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第8話「超スーパー魔道具ゲット!!」

「よっし! よし! 一生懸命頑張ったら、レベルが『1』上がった! レベル上げなんかムリゲーの屑と言われた俺だって、やれば出来る! レベルアップ出来たんだあ!」

拳を握り締め、歓喜に打ち震えるリオネル。

子供の頃から使って肌身離さず……
亡き母から貰った愛用の懐中魔導時計が指す針は、すでに午後4時30分を指していた。

夕方となり暗くなる、
夜が来る……
危険度が増す前に、弱いぼっちの俺は引き揚げる。
と、リオネルは心に決めていた。

そして今日、己に課した目標も無事クリアした。
朝8時過ぎから休みなしで8時間半戦って、スライムを100体倒し、何とかレベル6になった。

そもそもスライムを一体倒しても経験値はたった1。
コツコツ105体倒しても105だけ。

レベルが上がる度に、次回のレベルアップには数倍の経験値が必要となる。
とりあえず目標はレベル10
……気が遠くなるような作業だが、今からめげるわけにはいかない。

それに草原の探索は気晴らしも出来た。
スライムとのバトルの傍ら、結構な数の野ウサギと遭遇。
相手はとても素早かったが、フリーズのスキルが役に立った。
何とか動きを止め、風弾の魔法で5羽ほど仕留めたのである。

例によって索敵しながら王都へ、そしてねぐらの宿屋へ戻ったリオネル。
ウサギを宿屋の主人へ渡す。

「只今、戻りました。す、すみませんが、あの、これ……」

リオネルが世話になっているのは、フレンドリーな宿屋である。
一定の礼儀を守りつつも、気さくな態度の主人でもある。
この主人の名はアンセルムといい、たくましい体つきをした、50歳半ばくらいの男だ。

リオネルが差し出したウサギ5羽を見て、アンセルムは訝し気な表情となる。

「なんだい、このウサギは?」

「アンセルムさん、今日の探索のついでに捕まえました。食材として使えるのなら使ってください」

「ふうむ……リオネル・ロートレック君、それって、コレを俺に買えって事?」

「いえ、とんでもない、タダで差し上げます。いろいろお世話になっているんで」

リオネルの言葉通り……
宿泊の手続きをする際、名乗って身の上を簡単に話したら、アンセルムは大いに同情してくれた。
特例として2週間の料金で1か月の滞在を認めてくれたのだ。
その際、前払いしたから王都を出るまで住む場所と食事の心配は皆無となった。

リオネルの申し入れに対し、アンセルムは首を横へ振る。

「いやいや、リオネル君、全くのタダは駄目だよ。ウサギは肉の量こそ少ないが、人気の食材なんだ」

「ですが、探索のついでに捕まえたものなので……お金は不要です」

「いや、やはりタダはいけない。労働の対価は発生すべきだ。最初からボランティアなら別だがね。これは心がけておきなさい」

「はい」

「うむ、という事で君は労働の対価を受け取らないといけない」

「はあ……」

リオネルが困惑すると、アンセルムはしばらく考え込んだ後、

「……よし、決めた」

「え?」

「リオネル君、じゃあ、こうしよう」

そう言ってアンセルムが戸棚から出して、差し出したのは、古い腕輪、そして指輪である。

「…………」

「ウサギはありがたくいただく。今夜の夕飯に君へ1羽出そう。そして残りのウサギの対価としてこれらをあげるよ」

「え?」

「両方とも、昔、冒険者時代に俺が古代遺跡で見つけ、使っていたものさ。収納の腕輪、そして回復の指輪だ」

「そ、そ、そんな! ウサギ4羽の対価に全然見合いません!」

 収納?
 回復?

