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第468話「意思を持つといわれる『ゼバオトの指輪』が、リオネルを認めつつあるのだろう」

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丸一日かけて、地下121階層を探索したリオネル。

獣頭の巨人フォモール、ノーマルタイプのドラゴン、
南方の動物ワニのようなタラスクス、
ドラゴンが不死アンデッド化した、ドラゴンスケルトンにドラゴンゾンビ。
オーガの上位種オーガキング、妖精の成れの果てと言われるトロルなどと戦った。

……時間は既に午後5時となっている。

いつもの探索ペースなら、リオネルは、さっさと先へ先へ進む。
だが、本日は自重した。

……まあ、これは予定通りだともいえる。

様々な地形に慣れる為、121階層の探索にたっぷり時間をかけた事もあり、
122階層へは下りず、このままキャンプをする事に決めたのである。

今夜は、どこでキャンプを張ろうか。
リオネルは少し迷う。

当初考えていたのは、様々な地形の中にぽつぽつとある、
迷宮の『小ホール』のような少し広めで平坦な『空き地』である。

リオネルは探索中、キャンプ候補として、
これは! と思う『空き地』のいくつかには、
照明魔法の応用で『帰還マーキング』を施してあった。

そもそも、リオネルの記億力は抜群であるし、
たとえマーキングしなくても、押さえておいた候補地はすぐに見つかるだろう。

しかし、リオネルは、用心深く用意周到である。

『帰還マーキング』を施してあれば、呼び出している魔導光球が、
マーキングした場所へ、一目散へ飛んで行って位置知らせてくれるのだ。

それを踏まえた上で、リオネルは、もう少し考える。

本日探索した様々な地形を思い浮かべる。

大木がうっそうと生い茂った深い密林……
川や沼、湿地のそば……
峡谷のような岩場……
荒涼な砂漠……

リオネルは苦笑し、首を横へ振った。

う~ん。
キャンプ地に、完璧にアジャストする場所がないなあ。

キャンプ設営の難度と、敵襲からの守りを考えると、どこもかしこも一長一短。
メリットデメリットが混在していた。

迷って、少しだけ考えたが……

結局、リオネルは『小ホール』のような『空き地』に決めた。

ただ、いったん決めれば、行動は早い。

すでに122階層への出入り口――階段は、確認済み。
『帰還マーキング』ではない、目印も立ててある。

転移魔法があるので、キャンプ地は、階段から距離があっても問題ない。

発動すれば、瞬時に仲間ともども移動出来る。

仲間を促したリオネル、転移魔法を発動する。

『さあ! 皆、行くぞ! 転移トランジション!』

探索の結果、発見したいくつかの候補の中から、
これはと目をつけていた第一候補の『空き地』へ跳んだのである。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

……手早くキャンプの支度を終え、
自分と仲間の食事の支度をしながら、リオネルは告げる。

『いつものように役割分担だ。巡回組と待機組に分かれてくれ。巡回組は索敵と防衛、迎撃を。待機組はメシの支度が出来たら、どんどん食べてくれ。食べたら巡回組と随時交代だぞ』

ケルベロス達は、個々に指示を出さずとも、リオネルの意を汲み、自ら動く。
それがまた、絶妙と言いきって良いくらい適材適所なのだ。

やがて食事が終わり……

妖精ピクシーのジャンを肩に乗せたリオネルは、仲間達とミーティングへと入る。

この打ち合せは、自身と仲間の慰労も兼ねている。

……先ほど、ケルベロス、ファイアドレイク、アスプ10体が戻って来て、
食事を終えていた。

入れ替わりの巡回組、オルトロス、フロストドレイク、別のアスプ10体は、
現在、索敵と防衛、迎撃を行っている。

行われているミーティングの内容は、昨夜とほぼ同じだが、
実際に戦った魔物との感想、意見が交わされていた。

誰もが、リオネルの意を汲み、感想は勿論、
忌憚のない意見を告げて来る。

人間的な視点、価値観と全く異なるものも多く、
リオネルは戸惑うとともに、良き学びの機会だと前向きにもなる。

以前から、仲間の意思を読み取り、理解出来るようになったリオネルだが、
最近は、手に取るが如く、意思疎通が可能となった。

これらのコミュニケーション円滑化は、
至宝『ゼバオトの指輪』が持つ絶大な力の一環かもしれない。

意思を持つといわれる『ゼバオトの指輪』が、リオネルを認めつつあるのだろう。

なんやかんやでミーティングが終わり……

珍しくケルベロスが軽口を叩く。

あるじ

『ん? 何だい、ケルベロス』

『しばらくは、夜、暗闇がない世界が続く。明るくて眠れるのか?』

もっともな質問である。
暗くしないと眠れないという冒険者は多いという。

対してリオネルは微笑む。
全然問題なしという表情である。

『大丈夫、俺は明るい場所で眠る訓練をしたし、これもある』

リオネルが、ディバッグから取り出したのは、
睡眠の魔法が付呪エンチャントされた、
目覚ましタイマー付きの特製アイマスクだったのである。
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