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第6章:小屋の下の影
しおりを挟む小屋は避難所の戯画のようだった。近くで見ると、その荒廃は見苦しいものだった。粉々になった窓、さびた蝶番一つでぶら下がるドア、巨人の手に押し潰されたかのように沈んだ屋根。
「本当に誰か住んでるの?」アレックスは、懐疑を隠しきれずに尋ねた。
「住んでるって言うか…」エミは目を細め、その構造を調べた。「でも何かはあるよ。そしてその何かは、トラブルの臭いがする」
慎重な一押しで、ドアは長く続くキーキーという音を立てて開いた。その音が路地の静寂を切り裂いた。室内は、埃と腐った木材の淀んだ空気の塊で彼らを迎えた。壊れた家具、カーテンのように厚い蜘蛛の巣、がれきに覆われた床。生命の痕跡はなかった。
「これって冗談?」エミは暗がりを見つめ、苛立った。「何もないじゃない」
アレックスは答えなかった。しゃがみ込み、彼の指がほこりっぽい床をなぞった。そこに、かすかに見える引きずった痕があった。新しい痕だ。部屋の最も暗い隅に向かって一直線に伸びている。
「誰かがここにいた」彼は呟いた。声は低かったが、静寂の中ではっきりと響いた。「そして何か、あるいは誰かを連れ去った」
エミにはそれ以上必要なかった。彼女は手のひらを上に向けて伸ばした。エネルギーのささやきと共に、小さな金色の光の球が彼女の手の中で生まれ、不自然な暖かさで部屋を照らすまでに成長した。
光は壁、家具、床の上で踊り…そして、止まった。
隅で、痕跡が終わるところで、埃がかすかな青みがかった輝きを放ち、完璧な幾何学的な長方形を床に描いていた。隠された陥没戸だ。
「あった!」エミの顔は勝利の笑みで輝いた。「罠の臭いがするって思ったんだ。ほら、アレックス?」
アレックスは近づいた。それはただの陥没戸ではなかった。縁は暗く粘着性のある物質で密封されており、彼の首筋の毛を逆立たせた。封じ込めの魔法だ。あるいは警告の。
「エミ、これは…」
「なに?『罠だ』って?もちろん罠だよ!」彼女はすでにひざまずき、指で隙間を探していた。「でも今は私たちの罠だ」
「意味わかんないよ」アレックスはぶつぶつ言ったが、彼の目は彼女が開け始めた開口部から離れなかった。
金属のきしむ音、そして…暗闇。エミの光の球を飲み込んでしまいそうなほど濃密な黒さ。深みから匂いが立ち上ってきた。湿った土、カビ、そしてどこか甘ったるく吐き気を催すような何かだ。
「楽しい部分の準備はいい?」エミが尋ねた。彼女の笑みは薄暗がりの中の白い閃光のようだった。
アレックスは、決定的な諦めのように聞こえるため息をつくことしかできなかった。選択肢はなかった。最初からなかったのだ。
彼らは磨り減った石の階段を降りた。その足音は狭い通路に反響した。空気は重く、冷たく、湿気を含んでいた。十数段降りた後、階段は地下の洞窟へと続いた。
それは単なる地下室ではなかった。
それは冒涜された聖域だった。
壁に突き刺さった煙を上げる松明が、丸天井の空間を照らしていた。しかし光は慰めにはならなかった。それは火とナイフで岩に刻まれたシンボルを露わにした。目眩を誘う螺旋、蛇のようにうねる舌、彼らを追っているかのような目。奥には、黒い石の祭壇が、暗闇の中で脈打つ腐敗した心臓のように、赤い鼓動する光を放っていた。
「これは…ただの隠れ家じゃない」アレックスは呟き、背中に冷たい痛みが走った。
「カルト信者の巣だ」エミが結論づけた。彼女の声は一瞬、遊び心のある調子を失った。彼女の目はシンボルを探った。「ギルドが言ってたのと同じだ。そして彼らは何かをしている。悪い何かを」
その時、彼らは足音を聞いた。
複数の足音が、単調なリズムで石を引きずり、叩きながら、側面のトンネルから近づいてきた。
考える間もなく、エミは拳を握った。光の球は消え、祭壇のかすかな輝きだけが壊す暗闇に彼らを沈めた。彼らは岩の形成物の後ろに身を潜め、アレックスの心臓は耳の中で鼓動を打った。
現れた。
夜そのもののように黒いフード付きのローブをまとった人影。彼らの顔は、松明の光をかすかに反射する、特徴のない滑らかな仮面で隠されていた。彼らは陰鬱な行列で進んできた。そして一人ではなかった。
彼らの間には、床にきしむ鎖で引きずられ、人々がいた。口を塞がれ、純粋な恐怖で目を見開いた村人たち。一人、二人、五人…少なくとも八人の捕虜。
「失踪者たちは…」エミの声は、抑えられた怒りの一筋だった。
カルト信者たちは囚人たちを赤い祭壇の前に連れて行った。一人の、他の者より背の高いフードの人物が、手袋をはめた手を上げた。空気を歪ませる言語での、喉を詰まらせるような召唤が立ち上り始めた。
アレックスは力が蓄積されるのを感じた。重く、抑圧的なエネルギーが、彼の胸に重くのしかかった。
「エミ…」彼は警告のささやきを漏らした。
彼女はすでに動き出していた。
「計画は単純よ」彼女は言い、その目にはすでに彼女の力の金色の光がきらめき、帯電し、強まっていた。「彼らを止める。全員」
「プランBは?」アレックスは尋ねた。答えはすでにわかっていたが。
「プランBは、もっと強く勝つこと!」それが彼女の唯一の返答だった。そして彼女は動きの中で炸裂した。
純粋な太陽光のまばゆい閃光が洞窟の中心で爆発し、永遠の一瞬、全てを白く照らした。カルト信者たちは叫び、目を眩まされた。
「今すぐ彼らを離しなさい!!」エミの叫び声は壁に反響し、異議を許さない権威に満ちていた。
その瞬間、他の誰にも見られることなく、アレックスは意志を拡げた。彼は能力を発動させた。微妙で目に見えないエネルギーの流れが、彼からエミへと流れた。それは単純な力の増強ではなく、最適化だった。彼女の反射神経は限界まで鋭くなり、感覚は敵の一挙手一投足を捉え、彼女の既に強大な力はより効率的な経路を見つけるだろう。
「相変わらずだな…」アレックスは独り言ち、柱の影へと滑り込んだ。動き、支援し、エミが解き放とうとしている光の嵐の中の見えない支えとなる準備をして。「真っ直ぐに問題の核心へ引きずり込む」
カルト信者たちは、立ち直り、彼女を取り囲み始めた。彼らの黒いローブは薄暗がりに溶け込んだ。祭壇から、赤い輝きが強まり、背の高い人影が黒曜石の儀式用のナイフを掲げた。
一秒前まで静かで致命的だった戦闘は、今まさに始まろうとしていた。
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