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第三章 出会いと契約
第18話ー1 振り返り
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グーシュとしては、新しい目標が出来たと思ったのだ。
ミルシャと一緒に海の向こうを見る。
その夢の代わりだ。
動画を見てすぐの時は、空間湾曲ゲートの彼方をミルシャと見に行くことを目標にしようと思った。
広大な星の海。
そこを宇宙駆ける宇宙船に乗り、ミルシャと二人で旅できたなら、それは海向こうに行く夢をはるかに超える素晴らしい物に感じられたのだ。
しかし、よくよく考えるとその夢には重大な欠点があった。
すぐに、叶ってしまうのだ。
地球連邦軍の戦力は巨大で、技術力も高い。
となれば地球や異世界への旅などそこらへの旅行と変わりない。
グーシュの探求心を満たすには物足りないのだ。
もちろん異世界の果てや異世界全てを見つけるのならば話は違ってくるのだが、どうにもしっくりこなかった。
だが、一木の話を聞いていてしっくりときた。
グーシュは目的が具体的に見えていてほしかったのだ。
オルドロが旅立った海向こうの民が住まう場所が。
あいまいな果てやすべてではなく、確固たる目的が欲しかった。
そしてそれは見つかった。
巨大な理想郷を作りながらも、根深い問題にむしばまれた地球連邦という国家。
その国を自分の力で立て直し、そしてその力を統べる立場で広大な宇宙を見る。
グーシュは権力欲とは無縁ではあったが、問題点を放置した物を見るのが苦手だった。
見つけるとついつい口を出したくなってしまう。
そしてその悪癖は、この日あまりにも壮大な目標を見出したのだ、が……。
「な、なにを確認したいというのだ!? ここまで乗り気にさせておいてなんとひどい……」
涙を浮かべ、上目遣いで一木を見るグーシュ。
しかし一木はにべもない。
「そんな目をしてもダメです」
「血も涙もないのか!」
「今はありません……さっきまでの聡明さはどうしたんです。それに、すでにあたりはついているのでは?」
ポカポカと一木を殴りつけるグーシュ。
それをやんわりと受け止めると、一木は優しく言った。
「……まあ、な。わらわの事が信用できないのだろう?」
両手をつかまれたまま、視線を逸らしてグーシュは言った。
グーシュはある意味こういう展開には慣れていた。
民や兵士にはどう接するべきかがすぐに理解できるグーシュだったが、どうにもある程度以上の地位の者になるとそう言った感覚が働かなくなる。
面子が大切なのでグーシュの提案を受け入れない。
面子は分かる。
だが理解できないのだ。
面子を守った場合の利益と、グーシュの提案を受け入れた場合の利益。
どちらが上かは子供でもわかるはずだ。
だが拒否する、グーシュが信じられないという。
グーシュ自身は誠心誠意話しているつもりだが、なぜかそれが伝わらない。
民や兵ならば欲しいものを、欲しい態度をやれば済むことが、利益を提示しても受け入れてくれない。
そんな出来事に、グーシュは慣れると同時に絶望していた。
まさか、一木や地球連邦もそうなるのかと、グーシュは暗澹たる気分になった。
「白状しますと、グーシュの事をこの大陸の調査を始めた初期から見張り、調査していました」
「ああ、大方そうだろうと思っていた。あれか? 鶏肉宿に来た妙な肥満男と貧相な子供もSSなのか?」
一木はバツが悪そうにモノアイを回した。
「そうですね。現地の諜報員から報告を受けて、私たちはグーシュの事を交渉相手にふさわしい相手だと見なしました。申し訳ありませんが、皇太子殿下はあまり魅力的な交渉相手とは思えませんでした」
それを聞いたグーシュは憮然とする。
「もう兄上の事は構わん! あんなにわらわが兄上の事を思っていろいろしたのに、この仕打ちだぞ! 大体わらわはもう”逆らわない”と意思を示したのだ!」
グーシュの言葉に一木は食い付いた。
「それです、聞きたいのは。グーシュの行動はどうも、その意図が分からなくて、自分達も困惑することが多かったんです。皇太子殿下との関係は最たるものです」
そう言うと一木は床に落ちた上着をグーシュにかけると、隣り合っていた状態から、椅子に座って向かい合う状態に座りなおした。
「それでも艦隊一同、ミルシャさんがいれば大丈夫だ、彼女がいればグーシュは大丈夫、何か大事になってもコントロールが効く。そういう認識だったんですが……」
一木はそこで、グーシュの顔をジッとと見つめた。
「なぜか突然、政治にかかわらないという意思表示を無視して、ミルシャさんの安全を無視するように我々への使節に立候補しました。当然、我々は不安に思った、なぜなら、言い方は悪いですが一番太い手綱が切れたように感じたのです」
グーシュは苦々しい表情を浮かべた。
まさか、自分の行動の因果がここに巡ってくるとは思わなかった。
しかし事は自分の未来に関わってくる。
「では、最初に聞かせてもらいます。なぜ、危険を顧みず使節に立候補したんですか?」
