俺の異世界家族戦記~憑いてる俺と最幸(さいこう)家族

高梨裕

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第4章 異世界開拓史

第3話 ウォーターツリー

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森林を抜けるとそこは南国でした。

アキらが大森林を突破できたのは2日後のことだった。
何度か魔物の襲撃があったもの脅威と言えるほどのものでなく、村の狩人らに駆逐されていた。
捻挫、打撲などの負傷者がいたものの、無事といって差し支えない行程だった。

「うわ~、でっかいみずたまりだ~」

森林を抜けると一行の目に飛び込んできたのは、エメラルドグリーンの海。ヤシの木のような木が生え並び、白いサンゴ礁、そして真っ赤に燃える太陽だった。

「え!?なんで!?」

アキの感覚では、ひたすら西の方へと移動してきたはずである。
南下してきたわけではない。なぜ沖縄のような景色がそこにあるのか呆気に取られていた。

バッシャーン

困惑するアキを他所にイズモ、ナディアを先頭とする精神幼児組が海に飛び込んでいた。

「この辺りは魔素の濃度が濃いのである。村と景色が変わるのはそのせいである。」

バサラが説明をしてくれているが、アキは異世界だからと諦めることにした。
確かに南国特有のカラッとした暑さは感じない。
ただ景色が南国なだけであった。

浜辺で水をかけ合いじゃれ合う子供たち。
大人たちはその様子を朗らかな目で眺めていた。

(いい場所のようだな。)

皆がそう感じ始めていた時である。

海で遊ぶ1人の子供の背後にゆらりと近づいている影をアキは発見した。

(サメ!?)

「海から出ろ!!!!!」

全力で叫ばれた子供らは驚き立ち尽くしてしまう。

子供も動こうとはしない。

(ちぃ!!!)

全速で子供に迫るアキ。その迫力に子供は思わず失禁してしまった。


「きゃあああ!!髪に付いたあああ~~~~」

海から飛び上がる黒い影。子供に接近していたものである。

「あ~!!口の中にもぉお!!ぺっぺっぺっ」

突然海から絶叫を挙げながら飛び出してきたのは、20歳ほどの若い女性。つり目で肩まであるウェーブヘアーと泣きぼくろが印象的な美人だ。
下半身が魚である以外は、、、。




「いや~、吾輩先に説明しておくべきであった。謝罪するのである。」

ひとまず混乱が収束した一同にバサラが事情を話し始める。

「この女性が、吾輩がお世話になっている海の民の代表、リーゼ殿である。」

海岸に集められた一同に先ほどの海から現れた女性を紹介するバサラ。
リーゼと呼ばれた女性もなぜか誇らしげに胸を張る。

「ご紹介に与りましたわ。わたくし、海の民代表。人魚族のリーゼと申します。皆様、どうも初めまして。」

「はじめまして?おねーちゃんさっきちょっとおれらとはなしたじゃん」

「いーえ、わたくし。皆様とお会いしたのは今が初めてでございます。」

(((((((無かったことにする気だ。)))))))



とりあえず、アキはリーゼに移住の許可をもらうために皆の事情を説明する。

「別に構いませんわよ。海にゴミなどを捨てたりしない限りは。わたくしたちは陸に上がることができませんので。あと、海に入るのは少しなら構いませんが、あまり深くまで行くと海獣が出ることもあります。先ほどの子供……、いえ、なんでもありませんわ。」

(((((((無かったことにする気だ。)))))))

「とにかく、後ほどわたくしたちの集落からも幾人かが挨拶に参ると思いますが、中にはわたくしよりもより魚っぽい海人族という種族のものもおります。どうか、驚かないようお願いいたしますわ。」



新しく村に合流したドワーフ族のゴロリアとアキは防壁の設置位置について話し合う。

ゴロリアはアキがホストラで解放した奴隷の1人で40歳を超える大人であるが、身長は150cmほど。サンタクロースのような髭を蓄えている。どうもドワーフ族はこの姿が普通らしい。

設置場所を決めた後は水源の確保である。
これはバサラに聞くしかない。なにせ彼はここで長い間生活をしていた実績があったからだ。

「飲み水であるか?それならウォーターツリーから採ればいいのである。」

「そうですわ。わたくしたちも、バサラさんのお手伝いいただきウォーターツリーの実から飲み水を確保しておりましたし。ですからバサラさんが不在の時はとても不便で…」

リーゼと土産話を交わしていたバサラに聞くと、飲み水を生成する木があるとのこと。早速案内してもらうと、海岸沿いから少し森に入った場所に3mほどの背が低いモミの木の前で立ち止まる。

「この木がウォーターツリーである。この幹の下の方にある穴に液体が流れ込むと水だけが実になって上に成熟するのである。」

実際上を見上げるとクリスマスツリーの飾りのようにいくつもヤシの実のようなものができていた。
バサラがそれを高い身長を活かし一つ採ると力任せに真っ二つに割る。

「中に入っているのが飲める水である。」

バサラによると、このウォーターツリーは雨が降った翌日には大きな実をつけているそうだ。



翌朝、まだほとんどの者が寝息をたてているときであった。

アキは水を取りにウォーターツリーへ向かった。
昨日、試しにツリーの水の注ぎ口に海水を注いでいたのだ。

(やっぱり…)

注ぎ口には塩が出来ており、木にも幾つかの実がなっていた。

(有益すぎる…)

塩と実を回収し戻ると、皆ちょうど起き始めていた。

「アキさん。お水をいただけるかしら。」

海から顔を出し、呼び止めるのは人魚族のリーゼであった。
彼女ら海の民は海中でこそ生活できるものの海水を飲むことはできないらしく、飲料用には真水が必要なのだそうだ。
元々人魚族も海人族の1種であり、風を司る森人族ことエルフ族、土を司る土人族ことドワーフ族、そして水を司るのが海人族ことマーマン族であると昨夜の宴でリーゼは自慢げに語っていた。
ちなみに火を司るのは竜人族ことリザードマンらしいのだが、生息地が全く異なるらしく会ったことがあるものはいないらしい。

アキがリーゼにツリーの実を渡していると、アキに村の皆が近づいてきた。

「詩!体はもう大丈夫?」

「おう!もうすっかりな。」

詩が体に憑依?してから、詩は高熱を出し寝込んでいた。ナディアが看病してくれていたが、新天地に着きようやく体調を回復できていた。

「この子、アキの彼女?」

「え゛!?」

最初に爆弾を放り込んだのはナディアであった。彼女という言葉に瞬時に反応するイズモ。

「違いますよ。母さん、詩は俺の友人です。」

「ママ。にいにはイズモとケッコンするんだからへんなこといわないで」

「「「「「「「「え゛!?」」」」」」」」」

イズモの発言に言葉を失う子供ら一同。

「そうにゃの!?イズモ。」

「うん。そうなの。」

そう言いながらイズモはアキの横に駆け寄り頬に軽くキスをする。

あああああああああああああ!!!!!!!!!!!

絶叫する子供たちを見ながら詩は腹を抱えて笑い転げていた。

「やっぱアンタの家族面白れ~わ。」
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