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彼氏面して(前)
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後輩でありDomだという冴島には、おれ自身もわかってなかったSubを見抜かれて以来、そっち方面でなにかと世話になってきた。
例えば、とにもかくにもまずはプレイだ。最初はおれがマッサージ屋でコマンドに掛かったらしいところを、冴島が応急処置っつってしてくれたんだが。それがマッサージ屋なんて比べ物になんねえぐらいあまりにもすっきりしすぎて、詳しく教えてくれって頼んだよな。
普通はダイナミクスなんて軽く人に言うもんじゃねえらしく、それもあってDomやらSubやらが実在するとも思っていなかったけど、いざ当事者になってみればただわざわざ言わねえだけってことだって理解した。冴島に関してはきっかけがきっかけだったから特殊ではあるが、職場の後輩にあんなこと頼むなんて今となっては相当やべえやつだったよなって今はちょっと反省してる。
それでも結局、フリーだっつう冴島に甘えて定期的にプレイを教えて貰ってるうち、あまりにも気持ちよすぎて気づけばセックスまでするようになったのが最近だ。冴島にしてもおれ自身も、男相手に興奮すんのもビビったし、最終的にあんなことまでできんだなあ、なんて今でもちょっと他人事みたいに思っちまう。ああ、でもそういや担当医の真崎先生もそんなこと言ってたな。
――『私のパートナーも実は年下の男性なんですよ」』
あんときもえらい含みのある言い方するよなと思ってたけど、今になって思い返せばその言葉の解像度も少しは上がったんじゃねえかと思う。そんで、こういう話はベラベラと喋るもんじゃねえ、って前提を差し引いたとしてもちょっと恥じらったあの感じ、パートナーっていわゆる恋人って意味だよなってそれも今ならよくわかる。それにあの先生、ちょっと疲れた感じがまたなんとも言えねえ色気を……いや別に深い意味はねえんだけど。
しかしあれだな、『も』っつうことはおれたちはどういう関係だと思われたんだろうな。あんときゃパートナーかっつう意味かと思ってたけど……仮にそういう意味であったとしても別にそうじゃねえしな。うん、やっぱ冴島は冴島だよな。すげえ信頼できる、おれの大事な可愛い後輩だ。
とは言えおれもあんまり深くは考えてなかったんだが、ちょっと聞き捨てならねえ話が聞こえちまったんだよな。
いや、おれたちが定期的にプレイをするようになってからおれはすこぶる体調がいいわけなんだが、それは冴島も同じらしい。
あいつ結構でけえ身体してる上に仕事中は大体無表情だから第一印象はちょっと怖いって思われがちなんだが、最近は以前に比べて明らかに顔色がいいというか、柔らかくなってとっつきやすくなったらしく好評なのはおれも見てりゃあよくわかる。おかげで若手のランチや飲みなんかにも誘われることも増えたらしいんだが、どうやらほとんど断ってるらしい。
おれと一緒にいるせいか? なんて一瞬責任を感じもしたが、いや別に毎日毎日ってわけじゃねえしせいぜい週の半分ぐらいか……と思えば多いっちゃ多いか。
いやそうじゃねえ、どうやらあいつ、誘いを断られて食い下がった子に『恋人との約束が』的なこと言ってたらしいんだよな。……それ自体は別に断り文句としてそう言うことだってあるだろうが、問題はそれが本当だったら? おれがあいつを週の半分も拘束して、ましてセックスしてるなんて。そんなの、おれが相当やべえやつじゃねえ?
そんな可能性に思い至って数日、そろそろ冴島に確認してやりてえって思ってるんだが、おれもいきなり冴島とプレイができなくなるとちょっと困っちまうから悩んでる。恋人がいる相手とのセックスはさすがにナシだとしても、プレイだって普通いい気はしねえだろ?
だが半減でもいいからどうにかできねえか、とか、なんて言って交渉しようかと考えあぐねてる。マッサージ屋にはもう行かねえって約束しちまったし……いや、冴島との関係をやめるなら律義に守る必要もねえのかも?
