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第三章 出会いと契約
第21話 新たなる来訪者
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一木が通信を切った直後。
答礼をしていたサーレハ司令は、ため息をついて端末の向こう側にいた男に声をかけた。
「……動画付き通信の最中に、いきなり話しかけるとはどういうつもりだ?」
サーレハ司令が話しかけたのは、僧衣を来た禿頭の男だった。つまりは、僧侶だ。
見た目は若く、背が高い物のほっそりとした印象の、美青年だった。
「いやすまない。手塩にかけたグーシュ皇女を引き取ってくれた地球人がどういう人間か気になってね。どうせならこんな所でネタばらしをするよりは、帝都で出会いたかったのだ」
「おかげで私はとんだマヌケだ。グーシュ皇女について話そうとしたのに、いきなり帝都で会いたいと言っていると言動を修正したんだ。一木代将はさぞかし肩透かしをくっただろうな」
だが、そんなサーレハ司令の話を聞いた僧侶風の男は、逆にサーレハ司令に非難した。
「その程度でなんだね。君こそひどい男だ。何が正直に話そう、だ。君の本当の目的を話さないばかりか、我々が君に指示をだしているなどと……そんなことで本当に彼を同志に出来るのかね?」
「それこそひどい話だ。今日一日で起こった出来事だけで、一木代将には過酷な情報量だったはずだ。これ以上負担をかけないためにも、情報はある程度絞ってあげるべきなのだよ。とはいえ……」
そう言ってサーレハ司令は手元の端末を操作した。
「ハイタ復活のために融和派に利用されて、あげくにこんな負担をしょい込むとはな。さすがにいささか気の毒だ……ちょうどダグラス首席参謀が私の事を嗅ぎまわっているから、一木君から参謀達に私の話が伝わるようにしておこう。仲間が増えれば、彼の負担も軽くなるだろう」
「……なんとあくどい男だ……アンドロイド達を巻き込めば、強硬派が出張ってくるぞ……」
僧侶風の男はそっと手を合わせた。
「南無阿弥陀仏……君のような男に魅入られた一木と言う男に幸いあれ……」
そんな僧侶風の男を見たサーレハ司令は、珍しく嫌そうな表情を浮かべた。
「まだ仏教にのめり込んでいるのか……神たるナンバーズが宗教を求めるのは感心しないな」
「……君は年々オールド・ロウに似てくるね」
そう言われたサーレハ司令は、素早く自分の顔を撫でた。
その後、背後に控えていたスルターナ少佐の方をむき、「顔大丈夫?」と問いただす。
スルターナ少佐は、「かっこいいですよ」と返した。
「顔じゃない、中身だよ。彼と同じ見た目になったら、生きていられないだろ」
笑みを浮かべた僧侶風の男の言葉が、艦隊司令室に響いた。
サーレハ司令は憮然とした様子で、すでに冷めた珈琲を口にする。
「しかし、そろそろ動きを見せてくれないものか……」
「ああ、彼らか……」
僧侶風の男の呟きと同時に、サーレハ司令の手元の端末がアラームを鳴らした。
アラームは惑星ワーヒドに接近する物体がある事を警告する物だった。
サーレハ司令は急ぎ、艦務参謀に通信をつないだ。
「ミユキ艦務参謀、何があった?」
「あ、サーレハ司令。ワーヒドに隕石が接近しているっす。大気圏を突破する可能性があったので、一応警報は出しましたが……仮に落下しても被害は出ませんので、お任せいただければ対処するっす」
「……大陸に落ちるのか?」
「あ、はいっす。このままだと北部の居住地近くに落ちる可能性があるっす」
「放っておいて構わん」
「え、しかし場合によっては被害が……」
「航宙戦力を無駄に動かす必要はない。念のため地上部隊に再通知をしておけばよい。いいな?」
「りょ、了解っす」
サーレハ司令のドスの聞いた声を聞いたミユキ大佐は、慌てて通信を切った。
一方のサーレハ司令は、通信が切れたと同時に声を上げて笑った。
それを聞いて、僧侶風の男はため息をついた。
「来たな、彼らだ。スルターナ、アセナ参謀長に連絡しろ。一刻も早く例の物を見つけ出すように、とな」
同時刻・某星系
とある場所の、空間湾曲ゲートの銀色の鏡面の周辺に、千近いの艦影が集っていた。
地球連邦のスッキリとした艦影とは違い、通信機器や姿勢制御用のスラスター、ハリネズミのように火器が据えられた、どこか古風で無骨な艦艇だ。
サイズも全長一キロ以上の艦艇がある地球連邦とは違い、百メートル以下の艦から、大きくても数百メートル程度の艦艇が多い。
そんな艦隊の中、地球連邦の艦艇以上に未来的なシルエットで、異世界派遣軍の戦列艦並みの大型艦が一隻だけ、艦隊中央部に鎮座していた。
その大型艦の中枢。
電子機器とシンプルな内装で構成される地球連邦の艦内とは対照的に、まるで貴族の宮殿のような装飾が施された会議室。
この場だけ見れば、まさかここが航宙艦の艦内だとは誰も思わないだろう。
そしてその会議室では、褐色の肌の男達と、それに対峙する大柄な老人と漆黒の肌の少女が対峙していた。
男たちは、盛んに目の前にいる老人と少女に何かを訴えかける。
「今が千載一遇の機会なのです!」
男たちの一人が叫ぶ。
続けとばかりに他の男達も口を開く。
「ルーリアトにいるのは機動艦隊のみ。護衛の打撃艦隊がいない今なら容易に攻撃可能なのだ!」
「地球連邦の勢力圏との緩衝地帯としていたルーリアトにまで連邦が迫り、我々は決起直前に危機を迎えていましたが、敵はあまりに小勢。ここは増援が来る前に口火を切るべきです」
そう訴えかける男たちだが、金属製のブレストプレートを身に着けた騎士の様な風情の老人は動じない。
隣に座る漆黒の肌の少女も、大声にびくりと体を震わせながらも、涙目でフルフルと震えながら必死に耐えていた。
そうして男たちの言葉が止むと、老人が静かに口を開いた。
「そのために、連合全体の作戦を乱すという事かの?」
「やむを得ないことだ! 前進! 果敢! 攻撃! これがカルナークの流儀だ。中世人ののんびりした戦術など話になるか!」
そう老人に食って掛かる男だが、少女がそれを諫める。
「か、カルナークの流儀は科学的合理性を持った上での物です。七惑星連合の作戦を乱す口実に使うものではありません」
そこまで一息で言うと、少女は涙をぬぐい、息を吸い込むとはっきりと告げた。
「この私、代表も作戦に賛同したことをお忘れですか。本艦隊はあくまで総司令部としての役割を果たします!」
少女の言葉に男たちは黙り込む。
しかし、納得したわけでは無いことは明白だ。
そんな空気を感じ取ったのか、老人が口を開いた。
「軍師の方々……皆の言うことも分かる」
「騎士長!?」
「クク殿、ここはワシに任せよ」
騎士長と呼ばれた老人は、ククという少女にウインクすると、軍師と呼ばれた男たちに向き合った。
「ワシも杓子定規に作戦通りと言うつもりはない。ここは偵察してから判断するというのはどうじゃろう?」
「「「偵察!」」」」
男達と少女の声が重なる。
男たちは顔を見合わせる。
偵察が困難なことは彼らが一番よく知っていたからだ。
彼らの戦力は極端で、乾坤一擲の全力攻撃か、息をひそめるかの二択しかないのだ。
下手な偵察などしては情報を得るどころか、逆に地球連邦に情報が流出しかねない、そう判断したのだ。
だが、そんな男たちを見ても老人は動じない。
厚い筋肉に覆われた体でどっしりと構えると、男たちに告げた。
「案ずるな。火星の盟友がすでにルーリアトに向かっておる。潜入するジンライ少佐からの吉報を待て」
