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柔らかな夜
星空を冠したプロポーズの余韻に包まれながら、私たちは城へと帰還した。
馬車から降りた私を、シリルは当然のように横抱きにして、一度も地面に降ろすことなく最上階にある主寝室まで運んでいく。
「シリル、もう大丈夫よ。自分で歩けるわ」
「ダメだよ。君は今日、僕から『夜空』を受け取った特別な存在なんだ。その足を、これ以上疲れさせるわけにはいかない」
シリルはそう言って、私を大きな天蓋付きのベッドにそっと沈めた。
部屋の中には、私が市場で気に入ったあのハーブの香りが微かに漂っている。シリルが先回りして、香炉に用意させていたのだろう。
シリルは上着を脱ぎ捨て、白いシャツのボタンをいくつか外すと、私の隣に潜り込んできた。
大きな体がシーツ越しに密着し、彼の体温が伝わってくる。
「……やっと、二人きりだ」
シリルは私の腰に腕を回し、壊れ物を抱きしめるようにして自分の胸元に引き寄せた。
昼間の王子様の顔とは違う、少しだけ幼くて、執着に満ちた瞳が私を射抜く。
「ねえ、フィオナ。眠る時も、夢の中でも、僕のことだけを考えて。……起きたら一番に僕を見て。君の毎分毎秒を、僕が塗りつぶしてあげる」
「……ふふ。それじゃあ、私、シリル以外のこと何もできなくなっちゃうわ」
「それでいい。何もできなくていい。君が息をして、僕の隣で笑っている……それ以上のことなんて、僕には必要ないんだ」
シリルは私の額に、優しく、けれど重い重いキスを落とした。
「おやすみ、僕のフィオナ。……明日も、君が『自分なんて』なんて言えないくらい、僕の愛で溺れさせてあげるから」
シリルの腕の中は、何重もの魔法と権力に守られた、世界で一番安全で、逃げ場のない檻。
私は彼の心地よい重みを感じながら、ゆっくりと瞳を閉じた。
窓の外には星が、静かに私たちを見守るように輝いていた。
馬車から降りた私を、シリルは当然のように横抱きにして、一度も地面に降ろすことなく最上階にある主寝室まで運んでいく。
「シリル、もう大丈夫よ。自分で歩けるわ」
「ダメだよ。君は今日、僕から『夜空』を受け取った特別な存在なんだ。その足を、これ以上疲れさせるわけにはいかない」
シリルはそう言って、私を大きな天蓋付きのベッドにそっと沈めた。
部屋の中には、私が市場で気に入ったあのハーブの香りが微かに漂っている。シリルが先回りして、香炉に用意させていたのだろう。
シリルは上着を脱ぎ捨て、白いシャツのボタンをいくつか外すと、私の隣に潜り込んできた。
大きな体がシーツ越しに密着し、彼の体温が伝わってくる。
「……やっと、二人きりだ」
シリルは私の腰に腕を回し、壊れ物を抱きしめるようにして自分の胸元に引き寄せた。
昼間の王子様の顔とは違う、少しだけ幼くて、執着に満ちた瞳が私を射抜く。
「ねえ、フィオナ。眠る時も、夢の中でも、僕のことだけを考えて。……起きたら一番に僕を見て。君の毎分毎秒を、僕が塗りつぶしてあげる」
「……ふふ。それじゃあ、私、シリル以外のこと何もできなくなっちゃうわ」
「それでいい。何もできなくていい。君が息をして、僕の隣で笑っている……それ以上のことなんて、僕には必要ないんだ」
シリルは私の額に、優しく、けれど重い重いキスを落とした。
「おやすみ、僕のフィオナ。……明日も、君が『自分なんて』なんて言えないくらい、僕の愛で溺れさせてあげるから」
シリルの腕の中は、何重もの魔法と権力に守られた、世界で一番安全で、逃げ場のない檻。
私は彼の心地よい重みを感じながら、ゆっくりと瞳を閉じた。
窓の外には星が、静かに私たちを見守るように輝いていた。
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