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《番外編》聖者様の贈り物
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ストーリーラインを整理するために、本編からカットしたエピソードです。
でも、切りきれないエピソードがあるので、掲載することにしました。
異世界なのでクリスマスではなく、「聖者様の日」がありますが、クリスマスみたいなもんだと思っていただけたら。
時系列は第一部が終わったのち、半年後ぐらいです。
********************
一年の最後の月。
新しい年の準備のため、城の使用人たちは掃除と片づけに追われながらも、年に一度の祝祭日にむけて活気づいていた。
「もうすぐ聖者様の日だね。今年のプレゼントは何にする?」
「私は恋人にあげるためにマフラーを編んでるの」
「俺は今年恋人に指輪を贈るつもりだ」
「今年は何を振る舞っていただけるのかな」
「楽しみだな」
使用人たちも口々にその日のことを語り合う。
「聖者様の日」は、大切な人にプレゼントを贈ったり、主人からごちそうを振る舞っていただける日だそうだ。
リオは昨年腕を折られて寝込んでいたので、大掃除にも振る舞いにも参加できなかったので、「聖者様の日」のことは、あまりよく覚えていない。もちろんプレゼントなど誰にももらえなかったし。
いや、ひとつだけもらった。
城門の警備隊長は、リオをひどく痛めつけた。大の大人が子どもを手加減無しで殴りつけたのだから、命があってよかった、というレベルで、あちこちの骨にヒビが入り、左目もあと少し殴られた場所がずれていれば失明するところだったとも聞いた。
完治までには時間がかかり、数ヶ月の療養を必要としたし、最初の一月のことはよく覚えていない。いままで毎日忙しく働いていたのに、療養部屋にひとりきり、見舞う人もおらず、心細く孤独な毎日が続いていた。
ある日、侍従長が焼き菓子がたっぷりはいったバスケットを持ってきた。
「聖者様の日の贈り物だよ」と。
そのバスケットは赤や緑のリボンできれいに飾り付けられ、美味しそうな焼き菓子が詰まっていたが、何よりもリオの目を一番惹きつけたのは、中央に飾られた砂糖でできたうさぎだった。
少し間抜けな顔をしたうさぎは赤いトンガリ帽子をかぶっている。
「うわあ、かわいいな」
リオがそのうさぎを手に取ってみると、侍従長は「お前に似てるんじゃないか」と冗談めかして言った。
「まさか。おれ、こんなにかわいくないですよ」リオが笑う。「しかも、きらきらして、すごくきれいだ」
どういう仕掛けになっているのかはわからないが、うさぎはきらきらと金色の光を放っている。
「たしかに、そんなふうに光る砂糖菓子は見たことがないな」
「これ、俺いただいてもいいんですか?」
「もちろんだ。ありがたくいただきなさい」
「うわぁ」
リオはこんなにきれいなものをいままで持ったことがなかった。
はじめて手にした宝物。
とても食べられない。
焼き菓子は毎日ひとつづつ食べたが、うさぎだけは大切に療養部屋の窓枠に飾った。
部屋のどこからでも、一番目立つ場所だからだ。療養期間中、毎日ながめては話しかけ、うさぎはその度にリオを元気づけるように、キラキラと輝き続けた。
春が来て、アウレリオのもとに戻ることを許されることになって、唯一困ったのはこのうさぎの置き場だった。
大切に目につくところには置いておきたいが、部屋に飾らせていただくわけにはいかない。
ポケットの中に入れておいたら崩れてしまいそうだし、どこにも置くところはない。
考えた結果、藁布団や衣類を入れておく長持ちにしまっておくことにした。
長持ちを開ける度に、うさぎが輝いている。
「がんばれ」
そう言われている気がして、長持ちを開ける度に手に取り、頭をなで、大切にしていたのだが。
あるとき、衣類を出そうとしたときに、うっかりうさぎが手から滑り落ちてしまった。
(あっ・・・)
慌てて手を伸ばしたが、床にあたってぱん、という音と同時にうさぎの首が折れ、金色の光もどこかに失われてしまった。
「折れちゃった・・・」
光を失い、ふたつに折れたうさぎは、まるで抜け殻のようだ。あんなに輝いていたのに、切なさに涙がこみあげ、腕でぬぐったが、どんどん涙があふれ止まらなくなった。
(俺が持ってる、たったひとつのきれいなものだったのに・・・)
ショックで足に力が入らない。しゃがみ込んでいると、後ろからアウレリオがのぞきこんだ。
「どうした」