「おお! 火人連の技術ならば!」
「憎き地球人と祖を同じくする彼らならば!」
「うむ、行けるかもしれないな!」
そう言い合い、男たちは溜飲を下げるのだった。
男たちの喧騒をよそに、少女は呟く。
「ハナコ少佐……どうかご無事で……」
数時間後・ルーリアト帝国北部
北方工業都市と呼ばれるダスティ公爵領にほど近い、日の暮れかかった草原地帯。
そこには煙を上げて着陸した、特殊偽装迷彩が施された降下ポッドがあった。
この迷彩は落下した隕石に偽装するように設定された優れものだ。
火星正規軍が異世界に秘密裏に兵員を派遣するための切り札と言える。
もっとも、それは迎撃されずに地上に降り立ってこそだ。
落下する隕石を事前に除去しようとする動きに対しては、この降下ポッドは無力だった。
そんな降下ポッドから、一人の人間が降り立った。
女性的な体型がありありと分かる、艶の無い黒い金属装甲。
日本の甲冑の様な、両肩のウェポンラックと、両手足と腰に内蔵されたアンカーランチャー。
そして特徴的な、対アンドロイド用ブレードを腰に下げた、火星陸軍のアンドロイド戦闘に特化したサイボーグだ。
そしてそのサイボーグの肩のウェポンラックには、特徴的なエンブレムがプリントされていた。
折れた、満開の桜の枝。
そんなサイボーグは、大気圏突入時の熱が籠ったヘルメットを脱ぎ捨てる。
すると、長い黒髪と、白い肌の少女の顔が露わになった。
「ふぅ、今頃クク達心配してるかな……」
そう呟くと、少女の視界に松明を持ち、馬でこちらに向かってくる騎士の一団が見えた。
「あれが現地協力者ね。たった一人で異世界派遣軍の偵察……慎重にいかないと」
そう口にする少女だが、その後口から漏れたのは相反する言葉だった。
「ああ、神様……それでも、もし私に幸運を下さるのなら……」
そして少女は、目に憎悪を滾らせる。
「ギニラスで先輩を殺した、あの強化機兵とこの惑星で会わせてください……」
答礼をしていたサーレハ司令は、ため息をついて端末の向こう側にいた男に声をかけた。
「……動画付き通信の最中に、いきなり話しかけるとはどういうつもりだ?」
サーレハ司令が話しかけたのは、僧衣を来た禿頭の男だった。つまりは、僧侶だ。
見た目は若く、背が高い物のほっそりとした印象の、美青年だった。
「いやすまない。手塩にかけたグーシュ皇女を引き取ってくれた地球人がどういう人間か気になってね。どうせならこんな所でネタばらしをするよりは、帝都で出会いたかったのだ」
「おかげで私はとんだマヌケだ。グーシュ皇女について話そうとしたのに、いきなり帝都で会いたいと言っていると言動を修正したんだ。一木代将はさぞかし肩透かしをくっただろうな」
だが、そんなサーレハ司令の話を聞いた僧侶風の男は、逆にサーレハ司令に非難した。
「その程度でなんだね。君こそひどい男だ。何が正直に話そう、だ。君の本当の目的を話さないばかりか、我々が君に指示をだしているなどと……そんなことで本当に彼を同志に出来るのかね?」
「それこそひどい話だ。今日一日で起こった出来事だけで、一木代将には過酷な情報量だったはずだ。これ以上負担をかけないためにも、情報はある程度絞ってあげるべきなのだよ。とはいえ……」
そう言ってサーレハ司令は手元の端末を操作した。
「ハイタ復活のために融和派に利用されて、あげくにこんな負担をしょい込むとはな。さすがにいささか気の毒だ……ちょうどダグラス首席参謀が私の事を嗅ぎまわっているから、一木君から参謀達に私の話が伝わるようにしておこう。仲間が増えれば、彼の負担も軽くなるだろう」
「……なんとあくどい男だ……アンドロイド達を巻き込めば、強硬派が出張ってくるぞ……」
僧侶風の男はそっと手を合わせた。
