La Nuit Noire 〜漆黒の夜〜 ― 薔薇の間に囚われて ―

翔田美琴

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第7話 嫉妬の刃

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 赤く焼き付けられた薔薇の刻印が、まだ熱を帯びて脈打っていた。
 ユウキは震える身体を抱きしめながら、その痛みに耐えている。
 観客は喝采と嘲笑を交互に浴びせ、羞恥の渦は収まる気配を見せなかった。

「……見事だ、ユウキ」

 エリオットの声が響く。

「己の愛を痛みによって示した。その覚悟を、薔薇の間は認めよう」

 観客席から拍手が広がった。
 だが、その中で──ただ一人、マリだけが笑っていなかった。

 彼女の唇は美しい紅に濡れていたが、その笑みは狂気に歪んでいた。

「ふざけないで」

 マリの声が鋭く響く。

「何が“繋がりの愛”よ……あなたはただ縛られているだけじゃない!」

 鎖を掴むマリの手が強く引かれ、ユウキの身体が無理やり前へと引き倒される。
 観客から再び笑い声が上がった。
 それは喝采というよりも、争いを煽る歓声だった。

「ユウキ!」

 マリは観客に向かって叫ぶ。

「彼女は本当の愛なんて知らない!
 愛は奪うもの。壊して、独り占めして……それで初めて証明されるのよ!」

 観客はざわめき、面白がるように囁き合う。

「壊す愛……?」
「奪うことが証明……?」

 仮面の群れは、その言葉さえ娯楽として受け止めていた。

 ユウキは必死に首を振った。

「違う……マリ、違うの!
 私は──一緒にいることを望んでるの!」

「黙れ!」

 マリの瞳に嫉妬の炎が燃え上がった。

「あなたなんかに、愛を語らせない!」

 彼女は鎖を振り上げ、まるで刃のように観客の前に突き出した。
 その光景に、歓声は一層大きくなる。
 舞台はもはや儀式ではなく、二人の愛を賭けた闘争の場と化していた。

 その瞬間、エリオットが立ち上がった。
 灰色の瞳が、マリとユウキを同時に射抜く。

「よろしい」

 冷酷にして甘美な声が、場を支配した。

「ならば、この場で決着をつけよ。
 ──どちらの愛が真実か、薔薇の間に示してみせろ」

 観客席は歓喜に包まれた。
 喝采と囁きが渦巻き、仮面の群れが三人の運命を見守る。

 ユウキとマリ、繋がりと独占。
 その対立は、ついに公開の舞台で暴かれることとなった。
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