5月の雨の、その先に

藍音

文字の大きさ
44 / 152

第三十九話 不整脈

しおりを挟む
心臓が大きな音をたて、胸から飛び出さないのが不思議なほど、強く鼓動を打ち鳴らす。

「あ、あ、あわわわ・・・」

アウレリオはニヤッと笑ってリオの手を軽く引っ張った。
リオの身体がグラッと揺れ、風呂の中に倒れ込みそうになり、はっとした。

「だ、だ、だめです!着替えが無いんです!お仕着せを濡らしてしまったら、明日着るものがありません!」

迷ってる場合じゃなかった。アウレリオは、次は本気で引っ張るだろう。
しかも、一緒に風呂に入るなんて、難易度が高くないか?上級向けっていうか・・・
何でアウレリオがリオといっしょに風呂に入ろうと思ったのか分からない。そばにいたい気持ちはあるけど、うぶなリオには・・・

「お、おれ、無理です」リオは真っ赤に染まった頬を隠すように、両手で顔を覆った。「なんか、今までとはちがうんです。アウレリオ様のお身体も見られません・・・!!それに、目の前で服を脱ぐなんて・・・」
アウレリオの入浴の手伝いで身体を洗ったことは何度もある。
その時もどぎまぎすることはあったけど、今の比じゃない。
そんなリオをみてアウレリオは口をとがらせた。
「この間、騎士たちと稽古をしていたときは、脱いでたじゃないか。あんな大勢の男達と一緒に裸になって・・・」
「男同士でしょ?しかも、裸だなんて。大げさですよ」
「へえ?」
「いやだから、そうじゃなくて・・・あの人達とアウレリオ様はちがうでしょう?」
「何がちがうんだ。性別は変わらないだろう」
「そ、そうかも知れないけど・・・いや、そうじゃない、大違いです!大体、騎士たちと稽古していたときに脱いでいたって・・・いつの話ですか。真夏でしょ?暑かったんです!」
「じゃあ、いま、暑くなればいいのか?」
「いや、そうじゃなくて・・・俺、おかしいのかもしれません。ここのところ、ずっと、アウレリオ様を見ると、心臓が妙な動きを・・・」
「不整脈だ」
「不整脈?」
「心臓が妙な動きをしているだけだから、気にしなくていい」

主人は本気で言ってるんだろうか。
心臓が妙な動きをしている、不整脈?
前から人の感情にはうとい方だったが、ここまで?
心臓が妙な動きをするのは不整脈じゃないでしょう・・・?

「で、でも、本当に不整脈なんですか?」

一応、主人なので遠慮がちに聞いてみる。

「他にどう説明したらいいんだ?理由もなく、ある一定の条件下でだけ、心臓がおかしくなる」
「一定の条件?」
「お前が・・・」
リオはアウレリオをじっと見た。
「そんな目で見たとき。それだけじゃない、姿を見かけたとき。騎士たちと話していると、別の種類の不整脈が起こる。胸がこう・・・焼けるような」アウレリオは胸をさすり、真剣な顔になった。「医者に聞いたら不整脈だと。放っておけばおさまるのだから、病気ではないそうだ」
「・・・不整脈ですか」
「そうだ」
「ひとつ質問ですけど、同じような症状はどこでも起こるのですか?」
「・・・いや?」しばらく考えた後、そういえば無いなと首をかしげている。

リオはおかしくなった。
「じゃあ、今、若様を見ると心臓がどくどくと音を立てているのは、不整脈なんですね?」
「そのとおりだ。そのうち治るから、心配しなくていい」
「おうかがいしますけど、いまも、不整脈なんですか?」
「・・・それは、まあ」
「もしかして、特大の?」
「・・・」アウレリオは視線をそらした。
「へえ、不整脈なんですね」絶対にそんなの、おかしいだろ。
リオは服のボタンを外しはじめた。「それは、どうしたら治るんでしょうか?」
(どうしたら、認めることができるんでしょうか?)

リオがシャツを脱ぎ、床に落とした。白い肌にピンク色の乳首が誘うように浮かんで見える。しかも、アウレリオがつけた痕があちこち花のように散らばっている。アウレリオは、思わずゴクリとつばを飲みこんだ。
「ねえ?アウレリオさま」なぜ、こんなにリオは魅力的なんだろう。
「それは・・・ほうっておけば」まるで機械のように答える。
「今は、どうですか?」リオが唇をなめた。ピンクの濡れた舌が、ちろりと柔らかな唇の間から見えた。
「ひどくなるばかりだ」

リオに手を伸ばしたい。肌に触れたい。体温を手のひらで感じて、リオの乳首を舐めて、あえぐ声が聞きたい。
食い入るように見つめるアウレリオにリオは微笑みかけた。

「そうですか。では、失礼します」

ぱさっとまとっていた衣類が落ちた。
慎み深くリネンを腰に巻き、湯船につま先をつける。
湯が揺れると耐えきれず、アウレリオはリオの腰に手を伸ばし、自分の膝の上にリオを座らせた。
リオはアウレリオに体重をかけてしまわないように、逃げようとしたが、逃がすものか。