「南無阿弥陀仏……君のような男に魅入られた一木と言う男に幸いあれ……」
そんな僧侶風の男を見たサーレハ司令は、珍しく嫌そうな表情を浮かべた。
「まだ仏教にのめり込んでいるのか……神たるナンバーズが宗教を求めるのは感心しないな」
「……君は年々オールド・ロウに似てくるね」
そう言われたサーレハ司令は、素早く自分の顔を撫でた。
その後、背後に控えていたスルターナ少佐の方をむき、「顔大丈夫?」と問いただす。
スルターナ少佐は、「かっこいいですよ」と返した。
「顔じゃない、中身だよ。彼と同じ見た目になったら、生きていられないだろ」
笑みを浮かべた僧侶風の男の言葉が、艦隊司令室に響いた。
サーレハ司令は憮然とした様子で、すでに冷めた珈琲を口にする。
「しかし、そろそろ動きを見せてくれないものか……」
「ああ、彼らか……」
僧侶風の男の呟きと同時に、サーレハ司令の手元の端末がアラームを鳴らした。
アラームは惑星ワーヒドに接近する物体がある事を警告する物だった。
サーレハ司令は急ぎ、艦務参謀に通信をつないだ。
「ミユキ艦務参謀、何があった?」
「あ、サーレハ司令。ワーヒドに隕石が接近しているっす。大気圏を突破する可能性があったので、一応警報は出しましたが……仮に落下しても被害は出ませんので、お任せいただければ対処するっす」
「……大陸に落ちるのか?」
「あ、はいっす。このままだと北部の居住地近くに落ちる可能性があるっす」
「放っておいて構わん」
「え、しかし場合によっては被害が……」
「航宙戦力を無駄に動かす必要はない。念のため地上部隊に再通知をしておけばよい。いいな?」
「りょ、了解っす」
サーレハ司令のドスの聞いた声を聞いたミユキ大佐は、慌てて通信を切った。
一方のサーレハ司令は、通信が切れたと同時に声を上げて笑った。
それを聞いて、僧侶風の男はため息をついた。
「来たな、彼らだ。スルターナ、アセナ参謀長に連絡しろ。一刻も早く例の物を見つけ出すように、とな」
同時刻・某星系
とある場所の、空間湾曲ゲートの銀色の鏡面の周辺に、千近いの艦影が集っていた。
地球連邦のスッキリとした艦影とは違い、通信機器や姿勢制御用のスラスター、ハリネズミのように火器が据えられた、どこか古風で無骨な艦艇だ。
サイズも全長一キロ以上の艦艇がある地球連邦とは違い、百メートル以下の艦から、大きくても数百メートル程度の艦艇が多い。
そんな艦隊の中、地球連邦の艦艇以上に未来的なシルエットで、異世界派遣軍の戦列艦並みの大型艦が一隻だけ、艦隊中央部に鎮座していた。
その大型艦の中枢。
電子機器とシンプルな内装で構成される地球連邦の艦内とは対照的に、まるで貴族の宮殿のような装飾が施された会議室。
この場だけ見れば、まさかここが航宙艦の艦内だとは誰も思わないだろう。
そしてその会議室では、褐色の肌の男達と、それに対峙する大柄な老人と漆黒の肌の少女が対峙していた。
男たちは、盛んに目の前にいる老人と少女に何かを訴えかける。
「今が千載一遇の機会なのです!」
男たちの一人が叫ぶ。
続けとばかりに他の男達も口を開く。
「ルーリアトにいるのは機動艦隊のみ。護衛の打撃艦隊がいない今なら容易に攻撃可能なのだ!」
「地球連邦の勢力圏との緩衝地帯としていたルーリアトにまで連邦が迫り、我々は決起直前に危機を迎えていましたが、敵はあまりに小勢。ここは増援が来る前に口火を切るべきです」
そう訴えかける男たちだが、金属製のブレストプレートを身に着けた騎士の様な風情の老人は動じない。
隣に座る漆黒の肌の少女も、大声にびくりと体を震わせながらも、涙目でフルフルと震えながら必死に耐えていた。
そうして男たちの言葉が止むと、老人が静かに口を開いた。