「い、いえ、なんでもありません・・・」
リオは慌てて、こわれたうさぎを手の中に隠した。
「なんだ。見せてみろ」
アウレリオの命令に、リオ無言で手のひらの中のうさぎを差し出した。
うさぎは形をなくし、どんどん崩れてしまっている。最初はふたつに折れただけだったのに、もう、もとの形がなんだったのかもわからないほどだ。
「なんだこれは」
「あの、聖者様の日にいただいた焼き菓子といっしょに入っていたうさぎの砂糖菓子です・・・でした」
「砂糖菓子?なぜ食べなかったんだ?いつものお前ならよろこんで食べるだろう?」
「だって、きれいでかわいくて、とても食べられなくて・・・」
「ほう」
「でも、落としちゃって・・・大切にしていたのに・・・」
泣きたくないのに、また涙があふれ出してきた。
「泣くな。数ヶ月も前の菓子なんだろう?」
「だって・・・うわーん」
悲しくて仕方ない。
(大切にしていたのに、く、くびが折れちゃうなんて・・・かわいそうだ。しかも、耳まで・・・)
我慢しきれず大声で泣いてしまった。どうしても我慢できない。
涙が枯れるほど泣いた後、アウレリオが困った顔をしてリオを見つめていることに気がついた。
「ご、ごめんなさい、俺、ちゃんとしなきゃいけないのに・・・ほんとに、ほんとに・・・ごめ・・・うわーん」
主人を困らせる馬鹿な俺。
手の中のうさぎは魔法が解けたように、ただの砂糖に戻ってしまった。俺のせいだ。
情けない、悲しい・・・また涙が止まらなくなってきた。
「その、同じような砂糖菓子がほしければ、また用意してやろう。だから、泣くな」
アウレリオがリネンでリオの顔をぬぐった。
「うさぎがいいのか?料理人に言っておいてやろう」
「で、でも、聖者様の日の贈り物だったのに・・・」
「アウレリオ様?先生がお待ちかねですよ」ノックとともに侍従が顔を出した。
「ああ、今行く」アウレリオは侍従に応え、リオの頭をぽんとやさしくたたいた。「また作ってやるから。今度はくまにするか?」
そのまま部屋から出ていったアウレリオの背中を、リオはぽかんとして見送った。
「また作ってやる・・・?」
*********************
お読みいただきまして、ありがとうございました。
ちょっと充電しました!
まずは第二部の前に本編に入らなかったエピソードです。
お楽しみいただければうれしいです。
またよろしくお願いします♡
でも、切りきれないエピソードがあるので、掲載することにしました。
異世界なのでクリスマスではなく、「聖者様の日」がありますが、クリスマスみたいなもんだと思っていただけたら。
時系列は第一部が終わったのち、半年後ぐらいです。
********************
一年の最後の月。
新しい年の準備のため、城の使用人たちは掃除と片づけに追われながらも、年に一度の祝祭日にむけて活気づいていた。
「もうすぐ聖者様の日だね。今年のプレゼントは何にする?」
「私は恋人にあげるためにマフラーを編んでるの」
「俺は今年恋人に指輪を贈るつもりだ」
「今年は何を振る舞っていただけるのかな」
「楽しみだな」
使用人たちも口々にその日のことを語り合う。
「聖者様の日」は、大切な人にプレゼントを贈ったり、主人からごちそうを振る舞っていただける日だそうだ。
リオは昨年腕を折られて寝込んでいたので、大掃除にも振る舞いにも参加できなかったので、「聖者様の日」のことは、あまりよく覚えていない。もちろんプレゼントなど誰にももらえなかったし。
いや、ひとつだけもらった。
城門の警備隊長は、リオをひどく痛めつけた。大の大人が子どもを手加減無しで殴りつけたのだから、命があってよかった、というレベルで、あちこちの骨にヒビが入り、左目もあと少し殴られた場所がずれていれば失明するところだったとも聞いた。
完治までには時間がかかり、数ヶ月の療養を必要としたし、最初の一月のことはよく覚えていない。いままで毎日忙しく働いていたのに、療養部屋にひとりきり、見舞う人もおらず、心細く孤独な毎日が続いていた。
ある日、侍従長が焼き菓子がたっぷりはいったバスケットを持ってきた。
「聖者様の日の贈り物だよ」と。
そのバスケットは赤や緑のリボンできれいに飾り付けられ、美味しそうな焼き菓子が詰まっていたが、何よりもリオの目を一番惹きつけたのは、中央に飾られた砂糖でできたうさぎだった。
少し間抜けな顔をしたうさぎは赤いトンガリ帽子をかぶっている。
「うわあ、かわいいな」
リオがそのうさぎを手に取ってみると、侍従長は「お前に似てるんじゃないか」と冗談めかして言った。
