5月の雨の、その先に

藍音

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第六十九話 不安 ※※※

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目が覚めると、なぜかさっきまでとは違う姿勢で貫かれ、ゆるやかに揺らされていた。
先ほどは後ろから貫かれていたのだが、いまは座面に横たわり、大きく足を広げる格好になっていた。
腰の動きだけは眠っているリオに気を使っているようだが、奥の敏感な部分に当てるように刺激しながら、動き続けている。気づいたときに驚いて小さく悲鳴を上げてしまった。
こんなこと、今まで一度もなかったのに!!
まるで長いこと飢えた人に食料を与えたような。
むさぼりつくされるような戸惑いと求めらえる喜びに混乱する。
でも、背中の下には柔らかい毛布が敷かれ、アウレリオがリオの身体を傷つけまいと気遣ってくれていた。

「リオ、リオ」

荒い吐息の合間に耳元でささやかれる名。
深い欲望と求められる快感に、ぞくぞくした。
ついほほが緩む。
目を開けるとアウレリオは待っていたように笑い、リオの足をもっと広げると、激しく動き出した。

リオの中はアウレリオの出したものでぐしょぐしょに濡れていた。
痛みはなく、ただ、快感だけが残る。
気持ちの良さに背中をそらすと、アウレリオが体勢を変え、根元まで突き入れた。
突然奥を突かれ、リオが小さく悲鳴を上げる。

それでは足りないと、リオの両足を大きく開かせ、ぐいぐいと最奥に身を進める。突き当たりのこりこりしたものをぐりぐり刺激すると、リオが耐えられないと声を上げ、ぎゅっと締め付けた。

強すぎる刺激。
熱い吐息。
交わる肌。

なぜこんなに欲しいのかわからない。でも、止められない。
リオはもっとアウレリオが入ってこられるように腰の力を抜き、動きを合わせた。
なかが吸い付き、うごめく。

誘うように腰を上げると、アウレリオはけだもののように強く腰を振り、リオの奥に射精した。
震えながら崩れ落ちるアウレリオの身体を全身で受け止める。

目の前がかすむほどの強い快感だった。

「ああ、アウレリオ様」

リオはアウレリオの身体に腕と足を巻き付け、しがみついた。
なぜこんなに、激しく求めるのか。
ただの愛欲ではない。
うれしいけれど、なぜか不安だ。
チクリと痛む胸に蓋をして、アウレリオの首筋に顔をうずめた。


**********


そのあとも、馬車の中で何度交わったのかわからない。
時々気を失いながら、気が付けばまた、と繰り返された情事に、いつしかリオは疲れはてて眠り込んでしまった。

気が付くとふわふわの毛布で全身をくるまれ、その上からアウレリオが腕を巻き付けていた。
アウレリオも眠り込んでいて、起こさないようにそっと腕の中から抜け出す。

馬車はまだ走り続けていた。

(どの辺まで来たのかな)

リオは馬車の目隠しカーテンを開けようとして、はっとする。

(身支度を・・・)

赤面しながら慌てて服を探す。馬車の中にあちこちに飛び散りしわくちゃになった服を手のひらで伸ばしながら身に着けた。

(アウレリオ様がこんなにされたことなんて、あったかな)

まるで獣みたい。
一緒の部屋で眠っていた時には、まあ、それなりに・・・思い出しただけでも顔が赤くなる。
まあ、精力はお強い方だから。ごほん。
でも、こんな風に馬車の中でここまでされるなんて・・・
いや、前にご一緒した時にもそういうことはあったけど、でも眠っている時まで、なんて。

赤くなった顔がますます赤くなる。
でも、どこか、何かが・・・
胸の奥がちくちくと痛み続ける。
それは、アウレリオが結婚すればこれまで通りではいられないと、心の奥底ではわかっていたからかもしれない。

もしかして、「最後」かもしれない?
刺されたような痛みに思わずぎゅっと目をつむる。
・・・そうかも。

でも、そうじゃないかもしれないし。
リオは大きく首を振った。

気を取り直してそっとカーテンに触れると、遠くに空色に染まった丘が見えた。

「アウレリオ様!起きてください。もうすぐ着きますよ!」

寝起きのアウレリオはぼんやりしていたが、理解するとすぐに、リオが差し出す服を身に着け始めた。
リオがアウレリオの服を整え、換気のために少し窓を開ける。
このままでは、御者がドアを開けた瞬間ににおいで気づかれてしまいそうだ。

馬車はゆっくりと揺れながら、坂道を登り、丘の中腹で止まった。
やっと止まれたと、安心したように馬がいななく。

「着きました」

御者の声に、リオが天井を叩く。
御者台からするすると御者が下りて、馬車の扉を開けた。
リオは内側のかんぬきをあけ、アウレリオを振り返った。

アウレリオが小さくうなずくと、ドアを開く。

目の前には、真っ青に染まった丘が広がっていた。

「うわぁ」

思わず声が漏れる。

「すごいです、アウレリオ様、今年はいままでで一番きれいかもしれません!」

アウレリオはくすっと笑った。リオは、毎年そう言うのだ。

「そうか、それは楽しみだな」

昨日までの雨は上がり、世界は水で洗われたようにきらめいている。
空気は澄み、大きく吸い込むと胸の奥まで清められたような気になった。

すぐに騎士がアウレリオの馬を引いてくる。
黒く大きな軍馬は、ようやく自分の出番がきたことを喜ぶように前足で土をかきながら、甘えるようにいなないた。
この馬は気位が高く、アウレリオ以外は決して背に乗せなかった。

「待たせたな」

アウレリオはたてがみを撫で、さっと馬の背にまたがった。
そして、いつものようにリオを引き上げ、自分の前に座らせた。
リオは大切そうに大きな布包みを抱え、アウレリオの大きな体の中にすっぽりと納まっている。その光景は昔から変わらない。だが、もうふたりとも大人になり、大の男二人が馬に一緒乗るとは・・・まるで恋人同士のようではないか。
アウレリオに幼いころから付いてきた護衛は、顔色一つ変えずにその様子を見守った。
皆何かを感じてはいるが、顔に出すほど愚かではない。

「では、行ってくる。護衛は不要だ。ここで待て」



**********


お読みいただきましてありがとうございました。
昨夜は予約投稿を失敗して、うまく投稿できませんでした。
気づいたときはちょっと目玉がびよんと飛び出してしまいました。

うっかりものですみません。
これからもよろしくお願いします。

ところで、今日はめっきり寒くなって、ダウンコートがちょうどよかったです。
でも、厚着しすぎて、会議中に耐えられなくなって端っこでこっそり上に来たセーターを脱いでしまいました(かっちょわる)

明日は、木曜日で定休日なのですが、あとすこしで2章が終わるので、お休みせず続けたいと思います。
2章の切れ目で一日お休みをいただくことにします。

それでは、また明日、お会いしましょう!
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