僕らの運命論 位置情報ゲームに現れた、本物のモンスターを倒せ!

島津りな

文字の大きさ
2 / 2

2 秘密の研究所?

しおりを挟む

 その日の夕食も、翌日の授業中も、僕はずっと上の空だった。
「行くべき……なのかな」
 心配性の母さんにはさすがに話せないし、言っても信じてもらえないだろうし。
 スマホをなくしたままにしておくわけにもいかないし、どうしたらいいのか悩みに悩んだ。
 結局、迷いながら言われた場所に来てみた。山の手の研究所と言えば一つしかない。えりはの街はずれの山に張り付くように建っている先端技術研究所。
 自分の名前を告げるとすぐに受付をパスできた。
「来てくれたんだね」
 出迎えたのは、眼鏡をかけた背の高い男性だった。
 白衣を着て、穏やかだけど少し冷たいまなざしを僕に送っている。
「部下が無理を言ったそうですまなかった。私はこういうものです」
 首からかけていたIDカードを僕に示して見せる。
 えりは総合研究所 Мループラボ
 技術研究部主任・柏木壮
 その名前には聞き覚えがある気がした。
 だけど何なのかが思い出せない。
「ここ……何を研究してるんですか」
「まあ、いろいろとね。さしずめ秘密の研究所ってところかな。天才物理学者と言われた倉科博士がつくった私設ラボだ」
 視線だけで促され、カシワギさんに続いてホールの奥へと歩いていく。
 いくつもあるセキュリティ・チェックにカードを通し、さらに階段を降りて、深い階層へと。
 無機質な長い廊下をコツコツとすすむ。
 少しずつ不安になってきた僕は尋ねた。
「……僕のスマホ、返してもらえるんですよね」
「もちろん。その前にちょっと話を聞かせてほしいんだけど」
 そして入った部屋は広々としたモニタールームだった。
 スタッフらしき人達が、手元の端末に向き合っている。
 カシワギさんは、中央にあるタッチパネルにすっと指を滑らせた。
 えりは市の地図が、一番大きなモニター上に光るラインで浮かび上がる。
「さっそくだが……君が昨日『ホイル』に襲われたのがこのあたりだね……怪我はしなかった?」
「はい」
「光の点が濃く分布しているのが、『ホイル』の出現が予想される個所。赤い点はいま『ホイル』が出現している場所だ」
「ええっ……だって、こことここに、赤い点があるけど」
 それって大変なんじゃないのか。
「だいじょうぶ。うちの『リンカー』が対応に当たっている」
「? リンカーって?」
「『リンクする者』……モンスターを呼び出して、ホイルその他、敵性モンスターを狩る部隊のことだよ。昨日君のもとにも何人か駆け付けただろう」
 そう言われても、思考がついていかなかった。
 ゲームのキャラであるはずの『ホイル』が実体として動き回っていて。
 さらにそれを『狩る』リアルの部隊がいる?
 何から質問していいのか分からずに黙ってしまう僕に、カシワギさんは言った。
「五十嵐晴翔くん。申し訳ないけど、君のスマホを解析させてもらった」
「…………」
 僕はムッとしてさらに黙りこくる。
 正直にいえば予想はしていたけど……でも、はっきりいって、気分がよくない。
 別に大した写真や動画も入ってないけど、勝手にのぞくとかあり得ないよ。
「えりは南小学校の六年生でスマホの契約先の住所はさくらが丘。スマホは買ってもらったばかりなのかな。大した情報も入ってなかった」
「……そういうの、個人情報っていうんですよね。ちょっと許せないです」
「わるかった。どうしても知りたいことがあって……」
 カシワギさんは小さく頭を下げる。
「ズバリ聞くけど……これまでに何か大きな事件や事故に巻き込まれた経験は?」
そして、真剣な表情で尋ねられた。
「?」
 戸惑いつつも、答える。
「えっと……特には、無いと思います」
「そうか」
 カシワギさんはいったん言葉を切った。
「あの、ちゃんと話してくれませんか」
 僕は勇気をだしてそう、切り出した。
 今何が起こっているのか、とにかくイチから知りたかった。
「なんでモンスターが町に現れて僕が襲われて、こんな秘密の研究所みたいなところに呼び出されてスマホまで解析されるのか。さっぱり訳が分からないです」
「オレが話そうか。センセー」
 カツンと足音が響き渡った。振り向くと誰かが立っている。
「ユウキ。かってに来ちゃだめだろう」
「いいじゃん別に。珍しく小学生の『リンカー』候補が来たって聞いたから、気になってさ」
 ユウキと呼ばれたその人物は、昨日の中学生だった。
 やっぱりだらっと制服を着て、ニカニカと楽しそうに笑っている。
「昨日はビビらせて悪かったな、調子どうだ? 『リンカー』になるんだからしっかりしろよ」
 そんなユウキの言葉を、カシワギさんはぴしゃりと否定する。
「さすがに小学生は『リンカー』にはスカウトしないよ。彼からは話を聞くだけだ」
「なんだよ。もったいない。『アーシェンラー』と『バーシェンガー』ダブルで呼び出したんだろ? 逸材じゃん。たっぷり働いてもらった方がいいって」