 冒険者には必須の事象である。
 それらの効果を付呪エンチャントした魔道具ならとんでもなく高価に違いなかった。

 しかしアンセルムは微笑み、首を横に振る。

「ははははは、構わないって。宿屋稼業の俺はもう使わないし、これから冒険者をなりわいとする君には必要となるアイテムだ。引き継いでくれると嬉しいよ、ほら! 身につけてみて!」

魔道具の譲渡を勧めるアンセルムは強引だった。

仕方なく、リオネルは腕輪を左腕につけ、指輪を右手の人さし指にはめた。

「リオネル君、よく似合うぞ」

「はい、あ、ありがとうございます!」

「君は、まるで昔の俺さ」

「昔の?」

「うん、俺もガキの頃、つまらない理由でオヤジと折り合いが悪くなり、勘当されて実家を追い出された。それで仕方なく冒険者となった」

「そ、そうだったんですか……」

「ああ、いろいろあった末、流れ流れてこの国へ来て、冒険者引退後は宿屋の主人をしているんだ。……10年前オヤジは死んだと風の便りで聞いた。俺はもう二度と故郷へ帰る事はないだろう……」

アンセルムは少し遠い目をして、寂しそうに語った。

「アンセルムさん……」

「うむ! だから他人事とは思えない。ささやかながら、リオネル君を応援してやりたいのさ」

「あ、ありがとうございます!」

「ちょっと、おせっかいだが、君に先輩の冒険者としてアドバイスを送る」

「は、はい!」

「トライアルアンドエラー、挑戦をためらうな。失敗を恐れるな。時には、もがくのもありだ」

「は、はい!」

「但し、命を大事にしろ! 最後の最後まで絶対にあきらめるな」

「は、はいっ! あ、ありがとうございますっ!! 心に刻んでおきます!」

まさに、一筋の光明が差し込む。
もしくは、日照りに雨である。

自分は運が良い。
甘ったれの自分には、良すぎるかもしれない。

感謝、感謝、感謝をしてもし切れない。

この世は情け。
とか、
捨てる神あれば拾う神あり。
とか、
そんな言葉も、リオネルの心にじんわり染みる。

思わず胸がいっぱいになり、リオネルの目に涙があふれて来た。
このような思いやりが血を分けた父と兄達にあればと切に思う……

アンセルムは、レオネルを見て優しく微笑み、話を続けた。

「という事で説明するとだな。まず収納の腕輪は……使用する際、暗唱用の言霊がある」

「暗唱用の言霊?」

「ああ、それを教えて一旦俺の所有権を解除するから、次にリオネル君の好きな言霊を告げて自分のモノとしてくれ。ちなみに、その言霊を知らない人は勝手に腕輪を使えないから」

「分かりました」

アンセルムは、秘密の言霊を告げてくれた。
腕輪は一旦、持ち主不在のニュートラル状態となる。
リオネルは、自分の好きな言霊を告げ、腕輪を自分のものとした。

その様を見ていたアンセルムは、満足そうに微笑む。

「リオネル君、それでよし、品物をイメージし、後は搬入、搬出と心の中で念じれば、自由に出し入れが出来る」

「な、成る程」

「腕輪には大きな町がひとつ入るくらいの容量がある」

「えええっ!? 大きな町がひとつ!? と、とんでもないっすね」

「ああ、何でも入れられるし、内部は空間魔法により亜空間となっていて、時間が経過しない。食料や水は腐らず、永久保存が可能だ」

「うっわ! 旅の時に便利ですね」

「大気もあるから、生きた者も放り込める。中へ入れると気を失うから暴れたりもしない。戦闘後、生かしまま捕らえた敵を入れておく牢屋にも使えるぞ」

「わ、分かりました! ほ、本当に! す、す、凄いっす!!」

「ははは、回復の指輪はな、装着していると歩く度に体力が回復する。物理、魔法のダメージを軽減し、麻痺や毒もある程度防いでくれる。経験値も微増する」

「す、すっげぇぇ!!」

説明を聞いてリオネルは思う。
ふたつとも、国宝級の魔道具である。
まるで勇者か、英雄が所持するスーパーレアアイテムだ。

「ア、アンセルムさん! こ、このように凄い魔道具、い、頂いて本当に宜しいのですか?」

「ああ、構わない。存分に役立ててくれ」

「本当に本当にありがとうございます! 俺、頑張ります! 生き抜きます!」

リオネルは改めて礼を告げ、深々と頭を下げていたのである。
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