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第49話「猛獣使い、再び!①」
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ばちばちばちばちっ!!
という凄まじい擬音が、辺りへ聞こえて来るような……
才色兼備な局長秘書エステル・ソワイエ、気高き深窓の貴族家令嬢クラウディア・ラクルテル。
ふたりの麗しき女子の鋭い視線は空中でぶつかり合い、派手に火花を散らした。
そのあまりの激しさ、ド迫力に、シモンとクラウディアの父アンドリュー・ラクルテル公爵の男ふたりは少し臆したようになる。
クラウディアの侍女リゼットも困惑気味である。
だが……
復興開拓省長官たる美魔女アレクサンドラ・ブランジェ伯爵……先日クラウディアを慣らした『猛獣使い』だけは、面白そうに笑っていた。
勘の鋭いアレクサンドラは、シモンに対する女子ふたりの『秘めたる想い』をすぐに見抜いたようだ。
「お~お~、これはふたりともガチマジだね~」
「……………」
「……………」
「うふふ、さ~て、エステルとクレア、私はどっちを応援しようかなぁ~」
一方……
クラウディアを見守るアンドリューは渋い表情で首を傾げていた。
どうやら、愛娘が持つ『シモンへの恋心』には気付いていないらしい。
もしくは父として、気付いてはいるが、認めたくないのかもしれない。
多分、後者であろう……
「おいおい、サーシャ。応援とか何言ってる? 俺はわけがわからんぞ」
アレクサンドラは家族づきあいの気安さからか、王国軍の要たる将軍さえも愛称で呼ぶ。
「うふふ、まあ、良いじゃないですか、アンディ。とりあえず静観しましょ」
「何だ、静観とは? このまま放置するのか?」
「ええ、とりあえず、気持ちだけはこのままね」
「はあ? 気持ちだけだと?」
「そうよ。私に任せて」
アレクサンドラはアンドリューに言葉を戻すと、エステルとクラウディアを見据え、言う。
「ほらほら、ふたりとも、いつもでもにらみ合っていないで。エステルは座りなさい。シモン君も座ってね」
「はあ、了解です」
「……分かりました。長官」
仕方なくという感じで、エステルとクラウディアが矛を収めた。
だがクラウディアは、まだまだ機嫌が悪い。
シモンとエステルが仲良く? 長椅子に並んで座ったからだ。
「ぶ~~っ! サーシャ姉は、この人の味方なんですかっ!」
「どうどうどう! 落ち着きなさい、クレアったら。私はあくまで中立! ほら、エステルもいつまでもむすっとしない」
「そう、おっしゃられても長官。さしたる理由もなく、いきなりにらまれては……いくら閣下のお嬢様とはいえ……」
そう、「ぶ~たれている」のはクラウディアだけではなかった。
いきなり殺気のこもった目で凝視されたエステルも渋い表情だったのである。
このヤバイ状況を「何とかしたい!」とシモンは思った。
そんなシモンの気持ちが、アレクサンドラに「びびっ!」と伝わったらしい。
まさに「打てば響く」ということわざがぴったり来るタイミングだ。
「ねぇ、シモン君。君、治癒の高位魔法が使えるのよね」
「はあ、少したしなむ程度ですが」
「少したしなむ程度で充分。ご機嫌ななめのふたりへ『ぱぱっ』とかけてくれる?」
「……了解です、長官。鎮静の魔法で宜しいですか?」
「鎮静ね! 構わないわ! レッツラゴー!」
シモンとアレクサンドラふたりが進める話に、アンドリューが「待った」をかける。
「おいおい、サーシャ。いきなり魔法ってなんだ?」
「黙って見ててください、アンディ」
「な!? サーシャ」
「さっき申し上げた通り、私がこの『いさかい』を、無事に収束させます。それにクレアを助けたシモン君の魔法行使を、間近で見る良い機会ですよ」
アレクサンドラから「ぴしゃり」と言われたアンドリュー。
偉大なる英雄「竜殺し」も形無しである。
「むぐぐ」
「さあ、シモン君。存分にどうぞ。私に君の魔法の力を示してちょうだい」
「改めて了解です。じゃあ、行きます、おふたりさん。ほいっと鎮静」
シモンのほぼ無詠唱、そして神速の発動。
鎮静の魔法はすぐに行使された。
「!!!」
「!!!」
アレクサンドラは、エステル、クラウディアの『変化』にすぐ気付き、「にこっ」と笑った。
「あはっ! 初めてシモンの君の魔法行使を目の当たりにしたけど、やっぱり凄い! 無詠唱で神速発動! 凄いの大安売りだけど、本当にすっごいわぁ!」
「え!? 不思議っ! 何だか、気分が晴れ晴れと!?」
「あらっ!? 心が一気に軽くなりましたわっ!」
魔法オタク、アレクサンドラが感嘆するだけあり、効果もてきめん。