「そのために、連合全体の作戦を乱すという事かの?」
「やむを得ないことだ! 前進! 果敢! 攻撃! これがカルナークの流儀だ。中世人ののんびりした戦術など話になるか!」
そう老人に食って掛かる男だが、少女がそれを諫める。
「か、カルナークの流儀は科学的合理性を持った上での物です。七惑星連合の作戦を乱す口実に使うものではありません」
そこまで一息で言うと、少女は涙をぬぐい、息を吸い込むとはっきりと告げた。
「この私、代表も作戦に賛同したことをお忘れですか。本艦隊はあくまで総司令部としての役割を果たします!」
少女の言葉に男たちは黙り込む。
しかし、納得したわけでは無いことは明白だ。
そんな空気を感じ取ったのか、老人が口を開いた。
「軍師の方々……皆の言うことも分かる」
「騎士長!?」
「クク殿、ここはワシに任せよ」
騎士長と呼ばれた老人は、ククという少女にウインクすると、軍師と呼ばれた男たちに向き合った。
「ワシも杓子定規に作戦通りと言うつもりはない。ここは偵察してから判断するというのはどうじゃろう?」
「「「偵察!」」」」
男達と少女の声が重なる。
男たちは顔を見合わせる。
偵察が困難なことは彼らが一番よく知っていたからだ。
彼らの戦力は極端で、乾坤一擲の全力攻撃か、息をひそめるかの二択しかないのだ。
下手な偵察などしては情報を得るどころか、逆に地球連邦に情報が流出しかねない、そう判断したのだ。
だが、そんな男たちを見ても老人は動じない。
厚い筋肉に覆われた体でどっしりと構えると、男たちに告げた。
「案ずるな。火星の盟友がすでにルーリアトに向かっておる。潜入するジンライ少佐からの吉報を待て」
「おお! 火人連の技術ならば!」
「憎き地球人と祖を同じくする彼らならば!」
「うむ、行けるかもしれないな!」
そう言い合い、男たちは溜飲を下げるのだった。
男たちの喧騒をよそに、少女は呟く。
「ハナコ少佐……どうかご無事で……」
数時間後・ルーリアト帝国北部
北方工業都市と呼ばれるダスティ公爵領にほど近い、日の暮れかかった草原地帯。
そこには煙を上げて着陸した、特殊偽装迷彩が施された降下ポッドがあった。
この迷彩は落下した隕石に偽装するように設定された優れものだ。
火星正規軍が異世界に秘密裏に兵員を派遣するための切り札と言える。
もっとも、それは迎撃されずに地上に降り立ってこそだ。
落下する隕石を事前に除去しようとする動きに対しては、この降下ポッドは無力だった。
そんな降下ポッドから、一人の人間が降り立った。
女性的な体型がありありと分かる、艶の無い黒い金属装甲。
日本の甲冑の様な、両肩のウェポンラックと、両手足と腰に内蔵されたアンカーランチャー。
そして特徴的な、対アンドロイド用ブレードを腰に下げた、火星陸軍のアンドロイド戦闘に特化したサイボーグだ。
そしてそのサイボーグの肩のウェポンラックには、特徴的なエンブレムがプリントされていた。
折れた、満開の桜の枝。
そんなサイボーグは、大気圏突入時の熱が籠ったヘルメットを脱ぎ捨てる。
すると、長い黒髪と、白い肌の少女の顔が露わになった。
「ふぅ、今頃クク達心配してるかな……」
そう呟くと、少女の視界に松明を持ち、馬でこちらに向かってくる騎士の一団が見えた。
「あれが現地協力者ね。たった一人で異世界派遣軍の偵察……慎重にいかないと」
そう口にする少女だが、その後口から漏れたのは相反する言葉だった。
「ああ、神様……それでも、もし私に幸運を下さるのなら……」
そして少女は、目に憎悪を滾らせる。
「ギニラスで先輩を殺した、あの強化機兵とこの惑星で会わせてください……」
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