La Nuit Noire 〜漆黒の夜〜 ― 薔薇の間に囚われて ―

翔田美琴

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第6話 愛の刻印

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 熱せられた金属が、蝋燭の灯りを映して赤々と輝いていた。
 薔薇の形をした刻印が、ユウキの白い肌に近づいていく。

「……っ」

 喉がひくりと鳴り、呼吸が浅くなる。
 観客の視線が、肌の一寸にまで注がれているのが分かった。
 羞恥と恐怖とが入り混じり、逃げ場はどこにもなかった。

「観ろ」

 エリオットの声が、観客にではなく、ユウキに向けて響いた。

「これは辱めではない。
 君が選んだ愛を、永遠に刻みつける儀式だ」

 その灰色の瞳は冷酷でありながらも、確かな導きを湛えていた。
 抗えない──だが、そこに確かに救済がある。

 マリが鎖を引き、耳元で囁く。

「ユウキ……その印をつけられたら、もう戻れないわ。
 それでも“繋がり”を選ぶの?」

 ユウキの唇が震え、息が詰まる。
 だが、観客の前で目を背けることは許されない。
 彼女は震える声で答えた。

「……はい。
 私は、繋がりとしての愛を……信じます」

 その瞬間、エリオットは刻印を肌へと押し当てた。

「──ッ!」

 焦げる音と、薔薇の形が焼き付く匂いが立ち昇る。
 ユウキの身体は大きく震えた。
 痛み、羞恥、そして奇妙な解放感が入り混じり、涙が頬を伝う。

 観客席が一斉に沸き立った。
 嘲笑と歓声、口笛と拍手。
 仮面の群れは熱狂し、その光景を“祝福”として受け止めている。

「……よくやった」

 エリオットの低い声が、ユウキの頭上に降り注ぐ。

「その薔薇は、君の愛の証。
 逃れられぬ苦痛であり、永遠の救済だ」

 彼が手を離すと、赤い薔薇の刻印がユウキの肌に鮮やかに咲いていた。
 それは痛みの中に甘美な輝きを宿し、羞恥と誇りを同時に刻んでいた。

 ユウキは涙に濡れながらも、その薔薇に指先を触れた。
 ──これが、私の選んだ愛。

 観客の喝采の中、エリオットは静かに微笑んだ。
 その表情は支配者でありながら、導き手であり、
 どこか救済者のように見えた。

「さあ……試練は、さらに深淵へと続く」

 深紅のカーテンが再び揺れ、
 舞台はさらなる夜の儀式へと誘われていった。
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