【完結】無能と追放された魔導鍛冶師、最強の騎士に拾われ溺愛される

ムラサメ

文字の大きさ
7 / 19

ep.7

しおりを挟む
​「さあ、メル。これこそが、君の目覚めに相応しい出来立てのスープだ。一口飲んでみてくれ」

​ アルベールはキラキラとした、期待に満ちた眼差しでメルを見守っている。

 運ばれてきたのは、新鮮な地鶏の黄金スープ。一から作り直しただけあって、香りの高さが先ほどとは段違いだ。

​「わぁ……。本当に、さっきよりもずっと良い匂いがします。……いただきます」

​ メルがおっとりとスプーンを口に運ぶ。

 温かい液体が喉を通った瞬間、冷たい雨の記憶が完全に消え去るような、深い安らぎが全身に広がった。

​「……おいしい。……アルベール様、本当にありがとうございます。なんだか、力が湧いてきました」

​「はは! そうだろう! 君がそう言ってくれるだけで嬉しいよ」

​ アルベールは、自分もようやく満足げにコーヒーを口にした。その優雅な所作は洗練されているが、向ける視線はどこまでも熱く、重い。

​「……メル。カイルとの会話で、君の技術がいかに特別か、改めて確信したよ。あんな奴のために、君は今までどれほどの剣を打ってきたんだ?」

​「……。……私はただ、使う人が怪我をしないように、一生懸命不純物を取っていただけなんです。でも、カイル様には『地味だ』って、いつも怒られてしまって……」

​ メルは少しだけ寂しそうに笑ったが、すぐにその瞳に職人としての強い光を宿した。

​「でも、アルベール様は、私の剣を『温かい』と言ってくださいました。……だから私、決めました。アルベール様のために、今までで一番、世界で一振りの『最高の剣』を打ちたいです」

​ その言葉を聞いた瞬間、アルベールのカップがカタカタと音を立てた。

 彼はそのまま椅子から滑り落ちるように床に跪くと、メルの手をそっと取り、祈るように額を押し当てた。

​「……君が、僕のために……? 他の誰でもない、この僕のために、魂を削ってくれると言うのか……?」

​「魂なんて、そんな大げさな……。丁寧に打つだけですよ」

​「いや、僕にとっては救いだ。メル、君が打つ剣なら、僕は世界中のどんな軍勢が相手でも、無傷で帰ってくると誓おう。……君の技術を、僕という存在をかけて証明してみせる」

​ アルベールは感動に震えながら、メルの指先に深く、誓いの口づけを落とした。

 朝日を浴びて、跪く最強騎士と、微笑む少女。その光景は、どんな舞台のフィナーレよりも美しく、そしてどこか狂気的なほどの一途さに満ちていた。

​「よし……! では、すぐに工房へ行こう。……メル、君が必要なものは何でも言ってくれ。伝説の魔鉱石でも、ドラゴンの鱗でも、この僕が今すぐ空を飛んで取ってきてやる!」

​「あ、まずは普通の鉄からで大丈夫です……」

​ 過保護すぎる最強騎士と、彼に最高の武器を贈ろうとする天才鍛冶師。

 二人の本当の共同作業が、ここから幕を開ける。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

【完結】追放された私、宮廷楽師になったら最強騎士に溺愛されました

er
恋愛
両親を亡くし、叔父に引き取られたクレアは、義妹ペトラに全てを奪われ虐げられていた。 宮廷楽師選考会への出場も拒まれ、老商人との結婚を強要される。 絶望の中、クレアは母から受け継いだ「音花の恵み」——音楽を物質化する力——を使い、家を飛び出す。 近衛騎士団隊長アーロンに助けられ、彼の助けもあり選考会に参加。首席合格を果たし、叔父と義妹を見返す。クレアは王室専属楽師として、アーロンと共に新たな人生を歩み始める。

婚活をがんばる枯葉令嬢は薔薇狼の執着にきづかない~なんで溺愛されてるの!?~

白井
恋愛
「我が伯爵家に貴様は相応しくない! 婚約は解消させてもらう」  枯葉のような地味な容姿が原因で家族から疎まれ、婚約者を姉に奪われたステラ。  土下座を強要され自分が悪いと納得しようとしたその時、謎の美形が跪いて手に口づけをする。  「美しき我が光……。やっと、お会いできましたね」  あなた誰!?  やたら綺麗な怪しい男から逃げようとするが、彼の執着は枯葉令嬢ステラの想像以上だった!  虐げられていた令嬢が男の正体を知り、幸せになる話。

