La Nuit Noire 〜漆黒の夜〜 ― 薔薇の間に囚われて ―

翔田美琴

文字の大きさ
9 / 14

第9話 愛の決闘

しおりを挟む


 仮面の観客たちが掲げた札が一斉に降ろされ、
 舞台の熱気は一気に高まった。
 ざわめきと口笛、拍手が入り混じり、
 薔薇の間は決闘の開幕を告げる祭壇と化す。

 ユウキは深紅の薔薇を胸に抱き、
 マリは銀の鎖を手に握りしめていた。

「愛は縛るもの」

 マリが声を張り上げる。

「支配し、奪い、他の誰にも渡さないこと──それだけが永遠よ!」

 鎖が床に叩きつけられ、鋭い音が響く。
 観客は快哉を叫び、仮面の奥の瞳が光る。

 ユウキは震える指で薔薇を握りしめた。

「違う……愛は繋がり。
 一緒にいること。支え合い、分かち合うこと──それが永遠なの!」

 その声は震えていたが、確かな強さを宿していた。
 観客席にざわめきが広がる。
 嘲笑する者、感嘆する者。
 そのすべてがユウキの羞恥と勇気を煽り立てていく。

 マリは鎖を伸ばし、ユウキの足元へ投げつけた。
 冷たい鎖が肌に触れ、重みがユウキを震わせる。

「ほら、繋がりだって言うなら、その鎖を拾ってみなさいよ!」

 マリの声は狂気と嘲笑に満ちていた。

 ユウキは俯き、薔薇を抱いたまま鎖を見下ろす。
 羞恥に耐えながら、ゆっくりと震える手を伸ばした。
 観客の視線が突き刺さる。
 それはまるで、全裸で舞台に立たされるよりも残酷な晒しだった。

「……この鎖を、私は繋がりとして選ぶ」

 ユウキは震える声で告げ、鎖を拾い上げた。

 観客が一斉にどよめいた。
 歓声と笑い声が渦を巻き、舞台は熱狂に包まれる。

「くだらない!」

 マリが叫ぶ。

「縛られてるだけなのに、繋がりだなんて──自己欺瞞よ!」

「違う!」

 ユウキは涙を浮かべながら叫んだ。

「痛みも恥も、恐怖も……全部を分かち合って、それでも一緒にいることが愛なの!」

 観客席がざわめき、次々に札が掲げられていく。
 それは支持か、嘲笑か、誰にも分からない。
 ただ確かなのは──この決闘が観客を熱狂の渦に巻き込んでいるという事実だった。

 その様子を見下ろしながら、エリオットは椅子に深く腰を下ろした。
 灰色の瞳が静かに光り、唇がかすかに笑みを描く。

「よろしい……ならば示せ。
 互いの愛を、最後の一瞬まで」

 その言葉とともに、愛の決闘は本格的に幕を開けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

罪悪と愛情

暦海
恋愛
 地元の家電メーカー・天の香具山に勤務する20代後半の男性・古城真織は幼い頃に両親を亡くし、それ以降は父方の祖父母に預けられ日々を過ごしてきた。  だけど、祖父母は両親の残した遺産を目当てに真織を引き取ったに過ぎず、真織のことは最低限の衣食を与えるだけでそれ以外は基本的に放置。祖父母が自身を疎ましく思っていることを知っていた真織は、高校卒業と共に就職し祖父母の元を離れる。業務上などの必要なやり取り以外では基本的に人と関わらないので友人のような存在もいない真織だったが、どうしてかそんな彼に積極的に接する後輩が一人。その後輩とは、頗る優秀かつ息を呑むほどの美少女である降宮蒔乃で――

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

処理中です...