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《第7章》 元カレは、王子様
光の線 ☆
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含み笑いで、それでいてどこか気難しげな顔をして、飛豪は脱がされていた。
一方瞳子はと言えば、見慣れている体なのに、自分の手でするとなるとどこか違くて、歯を食いしばり、目をぎりぎりまで伏せて気恥ずかしさに耐えていた。
眼前にあらわれた小麦色の鍛えた体からも、顔をふいと背ける。素面だとここが限界かもしれない。
なのにすぐさま、「あとは?」と追いうちがかかる。瞳子は口唇をぎゅっとひき結んで、彼を睨んだ。
「面白がってるでしょ?」
「あ、分かった?」彼はニッと笑った。「どこまで出来るか、試したくなった」
「そんなこと言うと、度肝ぬくようなことしますよ」
「俺、けっこう君には度肝ぬかれてるよ。君が気づいてないだけで」
「嘘だぁ」
「ホントだって」
他愛もないやりとりに、ようやくいつもの空気が戻ってきた気がする。
瞳子は少しだけ大胆になって、彼の素肌の上半身に手を這わせた。
脇腹をそっとなぞり、筋肉質な胸に顔を寄せる。自分の胸とはかけ離れたその場所の中心、乳首にそっと触れた。爪を立ててかりかりと弄りまわす。そしてもう一方には顔を寄せて、口に含んだ。
「……ッは……」
頭上から、彼の乱れた呼吸が漏れ聞こえてきた。あぁ、自分も彼を悦ばせてあげられている。そう思うと、瞳子は満ちたりた思いがした。
翻弄するように彼の胸を愛撫する。ふと思いついて、なだらかな大きな背中に腕をまわし、指先で上から下へとつつと辿っていく。最後に腰から尾てい骨のあたりをゆっくりとさすり上げると、飛豪の全身が大きく震えた。
「うッ……」
抑えようもなく上がった喘ぎ声に、どうしてか瞳子も共振してしまう。なのに、彼の快感をこれからどのように操縦していいか分からない。おそるおそる上目づかいで見上げてしまった。
「飛豪さん、イヤだった……?」
「イヤじゃない。でも、その手つき……」
「でも何?」
「されてばっかなのが、じれったい。まだ俺のこと触ってていいから、もう交替していい?」
飛豪は返答も待たずに、彼女の肩を掴んで覆いかぶさってきた。
――襲われるっ‼
瞳子は首をすくめて服を剥ぎとられる心の準備をした。
しかし、いつもの追いはぎのような荒々しい手が伸びてこない。どころか、包みこむように肩から抱きしめられていた。彼の頭部が、瞳子の髪の中にじっとして埋まっている。そのまま三秒がたち、十秒が経過した。
「飛豪さん?」
「ん?」
「どうしたの……チェンジじゃなかった?」
「ちょっと考えてた。初めてじゃないとは聞いてたから、君に元カレがいるのは分かってたのに、ああやって見ると衝撃受けて。八つ当たりもしたし。いつからこんなに独占欲が強くなったかなって」
瞳子はくすりと笑った。無性にそうしたくなって、彼の後頭部をさすさすと撫ぜまわしてしまう。
「飛豪さん、身のまわりの物にこだわらないタイプですよね。だから珍しいかな。でも、わたしもそうかも。今、あなたが知らない女の人と歩いてるところ街で見かけたら、きっと態度にでちゃう。やきもち焼いて家出する」
「追いかけるよ。そのためにGPS付けてるんだから」
「なら、スマホも時計も置いてきます」
「それは困る。せめて俺のこと殴るくらいで済ませて」
最後は冗談めかすと、彼はようやく顔を上げた。慈しむような目でじっと見つめてきて、こちらの首筋をひと撫でしたのちソファを下りた。床に腰をおろし、すらりと長い彼女の脚に手をのばす。
「なにするの?」
「いつもと違うこと」
瞳子はどこか不安げにしていた。
今日はどっちだろう。優しい方だろうか、痛くされる方だろうか。
明日は自分もインターンが始まるから、負荷がかかりすぎるのは避けたい。そんな内心を読みとったかのように、飛豪は「大丈夫。怖くないから」と言って、彼女のはいていた部屋着のショートパンツを引き下ろした。
閉めきってはいるが、まだ日の高い時間帯だ。
遮光カーテンの隙間から光が射しこんでいて、彼女のすべて脱がされた剝きだしの足に、白の直線をつくっていた。
暗がりの、黒一色の影に染めあげられた躰に引かれた、光の線。