「まさか。おれ、こんなにかわいくないですよ」リオが笑う。「しかも、きらきらして、すごくきれいだ」
どういう仕掛けになっているのかはわからないが、うさぎはきらきらと金色の光を放っている。
「たしかに、そんなふうに光る砂糖菓子は見たことがないな」
「これ、俺いただいてもいいんですか?」
「もちろんだ。ありがたくいただきなさい」
「うわぁ」
リオはこんなにきれいなものをいままで持ったことがなかった。
はじめて手にした宝物。
とても食べられない。
焼き菓子は毎日ひとつづつ食べたが、うさぎだけは大切に療養部屋の窓枠に飾った。
部屋のどこからでも、一番目立つ場所だからだ。療養期間中、毎日ながめては話しかけ、うさぎはその度にリオを元気づけるように、キラキラと輝き続けた。
春が来て、アウレリオのもとに戻ることを許されることになって、唯一困ったのはこのうさぎの置き場だった。
大切に目につくところには置いておきたいが、部屋に飾らせていただくわけにはいかない。
ポケットの中に入れておいたら崩れてしまいそうだし、どこにも置くところはない。
考えた結果、藁布団や衣類を入れておく長持ちにしまっておくことにした。
長持ちを開ける度に、うさぎが輝いている。
「がんばれ」
そう言われている気がして、長持ちを開ける度に手に取り、頭をなで、大切にしていたのだが。
あるとき、衣類を出そうとしたときに、うっかりうさぎが手から滑り落ちてしまった。
(あっ・・・)
慌てて手を伸ばしたが、床にあたってぱん、という音と同時にうさぎの首が折れ、金色の光もどこかに失われてしまった。
「折れちゃった・・・」
光を失い、ふたつに折れたうさぎは、まるで抜け殻のようだ。あんなに輝いていたのに、切なさに涙がこみあげ、腕でぬぐったが、どんどん涙があふれ止まらなくなった。
(俺が持ってる、たったひとつのきれいなものだったのに・・・)
ショックで足に力が入らない。しゃがみ込んでいると、後ろからアウレリオがのぞきこんだ。
「どうした」
「い、いえ、なんでもありません・・・」
リオは慌てて、こわれたうさぎを手の中に隠した。
「なんだ。見せてみろ」
アウレリオの命令に、リオ無言で手のひらの中のうさぎを差し出した。
うさぎは形をなくし、どんどん崩れてしまっている。最初はふたつに折れただけだったのに、もう、もとの形がなんだったのかもわからないほどだ。
「なんだこれは」
「あの、聖者様の日にいただいた焼き菓子といっしょに入っていたうさぎの砂糖菓子です・・・でした」
「砂糖菓子?なぜ食べなかったんだ?いつものお前ならよろこんで食べるだろう?」
「だって、きれいでかわいくて、とても食べられなくて・・・」
「ほう」
「でも、落としちゃって・・・大切にしていたのに・・・」
泣きたくないのに、また涙があふれ出してきた。
「泣くな。数ヶ月も前の菓子なんだろう?」
「だって・・・うわーん」
悲しくて仕方ない。
(大切にしていたのに、く、くびが折れちゃうなんて・・・かわいそうだ。しかも、耳まで・・・)
我慢しきれず大声で泣いてしまった。どうしても我慢できない。
涙が枯れるほど泣いた後、アウレリオが困った顔をしてリオを見つめていることに気がついた。
「ご、ごめんなさい、俺、ちゃんとしなきゃいけないのに・・・ほんとに、ほんとに・・・ごめ・・・うわーん」
主人を困らせる馬鹿な俺。
手の中のうさぎは魔法が解けたように、ただの砂糖に戻ってしまった。俺のせいだ。
情けない、悲しい・・・また涙が止まらなくなってきた。
「その、同じような砂糖菓子がほしければ、また用意してやろう。だから、泣くな」
アウレリオがリネンでリオの顔をぬぐった。
「うさぎがいいのか?料理人に言っておいてやろう」
「で、でも、聖者様の日の贈り物だったのに・・・」
「アウレリオ様?先生がお待ちかねですよ」ノックとともに侍従が顔を出した。
「ああ、今行く」アウレリオは侍従に応え、リオの頭をぽんとやさしくたたいた。「また作ってやるから。今度はくまにするか?」
そのまま部屋から出ていったアウレリオの背中を、リオはぽかんとして見送った。
「また作ってやる・・・?」
*********************
お読みいただきまして、ありがとうございました。
ちょっと充電しました!
まずは第二部の前に本編に入らなかったエピソードです。
お楽しみいただければうれしいです。
またよろしくお願いします♡
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