一木が、心なしか鋭い視線で問いかけてきた。
グーシュは一つ一つ自分の行動の意図を解説するという苦行を強いられるのだった。
ミルシャと一緒に海の向こうを見る。
その夢の代わりだ。
動画を見てすぐの時は、空間湾曲ゲートの彼方をミルシャと見に行くことを目標にしようと思った。
広大な星の海。
そこを宇宙駆ける宇宙船に乗り、ミルシャと二人で旅できたなら、それは海向こうに行く夢をはるかに超える素晴らしい物に感じられたのだ。
しかし、よくよく考えるとその夢には重大な欠点があった。
すぐに、叶ってしまうのだ。
地球連邦軍の戦力は巨大で、技術力も高い。
となれば地球や異世界への旅などそこらへの旅行と変わりない。
グーシュの探求心を満たすには物足りないのだ。
もちろん異世界の果てや異世界全てを見つけるのならば話は違ってくるのだが、どうにもしっくりこなかった。
だが、一木の話を聞いていてしっくりときた。
グーシュは目的が具体的に見えていてほしかったのだ。
オルドロが旅立った海向こうの民が住まう場所が。
あいまいな果てやすべてではなく、確固たる目的が欲しかった。
そしてそれは見つかった。
巨大な理想郷を作りながらも、根深い問題にむしばまれた地球連邦という国家。
その国を自分の力で立て直し、そしてその力を統べる立場で広大な宇宙を見る。
グーシュは権力欲とは無縁ではあったが、問題点を放置した物を見るのが苦手だった。
見つけるとついつい口を出したくなってしまう。
そしてその悪癖は、この日あまりにも壮大な目標を見出したのだ、が……。
「な、なにを確認したいというのだ!? ここまで乗り気にさせておいてなんとひどい……」
涙を浮かべ、上目遣いで一木を見るグーシュ。
しかし一木はにべもない。
「そんな目をしてもダメです」
「血も涙もないのか!」
「今はありません……さっきまでの聡明さはどうしたんです。それに、すでにあたりはついているのでは?」
ポカポカと一木を殴りつけるグーシュ。
それをやんわりと受け止めると、一木は優しく言った。
「……まあ、な。わらわの事が信用できないのだろう?」
両手をつかまれたまま、視線を逸らしてグーシュは言った。
グーシュはある意味こういう展開には慣れていた。
民や兵士にはどう接するべきかがすぐに理解できるグーシュだったが、どうにもある程度以上の地位の者になるとそう言った感覚が働かなくなる。
面子が大切なのでグーシュの提案を受け入れない。
面子は分かる。
だが理解できないのだ。
面子を守った場合の利益と、グーシュの提案を受け入れた場合の利益。
どちらが上かは子供でもわかるはずだ。
だが拒否する、グーシュが信じられないという。
グーシュ自身は誠心誠意話しているつもりだが、なぜかそれが伝わらない。
民や兵ならば欲しいものを、欲しい態度をやれば済むことが、利益を提示しても受け入れてくれない。
そんな出来事に、グーシュは慣れると同時に絶望していた。
まさか、一木や地球連邦もそうなるのかと、グーシュは暗澹たる気分になった。
「白状しますと、グーシュの事をこの大陸の調査を始めた初期から見張り、調査していました」
「ああ、大方そうだろうと思っていた。あれか? 鶏肉宿に来た妙な肥満男と貧相な子供もSSなのか?」
一木はバツが悪そうにモノアイを回した。
「そうですね。現地の諜報員から報告を受けて、私たちはグーシュの事を交渉相手にふさわしい相手だと見なしました。申し訳ありませんが、皇太子殿下はあまり魅力的な交渉相手とは思えませんでした」
それを聞いたグーシュは憮然とする。
「もう兄上の事は構わん! あんなにわらわが兄上の事を思っていろいろしたのに、この仕打ちだぞ! 大体わらわはもう”逆らわない”と意思を示したのだ!」
グーシュの言葉に一木は食い付いた。
「それです、聞きたいのは。グーシュの行動はどうも、その意図が分からなくて、自分達も困惑することが多かったんです。皇太子殿下との関係は最たるものです」
そう言うと一木は床に落ちた上着をグーシュにかけると、隣り合っていた状態から、椅子に座って向かい合う状態に座りなおした。
「それでも艦隊一同、ミルシャさんがいれば大丈夫だ、彼女がいればグーシュは大丈夫、何か大事になってもコントロールが効く。そういう認識だったんですが……」
一木はそこで、グーシュの顔をジッとと見つめた。
「なぜか突然、政治にかかわらないという意思表示を無視して、ミルシャさんの安全を無視するように我々への使節に立候補しました。当然、我々は不安に思った、なぜなら、言い方は悪いですが一番太い手綱が切れたように感じたのです」
グーシュは苦々しい表情を浮かべた。
まさか、自分の行動の因果がここに巡ってくるとは思わなかった。
しかし事は自分の未来に関わってくる。
「では、最初に聞かせてもらいます。なぜ、危険を顧みず使節に立候補したんですか?」
一木が、心なしか鋭い視線で問いかけてきた。
グーシュは一つ一つ自分の行動の意図を解説するという苦行を強いられるのだった。
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