 二人はよく分からない会話をしている。
 ユウキと呼ばれた彼は僕と年齢も大して違わないのに、完全にこの場になじんでいる。
彼も『リンカー』部隊の一員なんだろうか。
「なあ、もういちど呼んでみろよ。俺、あの二体をちゃんと見てみたい」
 僕の顔をのぞきこんでユウキは言った。
「呼ぶっ……無理だよそんなの」
「呼べるよ。お前は『リンカー』だから」
「さっきから出てくるその『リンカー』ってホントなんなの? そんな人たちがいるなんて聞いたことないよ」
「もう説明聞いたんじゃないのか? リアルを侵食するモンスターを呼び出せる素質の持ち主のことたよ……こんな風にな」
 いうなりスマホに指を滑らせる。
 ブンと空気が唸った。
「『ヴァリアンサ』……」
 昨日見たのと同じ、かぎづめのモンスターだった。
 はじめて落ち着いた状態でまじまじとみる『リアル』のモンスター。
 ごつごつとした手足の節、ブン……ブン……とうなり続ける羽。
無数の複眼の奥で青白い光がともっている。
 僕の喉がゴクッとなった。
 はっきり言うと、怖い。
「とまあこういう風に、リアルの世界にモンスターをよびだせるやつっていうのがごくまれにいる訳だ。こいつも見た目は怖いけど、別に悪い奴じゃないぜ」
 ユウキはそう言って、『ヴァリアンサ』をかき消した。
「事の起こりは二年前。本来ゲームのプログラムに過ぎないモンスターたちが、現実世界に現れるようになった。ほとんどはひ弱な『ホイル』だが、まれに強力なモンスターも」
 後を引き取るように、カシワギさんが説明を始める。
「そのモンスターたちは人の記憶を吸った」
「え? 記憶を?」
「そうだ。現に街にホイルが現れたことはまったくニュースになっていないだろう? あれは目撃した人間が記憶を奪われているからだ」
「でも」
 僕は、記憶を失ったりしていない。
 ホイルが放つパチパチした殺気みたいなものをちゃんと覚えている。
「お前の疑問は分かるよ。じゃあ自分は? ってことだろ。俺とかお前みたいに記憶をなくさない人間もたまにいるんだ。まあこのカシワギさんもその一員。まあ記憶を吸われない奴が全員モンスターを呼び出せるかって言ったら、それは違うんだけど」
「この研究所ではそれらの素質がある人間や、さまざまな現象について研究している。特に素質が高い人間でないと、ハイランクのモンスターは呼び出せない。一つの法則として、大きな事件や事故に巻き込まれた者の割合が高い」
「そう。でお前はおそらく、その資質がすごく高い。ってわけで、ハルだっけ。出して見せろよ。二体の『運命神』」
「無理だよ! 昨日は何もしてないのに勝手に出たんだ」
 ゲームでは、すっと画面をタップするだけで画面の中にモンスターが現れる。
 それ以外の……『リアルでの』出し方なんて知るはずもない。
「晴翔君。ユウキはこう言ってるが、僕たちは君に『リンカー』部隊入りしてほしいとは思ってない。小学生を巻き込むわけにはいかないからね。大人としてやっちゃいけないことだ」
「……」
《たすけて》
《たすけて》
 その時だ。
 僕の頭の中に『あの声』がちいさく、しかしはっきりと響いた。
 誰かが僕に助けを求めている。
 細く、ひそやかに、だけどはっきりと。
 それがなんなのか、分からない。
 だけどなぜだろう。どうしても、無視はできなかった。
「僕も……入れてもらえませんか。その『リンカー』部隊に」
 自分でもよくわからないうちに、そう口にしていた。
「絶対に無理だ」
 カシワギさんの返事はすぱりと早い。
「何度でも言うが、小学生にそんなことはさせられない。『リンカー』の仕事はモンスターと戦うことだ。君はそれがどういうことなのか、分かっていない」
 絶対に譲るつもりのなさそうな声だった。
 確かに……戦いたいのかって言われたら違うけど。
 でも……なぜだろう。そうしなきゃいけない気がする。
「じゃあ俺のあずかりにするか? 登録だけしてやれよ」
 ユウキは能天気な声で言うけど、カシワギさんの眉間の皺はなくならない。
「君だってまだ中学二年生だ、ユウキ。頼まれてここに出入りさせてるけど、本当なら……」
「あーもう! わかったわかった! 聞き飽きたよそれは。いいじゃん。俺パートナーが欲しかったんだよ。ちょっとくらいいいだろ。な、ハル、とりあえずお前、あしたここの『ディファレンスルーム』に来い。俺がトレーニングしてやるから」
「ユウキ! そんな勝手な」
「何度でも言っちゃうけど。こいつは貴重な人材って奴だろ? 運命神を二体同時に呼び出したんだぜ? 例外中の例外だよ」
「………それは、そうだが」
 どうやら『アーシェンラー』と『バーシェンガー』を同時に呼び出せるのはとても珍しいことらしい。
 その場の大人たちの視線が、すべて僕らに向いている。
 みんなぐっとまゆを寄せて、思案する顔をしていた。

