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ep.16
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「……さて。材料は揃いましたけど、アルベール様。……鎧を作るには、まず『型』を取らないといけませんね」
「型……? ああ、そうか。採寸が必要だね。執事か採寸師を呼んでこさせようか?」
アルベールがそう言って立ち上がろうとすると、メルは首を横に振り、愛用の巻尺を手にして一歩近づいた。
「いいえ。……世界で一番の鎧を作るんですもの。……私自身のこの手で、アルベール様の体を隅々まで測らせてください。……ミリ単位のズレも、今のアルベール様の魔力には命取りになりますから」
その瞬間。
アルベールの動きが、ピタリと止まった。
「……き、君が、直接……僕を測るのかい?」
「はい。……じっとしていてくださいね。……失礼します」
メルは、いつもの調子で、アルベールの懐にスッと入り込んだ。
ふわ、とメルの髪から鉄と石鹸が混ざったような香りが漂い、アルベールの鼻腔をくすぐる。
メルの細い指先が、首筋から肩、そして背中へと這うように巻尺を当てていく。
「……。…………っ」
アルベールは、気高さを保とうと必死に前を見据えたが、顔が林檎のように赤くなっているのを隠せなかった。
最強の騎士として戦場では傷一つ負わない彼が、メルの指が胸板に触れただけで、心臓が爆音を立て始めたのだ。
「……あの、アルベール様。心音が、さっきから凄いです。……どこか、具合でも悪いんですか?」
メルが至近距離で顔を覗き込み、心配そうに首を傾げる。
アルベールは「う、うぐ……」と声を漏らし、天を仰いだ。
「……いや……具合が悪いのではない。……ただ、君に触れられているという事実が、僕の許容量を超えてしまっているだけだ……! メル、君の手はなんて……なんて、温かくて、残酷なんだ……!」
「あらぁ。……ちょっと、測りにくいです。……じっとしていてくださいね」
メルはそんなアルベールの劇的な叫びをいつものように受け流し、今度は彼の腰回りに腕を回すようにして寸法を測り始めた。
傍から見れば、メルがアルベールに抱きついているようにしか見えない。
(……あああ、神よ!! 今この瞬間、僕は世界で一番幸福な騎士であり、同時に一番の拷問を受けている……!)
一方のメルは、そんな彼を「大きな鉄の塊」でも見るかのような真剣な眼差しで、黙々とメモを取っていく。
「……よし。……腕も、脚も、完璧に把握しました。……アルベール様、ご協力ありがとうございました」
メルがパッと離れると、アルベールはその場にガクンと膝をついた。
戦場で一万の敵に囲まれても平気だった男が、たった数分の採寸で、魂を使い果たしたかのように肩で息をしている。
「……メル……。……君は、恐ろしいひとだ……」
「ふふ、よく言われます。……さあ、鉄が冷めないうちに……じゃなくて、やる気が冷めないうちに、打ち始めますね!」
宝石と伝説の金属を炉に投げ込み、メルが再び槌を構える。
後ろで魂を抜かれたようになっているアルベールのことなど、既に彼女の職人脳からは消え去っていた。
「型……? ああ、そうか。採寸が必要だね。執事か採寸師を呼んでこさせようか?」
アルベールがそう言って立ち上がろうとすると、メルは首を横に振り、愛用の巻尺を手にして一歩近づいた。
「いいえ。……世界で一番の鎧を作るんですもの。……私自身のこの手で、アルベール様の体を隅々まで測らせてください。……ミリ単位のズレも、今のアルベール様の魔力には命取りになりますから」
その瞬間。
アルベールの動きが、ピタリと止まった。
「……き、君が、直接……僕を測るのかい?」
「はい。……じっとしていてくださいね。……失礼します」
メルは、いつもの調子で、アルベールの懐にスッと入り込んだ。
ふわ、とメルの髪から鉄と石鹸が混ざったような香りが漂い、アルベールの鼻腔をくすぐる。
メルの細い指先が、首筋から肩、そして背中へと這うように巻尺を当てていく。
「……。…………っ」
アルベールは、気高さを保とうと必死に前を見据えたが、顔が林檎のように赤くなっているのを隠せなかった。
最強の騎士として戦場では傷一つ負わない彼が、メルの指が胸板に触れただけで、心臓が爆音を立て始めたのだ。
「……あの、アルベール様。心音が、さっきから凄いです。……どこか、具合でも悪いんですか?」
メルが至近距離で顔を覗き込み、心配そうに首を傾げる。
アルベールは「う、うぐ……」と声を漏らし、天を仰いだ。
「……いや……具合が悪いのではない。……ただ、君に触れられているという事実が、僕の許容量を超えてしまっているだけだ……! メル、君の手はなんて……なんて、温かくて、残酷なんだ……!」
「あらぁ。……ちょっと、測りにくいです。……じっとしていてくださいね」
メルはそんなアルベールの劇的な叫びをいつものように受け流し、今度は彼の腰回りに腕を回すようにして寸法を測り始めた。
傍から見れば、メルがアルベールに抱きついているようにしか見えない。
(……あああ、神よ!! 今この瞬間、僕は世界で一番幸福な騎士であり、同時に一番の拷問を受けている……!)
一方のメルは、そんな彼を「大きな鉄の塊」でも見るかのような真剣な眼差しで、黙々とメモを取っていく。
「……よし。……腕も、脚も、完璧に把握しました。……アルベール様、ご協力ありがとうございました」
メルがパッと離れると、アルベールはその場にガクンと膝をついた。
戦場で一万の敵に囲まれても平気だった男が、たった数分の採寸で、魂を使い果たしたかのように肩で息をしている。
「……メル……。……君は、恐ろしいひとだ……」
「ふふ、よく言われます。……さあ、鉄が冷めないうちに……じゃなくて、やる気が冷めないうちに、打ち始めますね!」
宝石と伝説の金属を炉に投げ込み、メルが再び槌を構える。
後ろで魂を抜かれたようになっているアルベールのことなど、既に彼女の職人脳からは消え去っていた。
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