【完結】無能と追放された魔導鍛冶師、最強の騎士に拾われ溺愛される

ムラサメ

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ep.6

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 カイルはアルベールの冷徹な威圧感に気圧されながらも、虚勢を張って剣を抜いた。

「な、何を言う! メルは我が騎士団の所有物だ! その女がいないと、予備の剣の調整が……」

​「……所有物だと?」

​ アルベールの逆鱗に触れた。

 彼が軽く地を踏み抜いた瞬間、爆音とともに石畳が砕け、アルベールの姿が消える。

「がっ……!?」

​ 次の瞬間、カイルは自分の腹部に凄まじい衝撃を感じて吹き飛んでいた。アルベールが抜剣すらせず、鞘のままで叩き伏せたのだ。

 壁に激突し、泥の中に転がるカイル。アルベールはその胸元を、剣の切っ先で静かに押さえつけた。

​「いいか、よく聞け。君が捨てた彼女の技術は、僕の魔力を一滴も漏らさず刃へと変える。……今の僕なら、この剣一振りで君の国ごと更地にできる。それほどの至宝を、君は泥の中に放ったんだ」

​ アルベールの瞳には、ただ敵を殲滅する冷徹な意志だけが宿っていた。

「ひ、ひぃっ……! 助け……」

​「助けを求める相手を間違えているな。君が謝罪すべき相手は――」

​ そこへ、騒ぎを聞きつけたメルが、テラスからトコトコと駆け寄ってきた。

「あ、アルベール様! あんまりいじめたら可哀想ですよ」

​ カイルの目に、希望の光が宿る。

「メ、メル! 助けてくれ、俺が悪かった、戻ってきて……!」

​ メルは泥まみれのカイルの前に膝をつくと、聖母のような微笑みを浮かべた。

​「あの時、私に『出て行け』と言ったカイル様は、とっても強そうに見えました。……でも、今のあなたは、私が浴びた雨よりも冷たい泥の中にいます。……なんだか、不思議ですね」

​「メ、メル……頼む、戻って……」

​「お断りします。……あ、カイル様の剣、私が調整しないと、次の戦いでは根元から『ポッキリ』折れてしまいますよ。……あんなに無理な使い方をなさるんですもの。……お大事になさってくださいね?」

​ 悪意のない、純粋な「心配」。それがカイルの心を完全に粉砕した。

 アルベールは満足げに鼻で笑うと、メルの肩を抱き寄せた。

​「さあメル、行こう。……あ、テラスのスープはもう片付けさせたよ。少しでも冷めたものを君に飲ませるわけにはいかないからね。今、シェフに命じて、一から新しく作り直させている。……最高にフレッシュで、熱々のスープだ」

​「えぇ? もったいないですよ。温め直せばいいのに……」

​「ダメだ! 君の喉を通るものは、常に世界で一番完璧な状態でなければならない。それが僕の誇りだ」

​ アルベールは、泥の中のカイルには二度と視線を向けず、メルをエスコートして城の中へと戻っていった。
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