アウレリオの中心が主張を始める。
それに気づいたリオが頬を染め、視線をそらした。

「せ、狭いですね。なぜ一緒に入ろうと思ったんですか?」
「理由はない。ただ、近くにいたかった」アウレリオの熱い吐息がリオをくすぐる。互いの鼓動は大きすぎてどっちがどっちだか、もうわからない。
「アウレリオ様の不整脈はひどくなっているようですよ?」
「だが、この不整脈は気分がいい」アウレリオが甘えるように額をリオにぐりぐりと押し付けた。
「俺もです」リオが体勢を変え、アウレリオと向き合った。「俺も、不整脈がひどくなるばかりなのに、でも、なんか、ふわふわするような、うきうきするような気がします」

もう耐えられない。
リオの甘い香り、温かいからだ。アウレリオのつけた花が飛び散る白い肌。

「リオ」
喉奥から唸るように振り絞ると、リオの唇に口を押し当て、貪り食った。
ぞくぞくと稲妻のような快感が走り抜ける。思わずこぼれたため息すら逃さずに、もっともっとと舌先を絡めた。
生ぬるい湯の中で、ふたりの口づけの音だけが響く。

リオの肌のにおいは湯と混ざり合い、アウレリオを魅了する。女の手ではないが、ほそく筋張った指が誘うようにアウレリオの肩から胸元へ触れた。

「お前だけだ」アウレリオがつぶやく。
「俺だって、アウレリオ様だけです」不整脈を起こすのは、と言葉を飲み込む。

アウレリオがうれしそうに笑い、リオの鼻と自分の鼻をこすり合わせ、そしてまた口づけた。
吐息が混じり合う。
アウレリオの唇は、リオの唇から、頬、首筋、胸元へとあちこちをさまよいはじめた。






**********************


(お礼)
本日もお読みいただきまして、ありがとうございました。
職場でめちゃめちゃ咳をしている人が増えてます!なんとか、風邪を引かずに年末まで逃げ切りたいところです。
絶対風邪ひきたくない・・・

今日も広告を回していただいたり、ハートを投げていただきまして、ありがとうございました。
絶対風邪を引かないように、皆様の分も願っておきます。
なにか良いお守りは無いでしょうか。
とりあえず、N95マスクでしょうか。

それでは、明日もまたおあいしましょう!そして、今日が当日でした。メリークリスマス!!




しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

ヒーロー組織のサポートメンバーになりました!

はちのす
BL
朝起きたら、街はゾンビだらけ!生き残りたい俺は、敵に立ち向かうヒーロー組織<ビジランテ>に出逢った。 ******** 癖の強いヒーロー達の"心と胃の拠り所"になるストーリー! ※ちょっとイチャつきます。

神子は二度、姿を現す

江多之折(エタノール)
BL
1/7外伝含め完結 ファンタジー世界で成人し、就職しに王城を訪れたところ異世界に転移した少年が転移先の世界で神子となり、壮絶な日々の末、自ら命を絶った前世を思い出した主人公。 死んでも戻りたかった元の世界には戻ることなく異世界で生まれ変わっていた事に絶望したが 神子が亡くなった後に取り残された王子の苦しみを知り、向き合う事を決めた。 戻れなかった事を恨み、死んだことを後悔し、傷付いた王子を助けたいと願う少年の葛藤。 王子様×元神子が転生した侍従の過去の苦しみに向き合い、悩みながら乗り越えるための物語。 ※小説家になろうに掲載していた作品を改修して投稿しています。 描写はキスまでの全年齢BL

辺境伯は嵌められた元令息から目が離せない

コムギ
BL
冤罪により、辺境の地へ追いやられた元侯爵令息ユベール。 だが彼は、あまりのことに気を病んで――はいなかった。 野山を駆け回り、虫を捕まえ、草花をスケッチし、のんびり釣りをする。 それはすべて、侯爵家の令息として縛られていた頃には許されなかった自由だった。 そんな生活から一年。 冤罪を証明できそうだと、幼なじみの王太子から報せが届く。 ――王都へ戻れる。 それは同時に、あの窮屈で冷たい場所へ戻るということでもあった。 迷うユベールの前に現れたのは、これまで静かに見守るだけだった辺境伯ラドヴァン。 「ならば、ずっとここにいろ」 「俺と婚約すればいい」 不器用に、しかし真っ直ぐに差し伸べられた手。 優しく(時に暑苦しく)包囲してくる辺境伯と、元侯爵令息の恋物語。 ※他サイトにも掲載しています。

秘匿された第十王子は悪態をつく

なこ
BL
ユーリアス帝国には十人の王子が存在する。 第一、第二、第三と王子が産まれるたびに国は湧いたが、第五、六と続くにつれ存在感は薄れ、第十までくるとその興味関心を得られることはほとんどなくなっていた。 第十王子の姿を知る者はほとんどいない。 後宮の奥深く、ひっそりと囲われていることを知る者はほんの一握り。 秘匿された第十王子のノア。黒髪、薄紫色の瞳、いわゆる綺麗可愛(きれかわ)。 ノアの護衛ユリウス。黒みかがった茶色の短髪、寡黙で堅物。塩顔。 少しずつユリウスへ想いを募らせるノアと、頑なにそれを否定するユリウス。 ノアが秘匿される理由。 十人の妃。 ユリウスを知る渡り人のマホ。 二人が想いを通じ合わせるまでの、長い話しです。

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

処理中です...