公爵令嬢になった私は、魔法学園の学園長である義兄に溺愛されているようです。

木山楽斗
恋愛
弱小貴族で、平民同然の暮らしをしていたルリアは、両親の死によって、遠縁の公爵家であるフォリシス家に引き取られることになった。位の高い貴族に引き取られることになり、怯えるルリアだったが、フォリシス家の人々はとても良くしてくれ、そんな家族をルリアは深く愛し、尊敬するようになっていた。その中でも、義兄であるリクルド・フォリシスには、特別である。気高く強い彼に、ルリアは強い憧れを抱いていくようになっていたのだ。 時は流れ、ルリアは十六歳になっていた。彼女の暮らす国では、その年で魔法学校に通うようになっている。そこで、ルリアは、兄の学園に通いたいと願っていた。しかし、リクルドはそれを認めてくれないのだ。なんとか理由を聞き、納得したルリアだったが、そこで義妹のレティが口を挟んできた。 「お兄様は、お姉様を共学の学園に通わせたくないだけです!」 「ほう?」 これは、ルリアと義理の家族の物語。 ※基本的に主人公の視点で進みますが、時々視点が変わります。視点が変わる話には、()で誰視点かを記しています。 ※同じ話を別視点でしている場合があります。

【完結】隣国のモフモフ騎士団長様、番ではない私でよろしいのですか?

こころ ゆい
恋愛
※最終話に、3/11加筆した分をアップしました。 ※番外編書きたい気持ちがあるのですが、一旦、恋愛小説大賞の締め切りに合わせて、完結とさせて頂きます。🌱 ※最後、急ぎ足で駆け抜けたので、説明不足や誤字脱字多くなっているかもしれません。都度見つけ次第、修正させて頂きます。申し訳ありません。💦 ジャスミン・リーフェント。二十歳。 歴史あるリーフェント公爵家の一人娘だが、 分厚い眼鏡に地味な装い、常に本を読んでいる変わり者。皆が自分のことをそう言っているのは知っていた。 モーリャント王国の王太子殿下、コーネル・モーリャントとの婚約が王命で決まってから十三年。王妃教育を終えても婚姻は進まず、宙ぶらりん状態。 そんな中、出席した舞踏会でいつも通り他の女性をエスコートする王太子殿下。 それだけならまだ良かったが、あろうことか王太子の連れた女性が事件を巻き起こす。その最中で言い渡された婚約破棄。 「....婚約破棄、お受けいたします」 そのあと、ジャスミンは一人旅に出てある人物と出会った。 これは、婚約破棄された女性が獣人国で知らぬうちに番と出会い、運命に翻弄されていく物語。

本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます

氷雨そら
恋愛
 本の虫として社交界に出ることもなく、婚約者もいないミリア。 「君が番だ! 間違いない」 (番とは……!)  今日も読書にいそしむミリアの前に現れたのは、王都にたった一人の竜騎士様。  本好き令嬢が、強引な竜騎士様に振り回される竜人の番ラブコメ。 小説家になろう様にも投稿しています。

天才すぎて追放された薬師令嬢は、番のお薬を作っちゃったようです――運命、上書きしちゃいましょ!

灯息めてら
恋愛
令嬢ミーニェの趣味は魔法薬調合。しかし、その才能に嫉妬した妹に魔法薬が危険だと摘発され、国外追放されてしまう。行き場を失ったミーニェは隣国騎士団長シュレツと出会う。妹の運命の番になることを拒否したいと言う彼に、ミーニェは告げる。――『番』上書きのお薬ですか? 作れますよ? 天才薬師ミーニェは、騎士団長シュレツと番になる薬を用意し、妹との運命を上書きする。シュレツは彼女の才能に惚れ込み、薬師かつ番として、彼女を連れ帰るのだが――待っていたのは波乱万丈、破天荒な日々!?

周囲からはぐうたら聖女と呼ばれていますがなぜか専属護衛騎士が溺愛してきます

鳥花風星
恋愛
聖女の力を酷使しすぎるせいで会議に寝坊でいつも遅れてしまう聖女エリシアは、貴族たちの間から「ぐうたら聖女」と呼ばれていた。 そんなエリシアを毎朝護衛騎士のゼインは優しく、だが微妙な距離感で起こしてくれる。今までは護衛騎士として適切な距離を保ってくれていたのに、なぜか最近やたらと距離が近く、まるでエリシアをからかっているかのようなゼインに、エリシアの心は揺れ動いて仕方がない。 そんなある日、エリシアはゼインに縁談が来ていること、ゼインが頑なにそれを拒否していることを知る。貴族たちに、ゼインが縁談を断るのは聖女の護衛騎士をしているからだと言われ、ゼインを解放してやれと言われてしまう。 ゼインに幸せになってほしいと願うエリシアは、ゼインを護衛騎士から解任しようとするが……。 「俺を手放そうとするなんて二度と思わせませんよ」 聖女への思いが激重すぎる護衛騎士と、そんな護衛騎士を本当はずっと好きだった聖女の、じれじれ両片思いのラブストーリー。

処理中です...