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《番外編2》リオの恩返し
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その答えを知っているのは侍従長に違いない。
「侍従長さま、去年の聖者様の日に焼き菓子のかごを頂いたのですが、あれはどちら様からいただいたんでしょうか」
「焼き菓子のかご?・・・ああ、あれか」
侍従長は少し考え、思い出したようだ。
「毎年、城では自分の主人からごちそうをいただけるんだ。お前は去年寝込んでいたから、お前の好物を差し入れてやれとアウレリオ様がおっしゃったんだよ。いつもアウレリオ様の毒見を嫌がらずに誠実に働いている礼だとおっしゃって」
「アウレーリョ様が?」
「食い意地が張ってるから、焼き菓子をたくさん焼いてやれとおっしゃってな。かごいっぱいの焼き菓子を届けただろう?」
「じゃあ、あのうさぎの砂糖菓子は・・・」
「アウレリオ様が、お前はうさぎに似ているとおっしゃって」
「う、うさぎ?」
侍従長はカラカラと笑った。
「お前はずいぶんと気に入られているんだな。使用人にそんなお心遣いのできる方だとは、あのときはじめて知ったよ」
「アウレーリョ様が・・・」
リオの胸の奥があたたかくなり、同時にぎゅっと締めつけられた。
(俺、全然知らなかった。そんなこと、全然知らなかった・・・アウレリオ様も何もおっしゃらないから・・・)
*********************
数日たつと、なにか、恩返しをしたい。そんな気持ちがふつふつと沸き上がってきた。
周りにいる使用人たちは、皆大切な人に何かをプレゼントしたいと、楽しそうに話している。
自分にもプレゼントをあげる人ができたなんて、ちょっとだけ一人前になったような気分になる。
どんなプレゼントがいいかな。よろこんでもらえるかな。
そんなことを考えるだけでもワクワクした。
アウレリオには金が似合う。
本人は金髪に金色の瞳を持っているのだから、これ以上の金色は必要ないのかもしれないが、一度金がいいと思ってしまえばもうそこから離れられなくなった。
金といえば、何がいいだろう?
指輪?耳飾り?・・・アウレリオ様が耳飾りをしているところは見たことがない。
首飾り?・・・首飾りも、あまり見たことがない。それにアウレリオがつけていた首飾りは正装用のもので、自分の手がとどくわけもない。
うーん・・・
それで、リオの思いつく金でできたものはすべてだった。
そうだ。恋人に指輪を渡すと言っていたあの男に聞いた男の人に聞いてみよう。
その後数日して、ちょうど、アウレリオが出かける日があった。リオはアウレリオについているのが仕事なので、定期的な休みはないが、アウレリオの出かける日は休みをもらうことが多かった。
珍しくリオが休みを申し出たので、侍従長は少し驚いた顔を見せたが、すぐに休みは許可された。
今日は、あの男の人に聞いた金細工師を尋ねるつもりだ。
伯爵家に来てからもらった給金の入った袋を大切に首からぶら下げて、街をぶらつく。
街行く人たちは皆楽しそうに話しながら、プレゼントの包みを持っていたり、店先で交渉したりしている。
恋人や家族といっしょに歩く人を見ると羨ましさにちりっと胸が傷んだが、自分にだってプレゼントを上げたい人がいるんだ、と心を慰めた。
聞いていた金細工師の店は奥まった裏通りにあり、大きな看板はなく、ただ、金色の金槌の看板がぶら下がっているだけだった。リオはその前を三度通り過ぎ、やっと近所の人に聞いて訪ね当てた。
「こんにちは・・・」
緊張しながら店のドアを開けると、カウンターが有り、その奥で職人が作業していた。
「あの、指輪を買いたいんですけど」
