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第六十話 再会
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探るように優しく、アウレリオの舌がリオの口の中で動いた。
柔らかな体温に包まれ、ぶわっと身体中から感情があふれだす。
どれほど、恋しかったか。
ぎゅっとしがみつき、いま、この瞬間が永遠に続くように祈る。
どうか、すこしでも長く。
何も考えられないほどの心地よさのなか、ただただ近づきたい。
それはアウレリオも同じようで、リオの身体の上で手のひらを広げ、指先一つひとつの感触を楽しむように、ぎゅっとリオを引き寄せた。
「リオ」
耳元でアウレリオがささやいた。
「今は時間がない。後で会おう」
(後?後があるの?俺はもうアウレリオ様に捨てられたんじゃないのか?)
リオが驚いてアウレリオを見上げると、やさしい微笑みがリオの心を綿のようにつつみこんだ。さっきまで氷のように冷たかったのに。
「泣くな」
アウレリオの低い声で、リオは自分の頬が濡れていることに気がついた。
「お前が泣くと、離れられなくなってしまう」
リオの目の下をアウレリオが親指でぬぐい、次に舌先でそっと頬をなめた。
「!!!」
カッと血が昇り、顔が赤くなる。
アウレリオはまた笑い、リオを抱きしめた。
「また後で。深夜に大けやきの下に来い。私の部屋は見張られているから、近づくな」
大けやきは魔の森の丘にある木だ。知らない者はないが、怖がって誰も近づかない。でも、アウレリオ様と一緒なら、何も怖くない。
リオがこくんとうなずくと、アウレリオもうなずき返し、リオの肩を軽くたたいた。突然、肩が暖かくなったように感じる。見上げると、アウレリオは満足げな笑みを浮かべ、猫のようにするりと部屋を出ていった。
リオはその姿をじっと見つめた。
ある日突然、アウレリオ付きからエミリアに仕えるようにと命じられた。
もしかしたら、アウレリオ様が俺を嫌って手元から離したのかも、と思ったことがないわけではない。
アウレリオ様に恐れ多くも恋心をいだいていることが知られてしまったのかも、とも。
でも、さっきの口づけは、まるで恋人にするくちづけみたいで・・・
リオはそっと自分のくちびるに指先でふれた。
強くくちづけられて、すこしはれている。
しびれたような快感の名残に心がうずく。
恋人にくちづけられて、唇がはれてしまったって、皆にバレてしまうかも・・・むしろ自慢したい。
リオはぽっぽと熱の上がるほほを、両手でピシャリと叩いた。
「馬鹿」
自分に言い聞かせる。
そんな身分じゃない。
でも、アウレリオ様が深夜に大けやきの下に来いって・・・そうおっしゃったんだ。
弾けそうに高鳴る胸を両手で抑えた。
大けやきの下に来いって・・・このまま、心臓が飛び出してしまうかもしれない。
今夜、会える。
(アウレリオ様・・・愛しています)
***********************
城の隣に広がる広大な森は「魔の森」と呼ばれ、日中でも薄暗く、ひんやりとした空気が漂っている。
屈強な男ですら、日が暮れてからは近づかない森。
かつて、辺境に魔を閉じ込めた、まさにその場所だと言われている。
もちろん、迷信に決まってる。
アウレリオ様には魔力があるけれど、その力は人を傷つけるものではないし・・・ちょっと人を楽しませてくださるような、そう、一種のまじないみたいなものだし。
本当は、アウレリオが自分を保護するまじないをかけているため、恐ろしい獣が近づいてこられないのだが、リオはそれを知らない。足元をキキっと小さな悲鳴を上げながら黒い何かが逃げていく。それもまじないの効果の一つではあるのだが、気にならない。ただ、肩の上にいつまでも残るあたたかさが単純にうれしかった。
見回りの兵を避けながら、城の庭からつながる木戸を開けると、眼の前には細いリボンのように白く光る道がリオを案内するように、月に照らされている。
恐ろしい獣がいるのか、それとも魔力に囚われてしまうのか・・・でも、今日のリオには少しも怖くなかった。
むしろ誰にも会わず、好都合だ。
(アウレリオ様に会える)
リオの心ははずみ、他の考えはかけらも頭に浮かばなかった。何もこわくない。大けやきまでの道の両側に咲く花たちは淡く光を放ち、リオに進む道を教えている。
一歩足を踏み出すと、リオを歓迎するように花たちがシャラシャラとかすかな歌をかなでた。
見上げれば丘の上にぼうっと明るい光を放つ大けやき。
(アウレリオ様、アウレリオ様・・・)
心のなかで名を呼びながら、道を駆け抜けた。道の両側で穏やかに光りながら歌う花も、ふくろうの鳴き声も、星空も、皆リオを歓迎しているように思える。
銀灰色の両腕を空に広げている大けやきは、淡い光を放ちながらリオを歓迎するように枝を揺らした。
さやさやとささやく葉の下には誰の姿も見えない。
「良かった。アウレリオ様をお待たせせずにすんだ」
ほっと一息つくと、リオはけやきの根元に座り込んだ。
大けやきは高台の上に一本だけ立つ大きな木で、城からも見ることができる。
そこから見上げる星空は、星が掴み取れそうなほど、美しく、大きく見えた。
(あの星を取ってアウレリオ様にプレゼントしたいな)
星を眺めながらアウレリオが道を登ってくる姿も見られるに違いない。
リオがワクワクしながら空を眺めていると、ふと横に人の気配を感じた。
「リオ」
「あ、アウレリオ様?」
アウレリオは小さく笑うと、リオのほほにキスを落とした。
「ど、どうして?俺、お待たせしないように走ってきたのに」
「はは」
「どこから来たんですか?俺、星を見ながらちゃんと道も見ていたのに」
「そうか」
アウレリオはうれしそうに笑い、リオのやわらかな巻き毛にそっと唇を寄せた。
「アウレリオ様・・・アウレリオ様」
リオが噛みしめるようにアウレリオの名をつぶやくと、アウレリオはそっとリオの唇に花びらのような口づけを落とした。もう、ほかのことはどうでもいい。ただ目の前にいるアウレリオだけが、世界そのものだった。
「さみしかったか?」