だいたいあいつも、それならそうと言ってくれりゃあいいのに、別に怒りゃしねえのに。でもまあちょっと……置いてかれちまったみたいな、ときどき思い出してはひゅっとするような寂しさはあるけどな。
――なんて、まとまらねえまま週末の夜が来ちまった。いつもの流れと同じなら、このあと冴島の部屋でプレイして、セックスもするはずだ。
「先輩、行きますか」
「ああー、うん。その前にさ、今日は外で飯食わねえ?」
このまま部屋まで行けば、おれは絶対に切り出せずにセックスしちまう気しかしねえから。快楽には抗えねえからな。
こうしてどうにか時間稼ぎに成功したので、飯屋を求めて繁華街をぶらぶら歩く。
いつもなら雑談の話題なんていくらでもあるのに、妙に緊張しちまってなにを話せばいいのか全然わかんねえ。
「あのさ、お前――」
「はい?」
「おう、えっと……」
よし、見切り発車だがもう聞いちまおう……っ、て。
「あーっ、また会ったねえ」
「はあ?」
なんだよ! せっかく話を切り出したのにまたお前かよ。
白衣を纏ったマッサージ屋の兄ちゃんは、今日も今日とて掴みどころがねえ。
「最近会えなくて寂しかったなあ、よかったらまた来てよ」
「あー、いや」
行かねえ、って即答してえんだが今はちょっと、交渉次第では有りえんだよな。まあ馬鹿正直に言う必要は別にねえんだけど。
「だから、行きませんし……、行かせませんよ」
「あっ、おい」
ああー、だよな、そうなるよな。
「……ふーん。へえ、そっか。うんうん」
「……?」
いや、その意味深なニヤけ方はなんだっつうんだよ。
「いやぁ……、ふふ、わかりやすいよね。彼氏面!」
「は……ああ?」
か、彼氏面って、おい、ちが、
「だったらなんですか? そういうことですので、他を当たって下さい。……行きますよ、浩汰さん」
「っあ、ちょっ……おい」
「うんうん、またね! 満足できなくなったらまた来てねぇ」
これ見よがしに冴島の腕がおれの腰に回され引きずられるようにして歩き出す。
兄ちゃんも兄ちゃんで、話がややこしくなるから勘弁してくれよ!
「あっメシ……」
「はぁ、またあんたって人は。隙がありすぎるんですよ」
「いや……それは」
確かに隙があったのは認めるが、それはお前とのことを考えて――
「……俺以外、見なくていいですから」
「ああ、えっと、それなんだけど……」
例えば、とにもかくにもまずはプレイだ。最初はおれがマッサージ屋でコマンドに掛かったらしいところを、冴島が応急処置っつってしてくれたんだが。それがマッサージ屋なんて比べ物になんねえぐらいあまりにもすっきりしすぎて、詳しく教えてくれって頼んだよな。
普通はダイナミクスなんて軽く人に言うもんじゃねえらしく、それもあってDomやらSubやらが実在するとも思っていなかったけど、いざ当事者になってみればただわざわざ言わねえだけってことだって理解した。冴島に関してはきっかけがきっかけだったから特殊ではあるが、職場の後輩にあんなこと頼むなんて今となっては相当やべえやつだったよなって今はちょっと反省してる。
それでも結局、フリーだっつう冴島に甘えて定期的にプレイを教えて貰ってるうち、あまりにも気持ちよすぎて気づけばセックスまでするようになったのが最近だ。冴島にしてもおれ自身も、男相手に興奮すんのもビビったし、最終的にあんなことまでできんだなあ、なんて今でもちょっと他人事みたいに思っちまう。ああ、でもそういや担当医の真崎先生もそんなこと言ってたな。
――『私のパートナーも実は年下の男性なんですよ」』
あんときもえらい含みのある言い方するよなと思ってたけど、今になって思い返せばその言葉の解像度も少しは上がったんじゃねえかと思う。そんで、こういう話はベラベラと喋るもんじゃねえ、って前提を差し引いたとしてもちょっと恥じらったあの感じ、パートナーっていわゆる恋人って意味だよなってそれも今ならよくわかる。それにあの先生、ちょっと疲れた感じがまたなんとも言えねえ色気を……いや別に深い意味はねえんだけど。
しかしあれだな、『も』っつうことはおれたちはどういう関係だと思われたんだろうな。あんときゃパートナーかっつう意味かと思ってたけど……仮にそういう意味であったとしても別にそうじゃねえしな。うん、やっぱ冴島は冴島だよな。すげえ信頼できる、おれの大事な可愛い後輩だ。