彼は、膝から太腿へと、光にそって舐めあげた。閉ざされた二本の脚に手をかけて、彼女の表情の変化を微細に観察しながらゆっくりと大きく割りひらいていった。
一方瞳子はと言えば、見慣れている体なのに、自分の手でするとなるとどこか違くて、歯を食いしばり、目をぎりぎりまで伏せて気恥ずかしさに耐えていた。
眼前にあらわれた小麦色の鍛えた体からも、顔をふいと背ける。素面だとここが限界かもしれない。
なのにすぐさま、「あとは?」と追いうちがかかる。瞳子は口唇をぎゅっとひき結んで、彼を睨んだ。
「面白がってるでしょ?」
「あ、分かった?」彼はニッと笑った。「どこまで出来るか、試したくなった」
「そんなこと言うと、度肝ぬくようなことしますよ」
「俺、けっこう君には度肝ぬかれてるよ。君が気づいてないだけで」
「嘘だぁ」
「ホントだって」
他愛もないやりとりに、ようやくいつもの空気が戻ってきた気がする。
瞳子は少しだけ大胆になって、彼の素肌の上半身に手を這わせた。
脇腹をそっとなぞり、筋肉質な胸に顔を寄せる。自分の胸とはかけ離れたその場所の中心、乳首にそっと触れた。爪を立ててかりかりと弄りまわす。そしてもう一方には顔を寄せて、口に含んだ。
「……ッは……」
頭上から、彼の乱れた呼吸が漏れ聞こえてきた。あぁ、自分も彼を悦ばせてあげられている。そう思うと、瞳子は満ちたりた思いがした。
翻弄するように彼の胸を愛撫する。ふと思いついて、なだらかな大きな背中に腕をまわし、指先で上から下へとつつと辿っていく。最後に腰から尾てい骨のあたりをゆっくりとさすり上げると、飛豪の全身が大きく震えた。
「うッ……」
抑えようもなく上がった喘ぎ声に、どうしてか瞳子も共振してしまう。なのに、彼の快感をこれからどのように操縦していいか分からない。おそるおそる上目づかいで見上げてしまった。
「飛豪さん、イヤだった……?」
「イヤじゃない。でも、その手つき……」
「でも何?」
「されてばっかなのが、じれったい。まだ俺のこと触ってていいから、もう交替していい?」
飛豪は返答も待たずに、彼女の肩を掴んで覆いかぶさってきた。
――襲われるっ‼
瞳子は首をすくめて服を剥ぎとられる心の準備をした。
しかし、いつもの追いはぎのような荒々しい手が伸びてこない。どころか、包みこむように肩から抱きしめられていた。彼の頭部が、瞳子の髪の中にじっとして埋まっている。そのまま三秒がたち、十秒が経過した。
「飛豪さん?」
「ん?」
「どうしたの……チェンジじゃなかった?」
「ちょっと考えてた。初めてじゃないとは聞いてたから、君に元カレがいるのは分かってたのに、ああやって見ると衝撃受けて。八つ当たりもしたし。いつからこんなに独占欲が強くなったかなって」
瞳子はくすりと笑った。無性にそうしたくなって、彼の後頭部をさすさすと撫ぜまわしてしまう。
「飛豪さん、身のまわりの物にこだわらないタイプですよね。だから珍しいかな。でも、わたしもそうかも。今、あなたが知らない女の人と歩いてるところ街で見かけたら、きっと態度にでちゃう。やきもち焼いて家出する」
「追いかけるよ。そのためにGPS付けてるんだから」
「なら、スマホも時計も置いてきます」
「それは困る。せめて俺のこと殴るくらいで済ませて」
最後は冗談めかすと、彼はようやく顔を上げた。慈しむような目でじっと見つめてきて、こちらの首筋をひと撫でしたのちソファを下りた。床に腰をおろし、すらりと長い彼女の脚に手をのばす。
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今日はどっちだろう。優しい方だろうか、痛くされる方だろうか。
明日は自分もインターンが始まるから、負荷がかかりすぎるのは避けたい。そんな内心を読みとったかのように、飛豪は「大丈夫。怖くないから」と言って、彼女のはいていた部屋着のショートパンツを引き下ろした。
閉めきってはいるが、まだ日の高い時間帯だ。
遮光カーテンの隙間から光が射しこんでいて、彼女のすべて脱がされた剝きだしの足に、白の直線をつくっていた。
暗がりの、黒一色の影に染めあげられた躰に引かれた、光の線。
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