勇気を出して職人に話しかけると、片目に大きなレンズをはめて作業していた男が振り向いた。
片目だけが異様に大きく見え、リオは声を上げて驚いた。
「なんだ、がきじゃないか。ここはお前みたいな子どもの来る店じゃないぞ」
「あ、あの、ぼく、客です。お金だって持ってます!」
リオは服の中から、金の入った袋を引っ張り出した。
「こ、これ!ぼくの全財産です。これで、指輪を売ってください!」
職人は立ち上がり、しかめっ面のままリオに近づいてきた。
近くで見ると山のように大きくて、しかも職業病のせいか背中が曲がっている。
「どれ見せてみろ」
男は袋を受け取ると金貨を数えた。
「1,2、3・・・と15枚か」
リオは大きくうなずいた。リオにとってはとてつもない大金だった。
「あのな、小僧。金細工ってのはものすごく値が張るものなんだ」
「はい」だから、大金を持ってきたのに。
「だから、この店にあるものでお前の買えるものはないんだ」
「えっ?だって、俺、一年以上なんにも使わなかったのに」
「あーーー。そうか、お前さんの1年分以上の給金なんだな。そうか。誰かのお使いできたわけじゃなくて、自分の給金を持ってきたんだな?」
「はい、そうです」リオにもだんだんと状況が飲み込めてきた。
ここはリンゴやパンを買うような店とはちがう。
店に商品が並べてあるわけでもない。ただ、奥の職人がいるところにはやりかけの金細工が置かれているが、ものすごく細かくて、リオが欲しいものとはちょっと違っている。
「ここでは・・・指輪は買えないんですか?」
「・・・買えないこともないが。正直、付き合いで頼まれて作ってる程度なんだ。本業はゴブレットとか貴族の方々のための宝石を細工したり・・・」
「ああ、そうなんですか・・・」
リオはがっかりした。せっかく、アウレリオにあう何かをプレゼントしたかったのに。
「俺達みたいな金細工師じゃなくて、真鍮を作ってる職人もいるから、そっちはどうだ?最近じゃ金を薄く伸ばして貼り付けて、本物みたいだって評判がいいみたいだぞ?しかも、値段はずっと安いし」
(アウレリオ様に、まがい物を渡すなんて、あり得ない・・・)
リオの肩が下がり、来たときよりもひと回り小さくなったように見え、金細工師の親方は気の毒になってしまった。こんな小さな子どもが一生懸命働いた金を貯めて持ってきたんだ。ここは一肌脱いでやるか。
「よし、わかった!俺も鬼じゃない。なんとかしてやろう」
「本当ですか!?」リオの表情がぱっと明るくなった。
「お前さんの予算の範囲でなんとかしてやろうじゃないか。材料費だけでいい。俺の工賃はまけてやる。これは破格だぞ?」
「え!いいんですか?」
「だって、お前さんの1年分の給金なんだろう?金貨はピカピカで触ったあともない。さぞかし大切にため込んでいたんだろうさ」
リオはちょっと恥ずかしくなった。「そういうわけじゃ・・・」落ち着かない気持ちで身体をもぞもぞと動かす。「ただ、食べものも寝る場所もいただけるので使い道がなくて・・・」
「そうかそうか」親方はリオの頭を撫でた。「小さいのに頑張って奉公してるんだな。えらいぞ。来週また来なさい。それまでに時間を見つけて作っておいてやるから」
「はい!ありがとうございます!」
「で、指のサイズは?」
「・・・え?」
「指のサイズだよ。それがわからなきゃ指輪は作れんだろう」
「・・・」考えたこともなかった。指輪は誰かの指にはまっているところしか見たことがない。自分の指輪を持っていなリオは、指輪にはサイズが有るということすら知らなかった。困り果てて、親方の顔を見たが、当然親方の顔には答えは書いてない。
「あの・・・このくらいでしょうか?」リオは自分の親指を突き出した。
*******************
(お礼)
本日もお読みいただきまして、ありがとうございました!