リオが涙を含んだ大きな瞳で見上げると、アウレリオの口元がゆるんだ。
「そうか。私もだ」
リオの両目から大粒の涙が転がるように流れ出した。
***********
お読みいただきまして、ありがとうございました。広告もハートもありがとうございます!(´▽`)
🤗
今日は出先から更新作業をしておりますので、不具合がありましたらすみません。
また明日、よろしくお願いいたします。
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「リオ」
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リオが驚いてアウレリオを見上げると、やさしい微笑みがリオの心を綿のようにつつみこんだ。さっきまで氷のように冷たかったのに。
「泣くな」
アウレリオの低い声で、リオは自分の頬が濡れていることに気がついた。
「お前が泣くと、離れられなくなってしまう」
リオの目の下をアウレリオが親指でぬぐい、次に舌先でそっと頬をなめた。
「!!!」
カッと血が昇り、顔が赤くなる。
アウレリオはまた笑い、リオを抱きしめた。
「また後で。深夜に大けやきの下に来い。私の部屋は見張られているから、近づくな」
大けやきは魔の森の丘にある木だ。知らない者はないが、怖がって誰も近づかない。でも、アウレリオ様と一緒なら、何も怖くない。
リオがこくんとうなずくと、アウレリオもうなずき返し、リオの肩を軽くたたいた。突然、肩が暖かくなったように感じる。見上げると、アウレリオは満足げな笑みを浮かべ、猫のようにするりと部屋を出ていった。
リオはその姿をじっと見つめた。
ある日突然、アウレリオ付きからエミリアに仕えるようにと命じられた。
もしかしたら、アウレリオ様が俺を嫌って手元から離したのかも、と思ったことがないわけではない。
アウレリオ様に恐れ多くも恋心をいだいていることが知られてしまったのかも、とも。
でも、さっきの口づけは、まるで恋人にするくちづけみたいで・・・
リオはそっと自分のくちびるに指先でふれた。
強くくちづけられて、すこしはれている。
しびれたような快感の名残に心がうずく。
恋人にくちづけられて、唇がはれてしまったって、皆にバレてしまうかも・・・むしろ自慢したい。
リオはぽっぽと熱の上がるほほを、両手でピシャリと叩いた。
「馬鹿」
自分に言い聞かせる。
そんな身分じゃない。
でも、アウレリオ様が深夜に大けやきの下に来いって・・・そうおっしゃったんだ。
弾けそうに高鳴る胸を両手で抑えた。
大けやきの下に来いって・・・このまま、心臓が飛び出してしまうかもしれない。
今夜、会える。
(アウレリオ様・・・愛しています)
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城の隣に広がる広大な森は「魔の森」と呼ばれ、日中でも薄暗く、ひんやりとした空気が漂っている。
屈強な男ですら、日が暮れてからは近づかない森。
かつて、辺境に魔を閉じ込めた、まさにその場所だと言われている。
もちろん、迷信に決まってる。
アウレリオ様には魔力があるけれど、その力は人を傷つけるものではないし・・・ちょっと人を楽しませてくださるような、そう、一種のまじないみたいなものだし。
本当は、アウレリオが自分を保護するまじないをかけているため、恐ろしい獣が近づいてこられないのだが、リオはそれを知らない。足元をキキっと小さな悲鳴を上げながら黒い何かが逃げていく。それもまじないの効果の一つではあるのだが、気にならない。ただ、肩の上にいつまでも残るあたたかさが単純にうれしかった。
見回りの兵を避けながら、城の庭からつながる木戸を開けると、眼の前には細いリボンのように白く光る道がリオを案内するように、月に照らされている。
恐ろしい獣がいるのか、それとも魔力に囚われてしまうのか・・・でも、今日のリオには少しも怖くなかった。
むしろ誰にも会わず、好都合だ。
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リオの心ははずみ、他の考えはかけらも頭に浮かばなかった。何もこわくない。大けやきまでの道の両側に咲く花たちは淡く光を放ち、リオに進む道を教えている。
一歩足を踏み出すと、リオを歓迎するように花たちがシャラシャラとかすかな歌をかなでた。
見上げれば丘の上にぼうっと明るい光を放つ大けやき。
(アウレリオ様、アウレリオ様・・・)
心のなかで名を呼びながら、道を駆け抜けた。道の両側で穏やかに光りながら歌う花も、ふくろうの鳴き声も、星空も、皆リオを歓迎しているように思える。
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大けやきは高台の上に一本だけ立つ大きな木で、城からも見ることができる。
そこから見上げる星空は、星が掴み取れそうなほど、美しく、大きく見えた。
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星を眺めながらアウレリオが道を登ってくる姿も見られるに違いない。
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「あ、アウレリオ様?」
アウレリオは小さく笑うと、リオのほほにキスを落とした。
「ど、どうして?俺、お待たせしないように走ってきたのに」
「はは」
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「そうか」
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「アウレリオ様・・・アウレリオ様」
リオが噛みしめるようにアウレリオの名をつぶやくと、アウレリオはそっとリオの唇に花びらのような口づけを落とした。もう、ほかのことはどうでもいい。ただ目の前にいるアウレリオだけが、世界そのものだった。
「さみしかったか?」
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