88 / 88
88. 全ての人に幸せを
しおりを挟む結婚式が無事に終わってからもう一年が経とうとしていた。
「おかあさま~!」
リオンが笑顔で私を目指して走ってくる。
「おかあさま、捕まえた!」
ギュッと私の足元にリオンが抱きつく。
「こら、リオン危ないからお母様の足元に抱きつくな」
クリフ様がリオンを私から引きはなそうとしている。
「やだ!ボクは赤ちゃんにごあいさつをするのです」
リオンがクリフ様に抱き上げられてバタバタと暴れている。
そう、私は2人目を妊娠中なのです。
結婚式を終えた日からクリフ様と一緒に迎えない朝はなかった。
しばらく経つと体調が悪い日が続き睡眠不足のせいかと思っていたが、お医者様に診察してもらうと妊娠していることがわかったんです。
妊娠したことを伝えるとクリフ様もリオンも大喜びでした。
余談ですが、実はお姉様も妊娠していると手紙に書いてありました。
同じ時期に子供を出産することになりそうです。
これは夢を見た後に思い出したのですが、レオンの初恋の人…それはお姉様だったと思うのです。
歳の離れたお姉様はレオンと私の面倒を良く見てくれていました。
レオンはその時「僕は大きくなったらお姉様と結婚する」と言っていたのです。
今思えば、レオンの初恋だったのかな…と。
だから、今お姉様のお腹の中にいるのはレオンの生まれ変わりかもしれません。
誰にも言うつもりはありませんが…。
リオンを手放した後お姉様達夫婦は寂しかったそうです。
長い間子供が出来なかったからリオンを本当の子供だと思って育ててくれていたようです。
感謝しかありません。
そんなお姉様達に待望の子供が出来たと喜びの手紙が来たその日に私の妊娠もわかったのです。
運命とは本当にわからないものですね。
お父様達も表向きは病気ということで田舎の領地で静かに暮らしているみたいです。
仕事人間だったお父様が甲斐甲斐しくお母様の面倒を見ているそうです。
私は、連絡を取ってはいませんが、お姉様が手紙で知らせてくれています。
私の婚約者だったナナリーさんも幼馴染みの彼と駆け落ちして結ばれたみたいです。
心配していたので聞いた時は嬉しかったです。
でも、唯一の消えない心配事があるんです。
それは…。
アルス様がまた失踪してしまいました。
結婚式には参列して下さっていたのですが、その後に姿を消してしまわれました。
でも、アルス様の事だからきっと何処かでマイペースに暮らされているとは思うのですが…。
せめて手紙くらい欲しいものです。
「おかあさま!大好き!」
クリフ様に抱き上げられていたリオンが私の首に手を回して抱きついてきました。
「私もリオンの事が大好きよ」
可愛い我が子の頭を優しく撫でていると、何やら視線を感じます。
「私は?」
クリフ様が拗ねたように聞いてきます。
思わず笑ってしまいます。
我が子に嫉妬しなくても…。
「もちろん大好きです」
クリフ様はリオンの目を手で塞ぎ、私にキスをした。
「おとうさま!何も見えない!」
ゆっくりと唇を離した後、リオンの両頬に2人でキスをした。
キスをされたリオンは私とクリフ様の首に抱きついて喜んでいる。
何て幸せな時間だろう…。
私の人生がこんな風に変化するなんて考えられなかった。
もう私は男装することは無いだろう。
今となってはパンツスタイルは動きやすかったなと懐かしく思うこともあるが、自分の性別を偽る為に履くことはもうない。
これからの人生は私らしく生きて行くことができるのだ。
ただ普通に生きる事が幸せなのだ。
私は願う…。
皆が幸せになれますように。
皆が笑顔になれますように。
幸せはあなたのすぐ側にあると気づけますように。
これで最終回となります。
最後まで読んでくださった皆様に感謝します。
お気に入り登録していただいた人達のおかげで頑張ろうという気がでました。
本当にありがとうございました。
1
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる