11 / 30
第二章
少しずつ
しおりを挟む
あれから2年。
ベンジャミンは鉱山強制労働になったと聞いた。数年で解放されるらしいと聞いたダニエルが軽い処罰過ぎると物凄く怒っていた。未遂だったし、自分はベンジャミンともう関わらないならなんでも良かった。それに最後に見せた彼の顔は、本当に後悔してる顔だった。それだけで許してしまう自分の愚かさに呆れてしまうけど…。
「おーい、まだー?」
私は、ダニエルといまだに友人を続けている。まだ怖くて婚約や結婚には踏み切れない。それでも、時たまフラッシュバックを起こす私をダニエルは傍で支えてくれて少しずつ距離を近づけていった。
「今行くわ!」
今日は仕事も一段落したし、久しぶりに街に買い物に行こうとダニエルに誘われた。こうやってデートみたいな事をするのは初めてだ。
それにダニエルには恋人になってほしいけど無理はして欲しくないと言われ、ずっとその言葉に甘えてきた。
もうダニエルも25歳、自分も20歳なのだ。結婚適齢期だし、私も後継ぎが必要だ。平民であるダニエルとの結婚は反対の声もあがるだろう。けれど、それを撥ね退けるだけの精神を今までは持ち合わせてなかった。少しずつ回復してきた精神と自分もダニエルに惹かれ始めている心に嘘はつけない。
そろそろ結婚してもいいかもしれない。
「あ、あれ美味しそう!」
「ん?あぁ、新しく出来たカフェか!僕も行ってみたかったんだ!入ってみよう」
店から出てきた客が持っていたクレープに私が興味を示すとすぐに入ろうと腕を引かれた。貴族ではありえない立ち食いを初めてした。みっともないと母には怒られてしまうかもしれない。けれど、楽しくて美味しくて…時間を忘れて遊んでしまった。
海が見える堤防に行って、ベンチに座る。まだ少し怖いけど、ダニエルの隣に座った。距離はあるけれど、隣に座ることもだいぶ平気になった。腕も触られるのも平気になった。もしかしたら、それ以上も…。
綺麗な夕日を見ていたら、隣に座っていたダニエルが急にこちらに向き直った。
「キャシー…その」
「どうしたの?」
真剣なダニエルの顔に妙に緊張してしまう。手を握られるが、汗が滲んでしまっていないか不安になる。
「僕の奥さんになってほしい」
片膝をついて箱から指輪を見せてくるダニエルになんと答えたらいいのかと押し黙ってしまう。まだ心が揺らいでいる。
女性と経験あるダニエルと一緒になって大丈夫?
自分が年を取って美しさがなくなったら、飽きられたら、また不貞されるんじゃないの?
ベンジャミンとは違うと言い切れる?
「不安があるなら言って欲しい、もう20年も君に片思いしてるんだ。どんなことだって僕に出来ることなら寄り添うから」
「女性経験があるダニエルが怖いの…その、よく娼館に出入りしているでしょう?」
「え?僕、女性経験はないけど…」
「そ、そうなの!?」
「君に20年も片思いしているのにそんなことするわけないだろう?」
そんな…ずっとダニエルを勘違いしていたなんてと謝った。君が嫌なら娼館にはもう荷運びはしないよとダニエルは笑っていた。
「あの…私で良ければ…その…結婚するわ。すぐにとは無理だけど、とりあえず婚約なら…」
「本当!?」
「えぇ…」
指輪を薬指に嵌められて、何とも言えない幸せを感じた。以前の婚約指輪と結婚指輪は、6歳から婚約していたし、結婚式で嵌められたからこんな幸せは感じなかった。なんだろう…この感じ。ふわふわする。
あれが幸せの絶頂だったと思ったけれど、それは自分の思い込みだったのかも知れない。
ベンジャミンは鉱山強制労働になったと聞いた。数年で解放されるらしいと聞いたダニエルが軽い処罰過ぎると物凄く怒っていた。未遂だったし、自分はベンジャミンともう関わらないならなんでも良かった。それに最後に見せた彼の顔は、本当に後悔してる顔だった。それだけで許してしまう自分の愚かさに呆れてしまうけど…。
「おーい、まだー?」
私は、ダニエルといまだに友人を続けている。まだ怖くて婚約や結婚には踏み切れない。それでも、時たまフラッシュバックを起こす私をダニエルは傍で支えてくれて少しずつ距離を近づけていった。
「今行くわ!」
今日は仕事も一段落したし、久しぶりに街に買い物に行こうとダニエルに誘われた。こうやってデートみたいな事をするのは初めてだ。
それにダニエルには恋人になってほしいけど無理はして欲しくないと言われ、ずっとその言葉に甘えてきた。
もうダニエルも25歳、自分も20歳なのだ。結婚適齢期だし、私も後継ぎが必要だ。平民であるダニエルとの結婚は反対の声もあがるだろう。けれど、それを撥ね退けるだけの精神を今までは持ち合わせてなかった。少しずつ回復してきた精神と自分もダニエルに惹かれ始めている心に嘘はつけない。
そろそろ結婚してもいいかもしれない。
「あ、あれ美味しそう!」
「ん?あぁ、新しく出来たカフェか!僕も行ってみたかったんだ!入ってみよう」
店から出てきた客が持っていたクレープに私が興味を示すとすぐに入ろうと腕を引かれた。貴族ではありえない立ち食いを初めてした。みっともないと母には怒られてしまうかもしれない。けれど、楽しくて美味しくて…時間を忘れて遊んでしまった。
海が見える堤防に行って、ベンチに座る。まだ少し怖いけど、ダニエルの隣に座った。距離はあるけれど、隣に座ることもだいぶ平気になった。腕も触られるのも平気になった。もしかしたら、それ以上も…。
綺麗な夕日を見ていたら、隣に座っていたダニエルが急にこちらに向き直った。
「キャシー…その」
「どうしたの?」
真剣なダニエルの顔に妙に緊張してしまう。手を握られるが、汗が滲んでしまっていないか不安になる。
「僕の奥さんになってほしい」
片膝をついて箱から指輪を見せてくるダニエルになんと答えたらいいのかと押し黙ってしまう。まだ心が揺らいでいる。
女性と経験あるダニエルと一緒になって大丈夫?