とは言えおれもあんまり深くは考えてなかったんだが、ちょっと聞き捨てならねえ話が聞こえちまったんだよな。
いや、おれたちが定期的にプレイをするようになってからおれはすこぶる体調がいいわけなんだが、それは冴島も同じらしい。
あいつ結構でけえ身体してる上に仕事中は大体無表情だから第一印象はちょっと怖いって思われがちなんだが、最近は以前に比べて明らかに顔色がいいというか、柔らかくなってとっつきやすくなったらしく好評なのはおれも見てりゃあよくわかる。おかげで若手のランチや飲みなんかにも誘われることも増えたらしいんだが、どうやらほとんど断ってるらしい。
おれと一緒にいるせいか? なんて一瞬責任を感じもしたが、いや別に毎日毎日ってわけじゃねえしせいぜい週の半分ぐらいか……と思えば多いっちゃ多いか。
いやそうじゃねえ、どうやらあいつ、誘いを断られて食い下がった子に『恋人との約束が』的なこと言ってたらしいんだよな。……それ自体は別に断り文句としてそう言うことだってあるだろうが、問題はそれが本当だったら? おれがあいつを週の半分も拘束して、ましてセックスしてるなんて。そんなの、おれが相当やべえやつじゃねえ?
そんな可能性に思い至って数日、そろそろ冴島に確認してやりてえって思ってるんだが、おれもいきなり冴島とプレイができなくなるとちょっと困っちまうから悩んでる。恋人がいる相手とのセックスはさすがにナシだとしても、プレイだって普通いい気はしねえだろ?
だが半減でもいいからどうにかできねえか、とか、なんて言って交渉しようかと考えあぐねてる。マッサージ屋にはもう行かねえって約束しちまったし……いや、冴島との関係をやめるなら律義に守る必要もねえのかも?
だいたいあいつも、それならそうと言ってくれりゃあいいのに、別に怒りゃしねえのに。でもまあちょっと……置いてかれちまったみたいな、ときどき思い出してはひゅっとするような寂しさはあるけどな。
――なんて、まとまらねえまま週末の夜が来ちまった。いつもの流れと同じなら、このあと冴島の部屋でプレイして、セックスもするはずだ。
「先輩、行きますか」
「ああー、うん。その前にさ、今日は外で飯食わねえ?」
このまま部屋まで行けば、おれは絶対に切り出せずにセックスしちまう気しかしねえから。快楽には抗えねえからな。
こうしてどうにか時間稼ぎに成功したので、飯屋を求めて繁華街をぶらぶら歩く。
いつもなら雑談の話題なんていくらでもあるのに、妙に緊張しちまってなにを話せばいいのか全然わかんねえ。
「あのさ、お前――」
「はい?」
「おう、えっと……」
よし、見切り発車だがもう聞いちまおう……っ、て。
「あーっ、また会ったねえ」
「はあ?」
なんだよ! せっかく話を切り出したのにまたお前かよ。
白衣を纏ったマッサージ屋の兄ちゃんは、今日も今日とて掴みどころがねえ。
「最近会えなくて寂しかったなあ、よかったらまた来てよ」
「あー、いや」
行かねえ、って即答してえんだが今はちょっと、交渉次第では有りえんだよな。まあ馬鹿正直に言う必要は別にねえんだけど。
「だから、行きませんし……、行かせませんよ」
「あっ、おい」
ああー、だよな、そうなるよな。
「……ふーん。へえ、そっか。うんうん」
「……?」
いや、その意味深なニヤけ方はなんだっつうんだよ。
「いやぁ……、ふふ、わかりやすいよね。彼氏面!」
「は……ああ?」
か、彼氏面って、おい、ちが、
「だったらなんですか? そういうことですので、他を当たって下さい。……行きますよ、浩汰さん」
「っあ、ちょっ……おい」
「うんうん、またね! 満足できなくなったらまた来てねぇ」
これ見よがしに冴島の腕がおれの腰に回され引きずられるようにして歩き出す。
兄ちゃんも兄ちゃんで、話がややこしくなるから勘弁してくれよ!
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「はぁ、またあんたって人は。隙がありすぎるんですよ」
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