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第二十九話 そろそろ結婚?
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「ちょっと、アウレリオ!聞いているの!?」
窓の下では、リオが大柄な男に肩を抱かれていた。親しげに笑いながら、耳元に口を寄せ・・・
(不快だ)
リオは私の従者なのに。なぜあんな男が馴れ馴れしく・・・
ドレープを握りしめる手に力が入る。
今すぐあの男を引き離したい。リオに触れるその指先を払いのけたい。
リオが何かを言い、歩き去ったあと、男が追いかけリオを抱きしめた。
(なんだ、あいつは!)
思わず息を飲み、駆け出しそうになったとき、母が叫んだ。
「アウレリオ!!!」
「なんですか」この忙しいときに。今すぐリオをあの男から引き離さないと・・・
「さっきから、あなた聞いてるの?そろそろエミリアをうちに迎え入れないと」
窓の外にいるリオに目を奪われていたが、母の話の途中だった。
テーブルの上には薔薇が飾られ、金をあしらったティーセットも焼き菓子も、全ては母を引き立てるための小道具にしか見えない。
アウレリオは真面目くさった顔で椅子に座り、カップを口に運んだ。
「さて、エミリアを?なぜ」
「やっぱり何も聞いてなかったんじゃないの!あなたいつになったら結婚するつもりなのよ!」
「・・・まあ、そのうち?」
いまさら母親面するつもりか?第一夫人のソフィアは、アウレリオが17を過ぎた頃から、急に結婚をせっつくようになってきた。
「そのうち、そのうちって、あなたと同い年の従兄弟はもう3人の子持ちよ?」
「ひとりは婚外子だと聞いてますがね」
「そんなの関係ないでしょ!」
母の怒りは爆発した。
「あなた、自分の役目をわかっているの?あなたはこの伯爵領の跡取りなのよ?さっさと結婚して足場を固めないと。そして早く跡取りを作りなさい。まずは男の子を。それから女の子を。それがあなたの役目なのよ」
「まるで子をなすための家畜のような言いっぷりではありませんか」
「家畜だなんて!貴族の跡取りとして産まれた以上、結婚も跡取りを作ることも、大切なお役目のひとつなのよ。わかっているでしょう」
(やはり家畜ではないか)
アウレリオはまた視線を窓の外に移した。
「いつもそんなふうに、はぐらかしてばかりで。エミリアがいくつになったと思っているの?」
「・・・15ぐらいでしたか?まだ子ども・・・」
「17よ!17!うかうかしていたら適齢期を過ぎてしまうわ。結婚式の準備には一年・・・すくなくとも半年はかかるんですからね?」
「・・・」
「なぜエミリアと仲良くできないの?いえ、仲良く、なんて言いすぎね・・・せめて、将来を共にする程度の親しみを持つことはできないの?」
「私の顔を見る度に怯えている少女に何を求めろと言うんですか」
「あなたが無愛想すぎるからよ!興味も関心もない。そんな態度が相手にわからないと思っているの?女はね、あなたが思ってるよりも遥かにするどいのよ?」
アウレリオはバレないようにため息をかみ殺した。
「ねえ、アウレリオ。お前、エミリアが嫌なら婚約解消してもいいのよ。なんなら、他のご令嬢を探しても・・・」
「別に変える必要はありません」
エミリアはアウレリオを恐れて、必要以上に近づかないし、愛をせがんだりもしない。これから、婚約市場に送り出されて、たくさんの令嬢たちの相手をすると考えただけでもぞっとした。
「気に入ってるのね?じゃあ、いいじゃない!」
ソフィアはこれで決まりと両手を打ち合わせた。
「エミリアは行儀見習いにこさせます。結婚は半年後か・・・遅くとも1年後までには。もしそれまでに子を授かったら、それはそれで・・・」
「いい加減にしてください」
アウレリオはピシャリと言った。
「互いによく知りもしないのに、そんな事態にはなりません」
「あら。恋に落ちれば時間なんて・・・」
「へえ」くだらない。何が恋だ。姉妹を天秤にかけて遊んでいた父に弄ばれていたくせに。「ありがたくて涙が出そうですよ」ソフィアの眉間に深いしわが刻まれた。
「皮肉はやめて」
「皮肉の一つも言いたくなりますよ。もう、戻ってよろしいでしょう?私にも用事があるんですよ」
「アウレリオ。母を恨む気持ちはわかります。でも、これはすべてあなたのため・・・」
「わかっています」
アウレリオは母の言葉を遮った。私のためを思うなら、なぜ毒蛇を止めなかった?
