【完結】無能と追放された魔導鍛冶師、最強の騎士に拾われ溺愛される

ムラサメ

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ep.11

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メルが「新しいハンマーの予備が欲しい」と言った翌朝。

 アルベールは、まるで隣国の王族を招待するかのような超豪華な馬車を用意していた。

​「……あの、アルベール様。鍛冶街なら、歩いてすぐですよ?」

​「ダメだ、メル。君のその尊い足に、街の石畳の硬さを教え込むわけにはいかない。それに、今日は君という『至宝』が街に降り立つ記念すべき日なんだ。相応の礼を尽くさなければ」

​ アルベールはメルの手を取って馬車へとエスコートした。
​ ――鍛冶街に到着すると、そこは既に騒然としていた。

 アルベールが事前に「本日、我が命よりも大切な鍛冶師がそちらへ伺う。最高の品を用意しておけ」という物騒な予告状を全店舗に送りつけていたからだ。

​「……あら?なんだか、皆さん正装して並んでますね?」

​ 馬車から降りたメルを待っていたのは、街中の鍛冶師たちが道の両側に整列し、ハンマーを胸に当てて最敬礼している光景だった。

​「いらっしゃいませ、メル先生! 貴女様が森を消し飛ばしたという伝説の剣の作者様ですね!」

「我が店にある最高の鋼、全て差し上げます! どうか一目でいいから、その槌の振り方を見せてください!」

​「えぇ……。私、ただの予備を買いに来ただけなんですけど……」

​ おっとりと困惑するメル。しかし、横に立つアルベールは冷徹な威圧感を放ち、集まる職人たちを牽制した。

​「控えろ。彼女を疲れさせるような質問は一切禁ずる。メル、この店にあるものは全部僕が買い占めた。君が気に入ったものだけを持ち帰ればいい。気に入らなければ、この街ごと買い取って君好みに作り直させよう」

​「買い取らなくていいですぅ……。あ、このハンマー、重心がしっかりしていて使いやすそうですね」

​ メルが一本の、ごく普通のハンマーを手に取った瞬間。

 彼女が触れただけで、その道具がまるで魂を得たかのようにキラリと輝いて見えた。

​「……これにします。おいくらですか?」

​「お、お金なんて頂けません! 伝説の鍛冶師様に使っていただけるなら、それは我が店の誇りです!」

​ 店主が感極まって涙を流す中、アルベールは「……ふん、見る目だけはあるようだな」と、店主が一生遊んで暮らせるほどの金貨が入った袋をカウンターに叩きつけた。

​「これは彼女に道具を選ばせた『権利料』だ。お釣りはハンマーを作る費用にでもあてるがいい」

​「それはしなくていいですってば……!」

​ 結局、ハンマー一本を買うだけなのに、街中がお祭り騒ぎになってしまった。

 帰りの馬車の中、メルは新しいハンマーを大切に抱えながら「……次は、アルベール様の鎧も、もっと軽くして差し上げたいです」と呟く。

​ その言葉を聞いたアルベールが、またしても「君はどこまで僕を救えば気が済むんだ……!」と、馬車の中で感動のあまりメルを抱きしめようとして、全力で回避されるまでがお約束だった。
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