La Nuit Noire 〜漆黒の夜〜 ― 薔薇の間に囚われて ―

翔田美琴

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第12話 決着

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 深紅の薔薇と、冷たい鎖。
 二つの象徴が舞台の中央で交差しようとしていた。

 観客席は静寂に包まれ、仮面の群れは息を呑んで見守っている。
 蝋燭の炎が揺れ、光と影が二人の顔を交互に照らし出す。

「……繋がりなんて幻」

 マリが囁くように言った。
 その声には狂気と哀しみが混じっていた。

「愛は奪わなきゃ守れないのよ。
 そうでなければ、必ず壊れる」

 鎖がユウキの喉元に迫る。
 観客席から抑えきれないどよめきが漏れた。

 ユウキは深紅の薔薇を胸から差し出し、震える声で叫ぶ。

「壊れたっていい!
 怖くてもいい!
 それでも繋がっていたい……それが、私の愛!」

 その言葉とともに、彼女は薔薇をマリの手に押し当てた。
 マリの指先が薔薇の棘に触れ、赤い痛みが走る。

「……っ」

 マリの身体が震えた。
 鎖を振り下ろす力が抜け、手元からするりと落ちていく。
 銀の音が舞台に響き渡り、観客席が一斉にざわめいた。

 マリは薔薇を見下ろしたまま、目を伏せる。
 唇が震え、嗚咽のような声が洩れた。

「……どうして……そんなに弱いのに……あなたは……」

 ユウキは涙を浮かべながら微笑んだ。

「弱いから……繋がりを求めるの。
 だからこそ、これが愛なんだよ」

 その瞬間、観客席から大きな拍手が湧き起こった。
 嘲笑でも狂騒でもない──真の喝采だった。

 エリオットが椅子から立ち上がり、灰色の瞳で二人を見下ろす。
 その声は低く、舞台を震わせるように響いた。

「決着はついた」

 銀の鎖が床に転がり、深紅の薔薇がマリの手に残る。
 それは敗北ではなく、証明。
 ──繋がりの愛こそが、この夜に選ばれた永遠だった。

 エリオットは静かに頷き、微笑を浮かべる。

「よくやった、ユウキ。
 お前は己の弱さを曝け出し、それを愛と呼んだ。
 その勇気を──薔薇の間は認めよう」

 観客は総立ちになり、仮面の群れが拍手と口笛を送る。
 舞台は喝采に包まれ、決闘は幕を閉じた。

 だが、その熱狂の中でユウキの胸に去来したのは、
 歓喜でも誇りでもなく──
「もう二度と、この夜から逃れられない」という確信だった。
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