ちょうどクリスマスシーズンですし、こんな番外編もありかなと思っていただければ・・・
本日も♡を頂きましてありがとうございました。
広告を回していただいた方もありがとうございます。
明日も晴れるように願っておきました!
「侍従長さま、去年の聖者様の日に焼き菓子のかごを頂いたのですが、あれはどちら様からいただいたんでしょうか」
「焼き菓子のかご?・・・ああ、あれか」
侍従長は少し考え、思い出したようだ。
「毎年、城では自分の主人からごちそうをいただけるんだ。お前は去年寝込んでいたから、お前の好物を差し入れてやれとアウレリオ様がおっしゃったんだよ。いつもアウレリオ様の毒見を嫌がらずに誠実に働いている礼だとおっしゃって」
「アウレーリョ様が?」
「食い意地が張ってるから、焼き菓子をたくさん焼いてやれとおっしゃってな。かごいっぱいの焼き菓子を届けただろう?」
「じゃあ、あのうさぎの砂糖菓子は・・・」
「アウレリオ様が、お前はうさぎに似ているとおっしゃって」
「う、うさぎ?」
侍従長はカラカラと笑った。
「お前はずいぶんと気に入られているんだな。使用人にそんなお心遣いのできる方だとは、あのときはじめて知ったよ」
「アウレーリョ様が・・・」
リオの胸の奥があたたかくなり、同時にぎゅっと締めつけられた。
(俺、全然知らなかった。そんなこと、全然知らなかった・・・アウレリオ様も何もおっしゃらないから・・・)
*********************
数日たつと、なにか、恩返しをしたい。そんな気持ちがふつふつと沸き上がってきた。
周りにいる使用人たちは、皆大切な人に何かをプレゼントしたいと、楽しそうに話している。
自分にもプレゼントをあげる人ができたなんて、ちょっとだけ一人前になったような気分になる。
どんなプレゼントがいいかな。よろこんでもらえるかな。
そんなことを考えるだけでもワクワクした。
アウレリオには金が似合う。
本人は金髪に金色の瞳を持っているのだから、これ以上の金色は必要ないのかもしれないが、一度金がいいと思ってしまえばもうそこから離れられなくなった。
金といえば、何がいいだろう?
指輪?耳飾り?・・・アウレリオ様が耳飾りをしているところは見たことがない。
首飾り?・・・首飾りも、あまり見たことがない。それにアウレリオがつけていた首飾りは正装用のもので、自分の手がとどくわけもない。
うーん・・・
それで、リオの思いつく金でできたものはすべてだった。
そうだ。恋人に指輪を渡すと言っていたあの男に聞いた男の人に聞いてみよう。
その後数日して、ちょうど、アウレリオが出かける日があった。リオはアウレリオについているのが仕事なので、定期的な休みはないが、アウレリオの出かける日は休みをもらうことが多かった。
珍しくリオが休みを申し出たので、侍従長は少し驚いた顔を見せたが、すぐに休みは許可された。
今日は、あの男の人に聞いた金細工師を尋ねるつもりだ。
伯爵家に来てからもらった給金の入った袋を大切に首からぶら下げて、街をぶらつく。
街行く人たちは皆楽しそうに話しながら、プレゼントの包みを持っていたり、店先で交渉したりしている。
恋人や家族といっしょに歩く人を見ると羨ましさにちりっと胸が傷んだが、自分にだってプレゼントを上げたい人がいるんだ、と心を慰めた。
聞いていた金細工師の店は奥まった裏通りにあり、大きな看板はなく、ただ、金色の金槌の看板がぶら下がっているだけだった。リオはその前を三度通り過ぎ、やっと近所の人に聞いて訪ね当てた。
「こんにちは・・・」
緊張しながら店のドアを開けると、カウンターが有り、その奥で職人が作業していた。
「あの、指輪を買いたいんですけど」
勇気を出して職人に話しかけると、片目に大きなレンズをはめて作業していた男が振り向いた。
片目だけが異様に大きく見え、リオは声を上げて驚いた。