自分が年を取って美しさがなくなったら、飽きられたら、また不貞されるんじゃないの?
ベンジャミンとは違うと言い切れる?
「不安があるなら言って欲しい、もう20年も君に片思いしてるんだ。どんなことだって僕に出来ることなら寄り添うから」
「女性経験があるダニエルが怖いの…その、よく娼館に出入りしているでしょう?」
「え?僕、女性経験はないけど…」
「そ、そうなの!?」
「君に20年も片思いしているのにそんなことするわけないだろう?」
そんな…ずっとダニエルを勘違いしていたなんてと謝った。君が嫌なら娼館にはもう荷運びはしないよとダニエルは笑っていた。
「あの…私で良ければ…その…結婚するわ。すぐにとは無理だけど、とりあえず婚約なら…」
「本当!?」
「えぇ…」
指輪を薬指に嵌められて、何とも言えない幸せを感じた。以前の婚約指輪と結婚指輪は、6歳から婚約していたし、結婚式で嵌められたからこんな幸せは感じなかった。なんだろう…この感じ。ふわふわする。
あれが幸せの絶頂だったと思ったけれど、それは自分の思い込みだったのかも知れない。
120
あなたにおすすめの小説
白い結婚に、猶予を。――冷徹公爵と選び続ける夫婦の話
鷹 綾
恋愛
婚約者である王子から「有能すぎる」と切り捨てられた令嬢エテルナ。
彼女が選んだ新たな居場所は、冷徹と噂される公爵セーブルとの白い結婚だった。
干渉しない。触れない。期待しない。
それは、互いを守るための合理的な選択だったはずなのに――
静かな日常の中で、二人は少しずつ「選び続けている関係」へと変わっていく。
越えない一線に名前を付け、それを“猶予”と呼ぶ二人。
壊すより、急ぐより、今日も隣にいることを選ぶ。
これは、激情ではなく、
確かな意思で育つ夫婦の物語。
あなたに嘘を一つ、つきました
小蝶
恋愛
ユカリナは夫ディランと政略結婚して5年がたつ。まだまだ戦乱の世にあるこの国の騎士である夫は、今日も戦地で命をかけて戦っているはずだった。彼が戦地に赴いて3年。まだ戦争は終わっていないが、勝利と言う戦況が見えてきたと噂される頃、夫は帰って来た。隣に可愛らしい女性をつれて。そして私には何も告げぬまま、3日後には結婚式を挙げた。第2夫人となったシェリーを寵愛する夫。だから、私は愛するあなたに嘘を一つ、つきました…
最後の方にしか主人公目線がない迷作となりました。読みづらかったらご指摘ください。今さらどうにもなりませんが、努力します(`・ω・́)ゞ
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【完結】旦那様、その真実の愛とお幸せに
おのまとぺ
恋愛
「真実の愛を見つけてしまった。申し訳ないが、君とは離縁したい」
結婚三年目の祝いの席で、遅れて現れた夫アントンが放った第一声。レミリアは驚きつつも笑顔を作って夫を見上げる。
「承知いたしました、旦那様。その恋全力で応援します」
「え?」
驚愕するアントンをそのままに、レミリアは宣言通りに片想いのサポートのような真似を始める。呆然とする者、訝しむ者に見守られ、迫りつつある別れの日を二人はどういった形で迎えるのか。
◇真実の愛に目覚めた夫を支える妻の話
◇元サヤではありません
◇全56話完結予定
【完結】貴方が好きなのはあくまでも私のお姉様
すだもみぢ
恋愛
伯爵令嬢であるカリンは、隣の辺境伯の息子であるデュークが苦手だった。
彼の悪戯にひどく泣かされたことがあったから。
そんな彼が成長し、年の離れたカリンの姉、ヨーランダと付き合い始めてから彼は変わっていく。
ヨーランダは世紀の淑女と呼ばれた女性。
彼女の元でどんどんと洗練され、魅力に満ちていくデュークをカリンは傍らから見ていることしかできなかった。
しかしヨーランダはデュークではなく他の人を選び、結婚してしまう。
それからしばらくして、カリンの元にデュークから結婚の申し込みが届く。
私はお姉さまの代わりでしょうか。
貴方が私に優しくすればするほど悲しくなるし、みじめな気持ちになるのに……。
そう思いつつも、彼を思う気持ちは抑えられなくなっていく。
8/21 MAGI様より表紙イラストを、9/24にはMAGI様の作曲された
この小説のイメージソング「意味のない空」をいただきました。
https://www.youtube.com/watch?v=L6C92gMQ_gE
MAGI様、ありがとうございます!
イメージが広がりますので聞きながらお話を読んでくださると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる