おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件

ひきこ

文字の大きさ
26 / 27

彼氏面して(前)

しおりを挟む
 後輩でありDomだという冴島には、おれ自身もわかってなかったSubを見抜かれて以来、そっち方面でなにかと世話になってきた。

 例えば、とにもかくにもまずはプレイだ。最初はおれがマッサージ屋でコマンドに掛かったらしいところを、冴島が応急処置っつってしてくれたんだが。それがマッサージ屋なんて比べ物になんねえぐらいあまりにもすっきりしすぎて、詳しく教えてくれって頼んだよな。

 普通はダイナミクスなんて軽く人に言うもんじゃねえらしく、それもあってDomやらSubやらが実在するとも思っていなかったけど、いざ当事者になってみればただわざわざ言わねえだけってことだって理解した。冴島に関してはきっかけがきっかけだったから特殊ではあるが、職場の後輩にあんなこと頼むなんて今となっては相当やべえやつだったよなって今はちょっと反省してる。

 それでも結局、フリーだっつう冴島に甘えて定期的にプレイを教えて貰ってるうち、あまりにも気持ちよすぎて気づけばセックスまでするようになったのが最近だ。冴島にしてもおれ自身も、男相手に興奮すんのもビビったし、最終的にあんなことまでできんだなあ、なんて今でもちょっと他人事みたいに思っちまう。ああ、でもそういや担当医の真崎先生もそんなこと言ってたな。

 ――『私のパートナー実は年下の男性なんですよ」』

 あんときもえらい含みのある言い方するよなと思ってたけど、今になって思い返せばその言葉の解像度も少しは上がったんじゃねえかと思う。そんで、こういう話はベラベラと喋るもんじゃねえ、って前提を差し引いたとしてもちょっと恥じらったあの感じ、パートナーっていわゆる恋人って意味だよなってそれも今ならよくわかる。それにあの先生、ちょっと疲れた感じがまたなんとも言えねえ色気を……いや別に深い意味はねえんだけど。
 しかしあれだな、『も』っつうことはおれたちはどういう関係だと思われたんだろうな。あんときゃパートナーかっつう意味かと思ってたけど……仮にそういう意味であったとしても別にそうじゃねえしな。うん、やっぱ冴島は冴島だよな。すげえ信頼できる、おれの大事な可愛い後輩だ。



 とは言えおれもあんまり深くは考えてなかったんだが、ちょっと聞き捨てならねえ話が聞こえちまったんだよな。

 いや、おれたちが定期的にプレイをするようになってからおれはすこぶる体調がいいわけなんだが、それは冴島も同じらしい。
 あいつ結構でけえ身体してる上に仕事中は大体無表情だから第一印象はちょっと怖いって思われがちなんだが、最近は以前に比べて明らかに顔色がいいというか、柔らかくなってとっつきやすくなったらしく好評なのはおれも見てりゃあよくわかる。おかげで若手のランチや飲みなんかにも誘われることも増えたらしいんだが、どうやらほとんど断ってるらしい。


 おれと一緒にいるせいか? なんて一瞬責任を感じもしたが、いや別に毎日毎日ってわけじゃねえしせいぜい週の半分ぐらいか……と思えば多いっちゃ多いか。
 いやそうじゃねえ、どうやらあいつ、誘いを断られて食い下がった子に『恋人との約束が』的なこと言ってたらしいんだよな。……それ自体は別に断り文句としてそう言うことだってあるだろうが、問題はそれが本当だったら? おれがあいつを週の半分も拘束して、ましてセックスしてるなんて。そんなの、おれが相当やべえやつじゃねえ?

 そんな可能性に思い至って数日、そろそろ冴島に確認してやりてえって思ってるんだが、おれもいきなり冴島とプレイができなくなるとちょっと困っちまうから悩んでる。恋人がいる相手とのセックスはさすがにナシだとしても、プレイだって普通いい気はしねえだろ?
 だが半減でもいいからどうにかできねえか、とか、なんて言って交渉しようかと考えあぐねてる。マッサージ屋にはもう行かねえって約束しちまったし……いや、冴島との関係をやめるなら律義に守る必要もねえのかも?