「なんだ、がきじゃないか。ここはお前みたいな子どもの来る店じゃないぞ」
「あ、あの、ぼく、客です。お金だって持ってます!」
リオは服の中から、金の入った袋を引っ張り出した。
「こ、これ!ぼくの全財産です。これで、指輪を売ってください!」
職人は立ち上がり、しかめっ面のままリオに近づいてきた。
近くで見ると山のように大きくて、しかも職業病のせいか背中が曲がっている。
「どれ見せてみろ」
男は袋を受け取ると金貨を数えた。
「1,2、3・・・と15枚か」
リオは大きくうなずいた。リオにとってはとてつもない大金だった。
「あのな、小僧。金細工ってのはものすごく値が張るものなんだ」
「はい」だから、大金を持ってきたのに。
「だから、この店にあるものでお前の買えるものはないんだ」
「えっ?だって、俺、一年以上なんにも使わなかったのに」
「あーーー。そうか、お前さんの1年分以上の給金なんだな。そうか。誰かのお使いできたわけじゃなくて、自分の給金を持ってきたんだな?」
「はい、そうです」リオにもだんだんと状況が飲み込めてきた。
ここはリンゴやパンを買うような店とはちがう。
店に商品が並べてあるわけでもない。ただ、奥の職人がいるところにはやりかけの金細工が置かれているが、ものすごく細かくて、リオが欲しいものとはちょっと違っている。
「ここでは・・・指輪は買えないんですか?」
「・・・買えないこともないが。正直、付き合いで頼まれて作ってる程度なんだ。本業はゴブレットとか貴族の方々のための宝石を細工したり・・・」
「ああ、そうなんですか・・・」
リオはがっかりした。せっかく、アウレリオにあう何かをプレゼントしたかったのに。
「俺達みたいな金細工師じゃなくて、真鍮を作ってる職人もいるから、そっちはどうだ?最近じゃ金を薄く伸ばして貼り付けて、本物みたいだって評判がいいみたいだぞ?しかも、値段はずっと安いし」
(アウレリオ様に、まがい物を渡すなんて、あり得ない・・・)
リオの肩が下がり、来たときよりもひと回り小さくなったように見え、金細工師の親方は気の毒になってしまった。こんな小さな子どもが一生懸命働いた金を貯めて持ってきたんだ。ここは一肌脱いでやるか。
「よし、わかった!俺も鬼じゃない。なんとかしてやろう」
「本当ですか!?」リオの表情がぱっと明るくなった。
「お前さんの予算の範囲でなんとかしてやろうじゃないか。材料費だけでいい。俺の工賃はまけてやる。これは破格だぞ?」
「え!いいんですか?」
「だって、お前さんの1年分の給金なんだろう?金貨はピカピカで触ったあともない。さぞかし大切にため込んでいたんだろうさ」
リオはちょっと恥ずかしくなった。「そういうわけじゃ・・・」落ち着かない気持ちで身体をもぞもぞと動かす。「ただ、食べものも寝る場所もいただけるので使い道がなくて・・・」
「そうかそうか」親方はリオの頭を撫でた。「小さいのに頑張って奉公してるんだな。えらいぞ。来週また来なさい。それまでに時間を見つけて作っておいてやるから」
「はい!ありがとうございます!」
「で、指のサイズは?」
「・・・え?」
「指のサイズだよ。それがわからなきゃ指輪は作れんだろう」
「・・・」考えたこともなかった。指輪は誰かの指にはまっているところしか見たことがない。自分の指輪を持っていなリオは、指輪にはサイズが有るということすら知らなかった。困り果てて、親方の顔を見たが、当然親方の顔には答えは書いてない。
「あの・・・このくらいでしょうか?」リオは自分の親指を突き出した。
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本日もお読みいただきまして、ありがとうございました!
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