いや、そんなことを考えるだけでも、馬鹿馬鹿しい。
「エミリアのことは母上がお好きにされたらいいでしょう。ですが、私にこれ以上の情けを求めないでください。あいにく、家族の情とやらも経験がありませんので。愛だの恋だの言われても、理解不能ですから。エミリアこそ恋に目覚めて、こんな男は嫌だと逃げ出すかもしれませんよ?」
「アウレリオ!」
ソフィアが絶望混じりの声を上げたが、すでにアウレリオは部屋から出ていった後だった。
「困った子だこと」
ソフィアはため息をついた。
あの子は潔癖すぎて心配なところがある。あの年頃の男ならもっと遊んでいるのが普通なのに、舞踏会でもパーティーでも最低限の付き合いをしてはさっさと帰ってしまう。女性に言い寄られても軽くかわし、興味のある素振りすら見せない。一体何が楽しいのかしら。
昔の伯爵様はそれはそれはハンサムで、魅力的だったわ・・・妹に手を出していたと知ったときには絶望したものだけど。もうひとつ、大きなため息。妹が悪いのよね。いつも思わせぶりな態度で殿方を誘惑するようなことばかりしていたもの・・・
でも、この家の跡取りを産んだのは私。あの子は質の悪い子供ばかり何人も産んだけど、どの子もだめだわ。アウレリオは伯爵家の繁栄に役立つのは自分だってことをしっかり示してくれれば。そうなれば、妹に最終的に勝つのは私だわ。
「エミリアにここに来るように言いましょう。半年後には結婚式よ」
誰もいない部屋の中、ソフィアは自分に言い聞かせるように繰り返した。
*********************
アウレリオは自室に戻り、ベッドに身を預けた。
ゆっくりと身体が沈み込む。
(面白くない)
小指に光る金色の指輪をそっと撫でた。
(面白くない。面白くないんだよ。リオ。早く戻ってこい)
*********************
(お礼)
本日も、お読みいただきましてありがとうございました。
♡を投げてくださった方、広告を回してくださった方、栞を挟んでくださった方、皆様に感謝です。
明日は、そうですね。なにがいいかな。
・・・(考え中)
美味しいケーキに出会えますように。
それでは、また明日♪
窓の下では、リオが大柄な男に肩を抱かれていた。親しげに笑いながら、耳元に口を寄せ・・・
(不快だ)
リオは私の従者なのに。なぜあんな男が馴れ馴れしく・・・
ドレープを握りしめる手に力が入る。
今すぐあの男を引き離したい。リオに触れるその指先を払いのけたい。
リオが何かを言い、歩き去ったあと、男が追いかけリオを抱きしめた。
(なんだ、あいつは!)
思わず息を飲み、駆け出しそうになったとき、母が叫んだ。
「アウレリオ!!!」
「なんですか」この忙しいときに。今すぐリオをあの男から引き離さないと・・・
「さっきから、あなた聞いてるの?そろそろエミリアをうちに迎え入れないと」
窓の外にいるリオに目を奪われていたが、母の話の途中だった。
テーブルの上には薔薇が飾られ、金をあしらったティーセットも焼き菓子も、全ては母を引き立てるための小道具にしか見えない。
アウレリオは真面目くさった顔で椅子に座り、カップを口に運んだ。
「さて、エミリアを?なぜ」
「やっぱり何も聞いてなかったんじゃないの!あなたいつになったら結婚するつもりなのよ!」
「・・・まあ、そのうち?」
いまさら母親面するつもりか?第一夫人のソフィアは、アウレリオが17を過ぎた頃から、急に結婚をせっつくようになってきた。
「そのうち、そのうちって、あなたと同い年の従兄弟はもう3人の子持ちよ?」
「ひとりは婚外子だと聞いてますがね」
「そんなの関係ないでしょ!」
母の怒りは爆発した。
「あなた、自分の役目をわかっているの?あなたはこの伯爵領の跡取りなのよ?さっさと結婚して足場を固めないと。そして早く跡取りを作りなさい。まずは男の子を。それから女の子を。それがあなたの役目なのよ」
「まるで子をなすための家畜のような言いっぷりではありませんか」
「家畜だなんて!貴族の跡取りとして産まれた以上、結婚も跡取りを作ることも、大切なお役目のひとつなのよ。わかっているでしょう」
(やはり家畜ではないか)
アウレリオはまた視線を窓の外に移した。
「いつもそんなふうに、はぐらかしてばかりで。エミリアがいくつになったと思っているの?」
