言ってたから。じゃあね…」
「キャシー…」
相変わらず、うちの商会と取引してるダニエルは口説いてくるけど素直に頷く事は出来なかった。あの出来事で、変に潔癖症を発症してしまい、女性経験ある男性が駄目になってしまった。前は普通に触れられたダニエルさえ汚いと思ってしまう。
ダニエルは悲しそうにしてたけど、こればっかりは自分でも治しようがないから仕方ない。
一年という呆気ない夫婦生活だったけれど、彼を思い続けた十三年は私にとってはかけがえのない経験だ。ここまで男性潔癖を発症してしまった自分は結婚は無理だろう。トラウマを植え付けられたけれど、一生分のときめきをあそこに使ってしまったのだと思う事にした。
「ふぅ…」
屋敷に着くとすぐに自室へ向かい、ベットにダイブした。慣れたと言えど、まだ体は疲れている。夕食まで少し時間もあるし、ひと眠りしようとしたのだ。
「…ん!?」
うつ伏せでねていた自分の口を塞がれ背中に何かが覆いかぶさってきて、目が覚めた。ずしりとした体重が男性だと知らせてくる。物取りだろうか?護衛はどうしたんだろうか?
「キャシー会いたかった」
その声に戦慄した。
「ベン…」
「あぁ、そう呼んでくれるのか?嬉しいよ」
違う、つい癖で呼んだだけで…特別な意味などないのに。ベンジャミンの指先は自分のスカートを捲り上げて、その先に何が待っているかは考えなくでも分かった。
「やめて、ベン!」
「なんで?俺たち夫婦じゃないか?」
「違うわ!もう何か月も前に離婚してるもの!」
あまりの重さと力強さに身動ぎさえ出来ない。腰に当たる固いものに目が見開く。本当にする気なの…?
「キャシー…分かる?ちゃんと反応してるだろ?キャシーに反応してるんだ」
「やめっ…やめて…」
ごろごりと押し当てられる初めての感覚。あんなに欲しかった彼の反応なのに今は恐怖しか感じられない。
いざとなったら近衛騎士団だった経験もあるんだから傭兵や騎士団にも再就職できるだろう。アシュントン男爵家からは謝罪の手紙と慰謝料が送られてきた。手紙は受け取ったけれど慰謝料は受け取らなかった。貴族から平民になることが確定してるのだから最後の恩情だった。ベンジャミンの次の家の引っ越し資金にでも使ってくださいと添えた。
それから、何か月間は商会と領主としての仕事が忙しくてベンジャミンの事を考える暇もなかった。仕事に慣れた頃には、あんなに大きかった彼の存在も心の隅っこに移動していた。
「なんだか吹っ切れた顔してるね?」
「そう…?私もう帰るわね、ララが今日は私の好きなビーフシチューですよって言ってたから。じゃあね…」
「キャシー…」
相変わらず、うちの商会と取引してるダニエルは口説いてくるけど素直に頷く事は出来なかった。あの出来事で、変に潔癖症を発症してしまい、女性経験ある男性が駄目になってしまった。前は普通に触れられたダニエルさえ汚いと思ってしまう。
ダニエルは悲しそうにしてたけど、こればっかりは自分でも治しようがないから仕方ない。
一年という呆気ない夫婦生活だったけれど、彼を思い続けた十三年は私にとってはかけがえのない経験だ。ここまで男性潔癖を発症してしまった自分は結婚は無理だろう。トラウマを植え付けられたけれど、一生分のときめきをあそこに使ってしまったのだと思う事にした。
「ふぅ…」
屋敷に着くとすぐに自室へ向かい、ベットにダイブした。慣れたと言えど、まだ体は疲れている。夕食まで少し時間もあるし、ひと眠りしようとしたのだ。
「…ん!?」
うつ伏せでねていた自分の口を塞がれ背中に何かが覆いかぶさってきて、目が覚めた。ずしりとした体重が男性だと知らせてくる。物取りだろうか?護衛はどうしたんだろうか?
「キャシー会いたかった」
その声に戦慄した。
「ベン…」
「あぁ、そう呼んでくれるのか?嬉しいよ」
違う、つい癖で呼んだだけで…特別な意味などないのに。ベンジャミンの指先は自分のスカートを捲り上げて、その先に何が待っているかは考えなくでも分かった。
「やめて、ベン!」
「なんで?俺たち夫婦じゃないか?」
「違うわ!もう何か月も前に離婚してるもの!」
あまりの重さと力強さに身動ぎさえ出来ない。腰に当たる固いものに目が見開く。本当にする気なの…?
「キャシー…分かる?ちゃんと反応してるだろ?キャシーに反応してるんだ」
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