 家に帰って、ベッドに寝転がっていた。
 とりあえずスマホは返してもらったし、ゲームは普通にできる。
『モンディバ』のプレイヤーレベルも、普通に遊んでいたころと同じのままだ。
 二体の運命神はあれから、出てきてほしいと思っても出てこない。
 あれから、ホイルは数体ちらほらと街に出てきているけど、異常発生は止まったらしい。
 すぐ近くにいたはずの正体不明の高ランカーも、忽然といなくなってしまった。
 もしかしてだけど。
 えりはに現れた高ランカーってもしかして僕の事だったんだろうか。
 実はただのプレイヤーじゃなく新たなリンカーが現れる前触れだった……とか?
 そういう仮説もたつと言えばたつかもしれない。
 とにかくこの町では、よく分からないことがたくさん起こっているみたいだった。

 
 ディファレンスルームと言うのは、もっとも下位の「リンカー」が訓練をするための部屋だった。
 リアルでモンスターを操る『リンカー』見習いとしての一日目。
 そこで僕はまた、とんでもないものを目にすることになる。
『例外的なこと』は、まだ終わりじゃなかった。
「……おいおい、うっそだろ」
『それ』を目にしたユウキの目が、まじまじと見開かれる。
 僕ははじめて自分で、モンスターを呼び出すことができた。
 リアルで『コードを書く』コツはユウキから教わった。
「自分の血が電気信号みたいに流れていく様子をイメージしろ。それを首の後ろくらいからドバッと出すような感覚だよ」
 そんな、分かるような分からないような説明を頼りにどうにか呼び出した「例の二体」。 白と黒、正反対の運命を回す女神。
 初対面じゃない。だけどこの前と、決定的に様子が違う。
「「久しぶりね、ハル。と言ってもせいぜい二日ぶりくらいかしら」」
 その二体は……一つになっていた。
 僕から見て右側の半身がアーシェンラー。
 左半身がバーシェンガー。
 縦に真っ二つにしてくっつけ合わせたみたいに。
 二つの顔を持つ一人の女性として、宙に浮いている。
「こんなことは……初めてだ」
 モニタールームから、小さな声が聞こえる。
 オペーレーターの人が何人も、言葉を失ってその「合体」した姿を凝視していた。
「……数値の方はどうなってる」
 カシワギさんがおさえた声でたずねた。
 ここでは呼び出したモンスターの強さを計測できるらしい。
「単純な二倍よりも、さらに高い値になっています……」
 その答えに周囲がざわつく。
 僕のスマホでもヒットポイントが三万以上あった。
 普段使っているモンスターは五百とか千とか、そのくらいなのに。
「『アーシェンラー』と『バーシェンガー』の力が一つになった上、増幅されている、ってことか?」
「「まったく、とんでもないことをしてくれたわね」」
一体になった「それ」はやれやれと肩をすくめた。
 声と口調としぐさはアーシェンラーのものだけど、かすかにハモりでもしてるみたいに、同時にバーシェンガーの声も響いている。
「「私がどうしてこの女とくっつけられなきゃいけないんだ」」
 今度は逆にバーシェンガーの声がして、アーシェンラーの声が「副音声」になった。
 どうやら体は一つだけど、二人とも自由にしゃべることができるらしい。
「その……痛かったりしないの?」
 ちょっと間の抜けたことを、ついつい僕は聞いてしまう。
「「いいえ。まったく。お互いに意思を持ち、勝手に喋ることが出来るわ。なかなか快適よ」」
「「私は快適じゃない!」」
 全く違う人間が半分ずつくっついてるって、本当ならグロテスクなはずなのに。
 ふしぎなことにたいして違和感もなく、むしろきれいに見えるのが不思議だった。
「僕、二人のことなんて呼んだらいいの?」
「「なんて呼んでもいいわよ?」」
「「おまえの好きにすればいい、マスター」」
 そう言われても困ってしまった。
 アーシェンラーでもバーシェンガーでもあるわけなので、どうしたらいいんだろう。
 大人たちは、僕の戸惑いとは全く違う方向で、あっけにとられていた。
「二つのキャラの合体?こんなものはゲームにもないシステムだ。一体なんだ……これは」
 カシワギさんの声が少し上ずっていた。
「なあ、センセー。こいつやっぱ逸材なんじゃねえの?」
 ユウキがまじまじと一体になったモンスターを眺めながら言う。
「もしもの時のために軽く、実戦にも慣らしておいた方がいいよ。いつこういうケタ違いの力が必要になるか、分かんないぜ?」
「だが」
 カシワギさんもオペーレーターの人たちも、言葉なく、戸惑った顔をするばかりだ。
「俺がちゃんと監督するよ。誰か信頼のできるやつのそばに置いた方がかえって安全だろ?」
 信頼できるって自分で言っちゃったよ!
 と僕は心でツッコんだけど、みんなは真剣にその提案について考えているようだった。
 しばらくたって、カシワギさんが小さく一つうなずく。
「わかった。まずはパトロールなら許可する。ただしえりは内の決められたエリアだけだ」
「よっしゃ。バシバシ鍛えてやるからなハル」
 ユウキが嬉しそうに、ばしっと僕の背を叩く。
 なんだかわからないうちに、コンビを組むことになったみたいだ。
「「これも運命、かしら。二つの運命が一つになるのよ」」
「「いや、二つでは済まないかもしれないな」」
 今や一人で二人の存在になった『運命神ズ』は、楽しそうに、そして意味ありげにそう言って笑った。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!

mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの? ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。 力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる! ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。 読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。 誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。 流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。 現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇 此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。

ママのごはんはたべたくない

もちっぱち
絵本
おとこのこが ママのごはん たべたくないきもちを ほんに してみました。 ちょっと、おもしろエピソード よんでみてください。  これをよんだら おやこで   ハッピーに なれるかも? 約3600文字あります。 ゆっくり読んで大体20分以内で 読み終えると思います。 寝かしつけの読み聞かせにぜひどうぞ。 表紙作画:ぽん太郎 様  2023.3.7更新

パンティージャムジャムおじさん

KOU/Vami
児童書・童話
夜の街に、歌いながら歩く奇妙なおじさんが現れる。 口癖は「パラダイス~☆♪♡」――名乗る名は「パンティージャムジャムおじさん」。 子供たちは笑いながら彼の後についていき、歌を真似し、踊り、列は少しずつ長くなる。 そして翌朝、街は初めて気づく。昨夜の歌が、ただの遊びではなかったことに。

星降る夜に落ちた子

千東風子
児童書・童話
 あたしは、いらなかった?  ねえ、お父さん、お母さん。  ずっと心で泣いている女の子がいました。  名前は世羅。  いつもいつも弟ばかり。  何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。  ハイキングなんて、来たくなかった!  世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。  世羅は滑るように落ち、気を失いました。  そして、目が覚めたらそこは。  住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。  気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。  二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。  全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。  苦手な方は回れ右をお願いいたします。  よろしくお願いいたします。  私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。  石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!  こちらは他サイトにも掲載しています。

極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。

猫菜こん
児童書・童話
 私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。  だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。 「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」  優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。  ……これは一体どういう状況なんですか!?  静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん  できるだけ目立たないように過ごしたい  湖宮結衣(こみやゆい)  ×  文武両道な学園の王子様  実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?  氷堂秦斗(ひょうどうかなと)  最初は【仮】のはずだった。 「結衣さん……って呼んでもいい?  だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」 「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」 「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、  今もどうしようもないくらい好きなんだ。」  ……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

処理中です...