「・・・15ぐらいでしたか?まだ子ども・・・」
「17よ!17!うかうかしていたら適齢期を過ぎてしまうわ。結婚式の準備には一年・・・すくなくとも半年はかかるんですからね?」
「・・・」
「なぜエミリアと仲良くできないの?いえ、仲良く、なんて言いすぎね・・・せめて、将来を共にする程度の親しみを持つことはできないの?」
「私の顔を見る度に怯えている少女に何を求めろと言うんですか」
「あなたが無愛想すぎるからよ!興味も関心もない。そんな態度が相手にわからないと思っているの?女はね、あなたが思ってるよりも遥かにするどいのよ?」
アウレリオはバレないようにため息をかみ殺した。
「ねえ、アウレリオ。お前、エミリアが嫌なら婚約解消してもいいのよ。なんなら、他のご令嬢を探しても・・・」
「別に変える必要はありません」
エミリアはアウレリオを恐れて、必要以上に近づかないし、愛をせがんだりもしない。これから、婚約市場に送り出されて、たくさんの令嬢たちの相手をすると考えただけでもぞっとした。
「気に入ってるのね?じゃあ、いいじゃない!」
ソフィアはこれで決まりと両手を打ち合わせた。
「エミリアは行儀見習いにこさせます。結婚は半年後か・・・遅くとも1年後までには。もしそれまでに子を授かったら、それはそれで・・・」
「いい加減にしてください」
アウレリオはピシャリと言った。
「互いによく知りもしないのに、そんな事態にはなりません」
「あら。恋に落ちれば時間なんて・・・」
「へえ」くだらない。何が恋だ。姉妹を天秤にかけて遊んでいた父に弄ばれていたくせに。「ありがたくて涙が出そうですよ」ソフィアの眉間に深いしわが刻まれた。
「皮肉はやめて」
「皮肉の一つも言いたくなりますよ。もう、戻ってよろしいでしょう?私にも用事があるんですよ」
「アウレリオ。母を恨む気持ちはわかります。でも、これはすべてあなたのため・・・」
「わかっています」
アウレリオは母の言葉を遮った。私のためを思うなら、なぜ毒蛇を止めなかった?
いや、そんなことを考えるだけでも、馬鹿馬鹿しい。
「エミリアのことは母上がお好きにされたらいいでしょう。ですが、私にこれ以上の情けを求めないでください。あいにく、家族の情とやらも経験がありませんので。愛だの恋だの言われても、理解不能ですから。エミリアこそ恋に目覚めて、こんな男は嫌だと逃げ出すかもしれませんよ?」
「アウレリオ!」
ソフィアが絶望混じりの声を上げたが、すでにアウレリオは部屋から出ていった後だった。
「困った子だこと」
ソフィアはため息をついた。
あの子は潔癖すぎて心配なところがある。あの年頃の男ならもっと遊んでいるのが普通なのに、舞踏会でもパーティーでも最低限の付き合いをしてはさっさと帰ってしまう。女性に言い寄られても軽くかわし、興味のある素振りすら見せない。一体何が楽しいのかしら。
昔の伯爵様はそれはそれはハンサムで、魅力的だったわ・・・妹に手を出していたと知ったときには絶望したものだけど。もうひとつ、大きなため息。妹が悪いのよね。いつも思わせぶりな態度で殿方を誘惑するようなことばかりしていたもの・・・
でも、この家の跡取りを産んだのは私。あの子は質の悪い子供ばかり何人も産んだけど、どの子もだめだわ。アウレリオは伯爵家の繁栄に役立つのは自分だってことをしっかり示してくれれば。そうなれば、妹に最終的に勝つのは私だわ。
「エミリアにここに来るように言いましょう。半年後には結婚式よ」
誰もいない部屋の中、ソフィアは自分に言い聞かせるように繰り返した。
*********************
アウレリオは自室に戻り、ベッドに身を預けた。
ゆっくりと身体が沈み込む。
(面白くない)
小指に光る金色の指輪をそっと撫でた。
(面白くない。面白くないんだよ。リオ。早く戻ってこい)
*********************
(お礼)
本日も、お読みいただきましてありがとうございました。
♡を投げてくださった方、広告を回してくださった方、栞を挟んでくださった方、皆様に感謝です。
明日は、そうですね。なにがいいかな。
・・・(考え中)
美味しいケーキに出会えますように。
それでは、また明日♪
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