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逃避行
死というものは、実は人間にとって最大の祝福かもしれない
しおりを挟む観光都市の閑散期と言うものは実に穏やかで、とても静かだ。
市街地を離れる程に街灯の数が減り、月明かりが明るく感じる。風も強すぎる事なく、涼しい。未だになくならない出処不明の視線を除けば、非常に居心地の良いものだっただろう。
浜辺に繋がる雑木林を抜ける。思っていたより移動に時間がかかっていたようだ、空が白み始めている。サコッシュの感触を確かめる。中身は飛び出たりしていないようだ。
防波堤に登って海を眺めていたら、声と「思考」が聞こえた。
「『やっと見つけた』」
背後ではあの青年が姿を現していた。
◆◆◆
「やっと見つけた」
バイクでは流石に浜辺には入れなかったから、真に追いつくのは大変だった。真が逃げてから6時間は経ってしまったみたいだ。真は防波堤の先端に立っていた。
「つれないよね。そんなに死にたい?」
「さあ。…ああ、死にたい、と言うよりは疲れたのかもしれませんね。」
真は自分の事を他人事みたいに話すんだね。
「邪魔しないで下さいよ。」
「やだ。真のこと知りたくなったから。」
真がやっと表情を変えた。何かつぶやいてカバンの中身を取り出した。
「やっぱり真が持ち出してたんだね、それ。」
真はぼくに銃を突きつけていた。真からぼくまでおよそ5メートル、十分避けられる。僕を見る目は変わらず昏さを含んでいて、どこか虚ろで、綺麗だった。
「放っておいて下さいよ。貴方と話すと余計に疲れる。それに───」
「それに?」
「貴方が姿を消して近づこうが、これの引き金を切り落として撃てなくしても意味が無いので。」
これは全くの想定外だった。まさかぼくの異能力を知っているなんて。異能力を持っている人間は他者に悪用されないように隠すものだから、自分から話したり目の前で使って見せたりしない限り他の人に知られることはないはずだったんだけどな。
ますます真のことが知りたくなる。
「とりあえず、それ返してよ。氷花に怒られちゃう。」
真は無言のまま銃口の向きを変え────
銃声が、響いた。
────
「死というものは、実は人間にとって最大の祝福かもしれない」ソクラテス
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