 だいたいあいつも、それならそうと言ってくれりゃあいいのに、別に怒りゃしねえのに。でもまあちょっと……置いてかれちまったみたいな、ときどき思い出してはひゅっとするような寂しさはあるけどな。


 ――なんて、まとまらねえまま週末の夜が来ちまった。いつもの流れと同じなら、このあと冴島の部屋でプレイして、セックスもするはずだ。

「先輩、行きますか」
「ああー、うん。その前にさ、今日は外で飯食わねえ?」

 このまま部屋まで行けば、おれは絶対に切り出せずにセックスしちまう気しかしねえから。快楽には抗えねえからな。


 こうしてどうにか時間稼ぎに成功したので、飯屋を求めて繁華街をぶらぶら歩く。
 いつもなら雑談の話題なんていくらでもあるのに、妙に緊張しちまってなにを話せばいいのか全然わかんねえ。

「あのさ、お前――」
「はい?」
「おう、えっと……」

 よし、見切り発車だがもう聞いちまおう……っ、て。

「あーっ、また会ったねえ」
「はあ?」

 なんだよ! せっかく話を切り出したのにまたお前かよ。
 白衣を纏ったマッサージ屋の兄ちゃんは、今日も今日とて掴みどころがねえ。

「最近会えなくて寂しかったなあ、よかったらまた来てよ」
「あー、いや」

 行かねえ、って即答してえんだが今はちょっと、交渉次第では有りえんだよな。まあ馬鹿正直に言う必要は別にねえんだけど。

「だから、行きませんし……、行かせませんよ」
「あっ、おい」
 ああー、だよな、そうなるよな。
「……ふーん。へえ、そっか。うんうん」
「……?」

 いや、その意味深なニヤけ方はなんだっつうんだよ。

「いやぁ……、ふふ、わかりやすいよね。彼氏面!」
「は……ああ?」

 か、彼氏面って、おい、ちが、

「だったらなんですか? そういうことですので、他を当たって下さい。……行きますよ、浩汰さん」
「っあ、ちょっ……おい」
「うんうん、またね! 満足できなくなったらまた来てねぇ」

 これ見よがしに冴島の腕がおれの腰に回され引きずられるようにして歩き出す。
 兄ちゃんも兄ちゃんで、話がややこしくなるから勘弁してくれよ!

「あっメシ……」
「はぁ、またあんたって人は。隙がありすぎるんですよ」
「いや……それは」

 確かに隙があったのは認めるが、それはお前とのことを考えて――

「……俺以外、見なくていいですから」
「ああ、えっと、それなんだけど……」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

趣味で乳首開発をしたらなぜか同僚(男)が近づいてきました

ねこみ
BL
タイトルそのまんまです。

またのご利用をお待ちしています。

あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。 緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?! ・マッサージ師×客 ・年下敬語攻め ・男前土木作業員受け ・ノリ軽め ※年齢順イメージ 九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮 【登場人物】 ▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻 ・マッサージ店の店長 ・爽やかイケメン ・優しくて低めのセクシーボイス ・良識はある人 ▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受 ・土木作業員 ・敏感体質 ・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ ・性格も見た目も男前 【登場人物(第二弾の人たち)】 ▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻 ・マッサージ店の施術者のひとり。 ・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。 ・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。 ・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。 ▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受 ・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』 ・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。 ・理性が強め。隠れコミュ障。 ・無自覚ドM。乱れるときは乱れる 作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。 徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。 よろしくお願いいたします。

寝てる間に××されてる!?

しづ未
BL
どこでも寝てしまう男子高校生が寝てる間に色々な被害に遭う話です。

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

処理中です...