不機嫌で険しかったエステル、クラウディア、女子ふたりの硬い表情が……どんどん和らいでいったのである。
という凄まじい擬音が、辺りへ聞こえて来るような……
才色兼備な局長秘書エステル・ソワイエ、気高き深窓の貴族家令嬢クラウディア・ラクルテル。
ふたりの麗しき女子の鋭い視線は空中でぶつかり合い、派手に火花を散らした。
そのあまりの激しさ、ド迫力に、シモンとクラウディアの父アンドリュー・ラクルテル公爵の男ふたりは少し臆したようになる。
クラウディアの侍女リゼットも困惑気味である。
だが……
復興開拓省長官たる美魔女アレクサンドラ・ブランジェ伯爵……先日クラウディアを慣らした『猛獣使い』だけは、面白そうに笑っていた。
勘の鋭いアレクサンドラは、シモンに対する女子ふたりの『秘めたる想い』をすぐに見抜いたようだ。
「お~お~、これはふたりともガチマジだね~」
「……………」
「……………」
「うふふ、さ~て、エステルとクレア、私はどっちを応援しようかなぁ~」
一方……
クラウディアを見守るアンドリューは渋い表情で首を傾げていた。
どうやら、愛娘が持つ『シモンへの恋心』には気付いていないらしい。
もしくは父として、気付いてはいるが、認めたくないのかもしれない。
多分、後者であろう……
「おいおい、サーシャ。応援とか何言ってる? 俺はわけがわからんぞ」
アレクサンドラは家族づきあいの気安さからか、王国軍の要たる将軍さえも愛称で呼ぶ。
「うふふ、まあ、良いじゃないですか、アンディ。とりあえず静観しましょ」
「何だ、静観とは? このまま放置するのか?」
「ええ、とりあえず、気持ちだけはこのままね」
「はあ? 気持ちだけだと?」
「そうよ。私に任せて」
アレクサンドラはアンドリューに言葉を戻すと、エステルとクラウディアを見据え、言う。
「ほらほら、ふたりとも、いつもでもにらみ合っていないで。エステルは座りなさい。シモン君も座ってね」
「はあ、了解です」
「……分かりました。長官」
仕方なくという感じで、エステルとクラウディアが矛を収めた。
だがクラウディアは、まだまだ機嫌が悪い。
シモンとエステルが仲良く? 長椅子に並んで座ったからだ。
「ぶ~~っ! サーシャ姉は、この人の味方なんですかっ!」
「どうどうどう! 落ち着きなさい、クレアったら。私はあくまで中立! ほら、エステルもいつまでもむすっとしない」
「そう、おっしゃられても長官。さしたる理由もなく、いきなりにらまれては……いくら閣下のお嬢様とはいえ……」
そう、「ぶ~たれている」のはクラウディアだけではなかった。
いきなり殺気のこもった目で凝視されたエステルも渋い表情だったのである。
このヤバイ状況を「何とかしたい!」とシモンは思った。
そんなシモンの気持ちが、アレクサンドラに「びびっ!」と伝わったらしい。
まさに「打てば響く」ということわざがぴったり来るタイミングだ。
「ねぇ、シモン君。君、治癒の高位魔法が使えるのよね」
「はあ、少したしなむ程度ですが」
「少したしなむ程度で充分。ご機嫌ななめのふたりへ『ぱぱっ』とかけてくれる?」
「……了解です、長官。鎮静の魔法で宜しいですか?」
「鎮静ね! 構わないわ! レッツラゴー!」
シモンとアレクサンドラふたりが進める話に、アンドリューが「待った」をかける。
「おいおい、サーシャ。いきなり魔法ってなんだ?」
「黙って見ててください、アンディ」
「な!? サーシャ」
「さっき申し上げた通り、私がこの『いさかい』を、無事に収束させます。それにクレアを助けたシモン君の魔法行使を、間近で見る良い機会ですよ」
アレクサンドラから「ぴしゃり」と言われたアンドリュー。
偉大なる英雄「竜殺し」も形無しである。
「むぐぐ」
「さあ、シモン君。存分にどうぞ。私に君の魔法の力を示してちょうだい」
「改めて了解です。じゃあ、行きます、おふたりさん。ほいっと鎮静」
シモンのほぼ無詠唱、そして神速の発動。
鎮静の魔法はすぐに行使された。
「!!!」
「!!!」
アレクサンドラは、エステル、クラウディアの『変化』にすぐ気付き、「にこっ」と笑った。
「あはっ! 初めてシモンの君の魔法行使を目の当たりにしたけど、やっぱり凄い! 無詠唱で神速発動! 凄いの大安売りだけど、本当にすっごいわぁ!」
「え!? 不思議っ! 何だか、気分が晴れ晴れと!?」
「あらっ!? 心が一気に軽くなりましたわっ!」
魔法オタク、アレクサンドラが感嘆するだけあり、効果もてきめん。
不機嫌で険しかったエステル、クラウディア、女子ふたりの硬い表情が……どんどん和らいでいったのである。
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