La Nuit Noire 〜漆黒の夜〜 ― 薔薇の間に囚われて ―

翔田美琴

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第8話 愛の対決

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「どちらの愛が真実か、薔薇の間に示してみせろ──」

 エリオットの声が舞台を満たす。
 その宣言は冷酷でありながら、儀式の開始を告げる鐘のように甘美でもあった。

 観客席はざわめきに包まれ、仮面の群れが興奮に揺れる。
 愛の対立を目撃できる──それは彼らにとって何よりも甘美な娯楽だった。

 黒服のスタッフが再び舞台へ現れる。
 二つの台座を運び込み、それぞれに異なる象徴を置いた。

 ひとつは鎖。
 絡み合う銀の輪は、支配と独占を意味する。

 もうひとつは薔薇。
 深紅に咲き誇る花は、繋がりと誓いを意味する。

「──選べ」

 エリオットが静かに告げる。

「それぞれの愛を、この場で示せ。
 観客が、真実を見定めるだろう」

 マリが迷わず鎖へと手を伸ばした。
 その指は強く食い込み、瞳は狂気に濡れている。

「これが愛よ。
 彼女を縛り、奪い、独り占めにして……
 そうして初めて、永遠が手に入るの!」

 観客席から嘲笑と歓声が沸き起こる。
 彼女の狂気は見世物として絶大な魅力を放っていた。

 ユウキは薔薇を見つめた。
 震える指先が、その花弁へと触れる。
 柔らかく、しかし棘を秘めた感触。

「私の愛は……繋がり」

 彼女の声はかすれていたが、確かに舞台に響いた。

「傷ついても、痛みに震えても……
 それでも共に在り続けること。それが愛だと、信じてる」

 観客は一斉にどよめいた。
 二人の対立する愛の定義が、舞台の中央に浮かび上がる。

 エリオットは椅子から立ち上がり、灰色の瞳で二人を見渡した。

「よろしい。
 では示してみせろ──どちらの愛がより真実かを」

 次の瞬間、仮面の観客たちが一斉に札を掲げた。
 その数は数え切れない。
 彼らが望むのは、二人の愛の衝突そのもの。

 マリは狂気に笑い、鎖を振り上げる。
 ユウキは薔薇を胸に抱き、涙を堪える。

 そして舞台は──愛と狂気の決闘の場へと変わった。
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