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癒しの香り
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織姫は、机の上に置きっぱなしになっている反物をクルクルと巻いて片付け始めた。
陽菜の視線は、目の前に置かれた透明ガラスみたいなポットに注がれている。
ポットの中で、ゆっくりと花びらを広げていくハマナスの花。お湯に浸かり、色素がジワジワ溶け出していく。興味深く、無色透明だったお湯が、対流に乗って淡く微かな紫色の濃赤色に変化していく様子を眺めていた。
ポットの中には、ひと摘みの緑茶の葉と、三粒の赤いナツメも一緒に入れられている。緑茶の葉もゆっくりと広がり、赤いナツメもハマナスと一緒にプカプカと浮いていた。
焦燥感に駆られていた陽菜の心は、ジワジワ広がっていく甘く優しい香りに、ゆっくりと包まれ、癒されていくようだ。
反物を片付け終えた織姫が、ポットとセットになっている透明ガラスみたいなカップを手にし、陽菜の前に腰を下ろした。
「いい香りでしょ? 薔薇茶は、飲んだことがおありかしら」
陽菜は頭をフルフルと横に振る。
「初めてだよ」
緑茶や番茶、麦茶に紅茶は飲むけれど、花が直に入っているお茶を飲んだことは無い。
「そう……お口に合えばいいのですが」
織姫はポットの中で色づいた液体をカップに注いだ。カップの丸みと注がれた勢いで、一気に香りが立つ。
より濃縮された香りに包まれ、陽菜は思い切り甘い匂いを鼻から吸い込んだ。
「あー……いい香り~」
「ふふっ、少しは緊張が解けたかしら?」
織姫は笑みを浮かべ、陽菜の前にカップを置く。陽菜は火傷をしないように気をつけながら、指先に意識を集中してカップを持ち上げ、ゆっくりと口をつけた。
湯気と共に、再び花の香りを吸い込む。ズズズと慎重に啜れば、少しの渋味が口の中にやってきた。薔薇茶の味は、ローズヒップティーに似ているかもしれない。
「どう? 落ち着いた?」
心配そうな織姫に、陽菜は頷く。
「うん、ありがとうございます。ちょっと、気持ちは落ち着いたかな」
「ふふっ、よかったですわ」
織姫もカップに口をつけ、薔薇茶の味と香りを楽しむ。ふぅ、とひと息吐くと、カップを置いて少しだけ身を乗り出した。
「落ち着いたのなら、聞かせて欲しいわ。陽菜ちゃんとツクヨミ様の馴・れ・初・め♡」
語尾にハートがついている。
恋バナを楽しむ少女のように、織姫の眼差しはキラキラしていた。陽菜もカップを置き、はぐらかすように苦笑を浮かべる。
「そんな、馴れ初めってほどじゃ……」
「ふふ、謙遜しなくてもよろしくってよ」
織姫は楽しそうにニコニコと笑い、さらにズイと身を乗り出す。
「それで……ツクヨミ様とは、どちらで?」
話しなさい、という、織姫からの期待を込められた圧が凄い。話さなければ、解放してもらえなさそうだ。
でも、語って聞かせるようなロマンティックな内容では無い。ただ単に、陽菜の一目惚れが、ツクヨミだったというだけなのだから。
どう話したものかと考えながら、陽菜はポツリポツリと語り始める。
「始めてコッチの世界に来てしまったときに、アッチの世界に帰らせてくれたのが……ツクヨミ様だったの」
今でも鮮明に覚えている。月の世界で、餅つきをしたときのこと。ツクヨミの白銀の髪と、翡翠色をしたキレイな瞳。柔らかく、優しい微笑み。
ツクヨミを思い浮かべれば、陽菜の頬がポッと熱を持つ。
「なるほど。ツクヨミ様が陽菜ちゃんの恩人だったのですね」
それから……と、織姫は頬杖を突く。ニコッと、紅を引いている唇が弧を描いた。
「初恋のお相手かしら?」
「あっ、う……それは」
返事が、しどろもどろになってしまう。
織姫は「ふふっ」と笑い、再びカップを手にする。
「たしかにツクヨミ様は、お美しい殿方ですもの。心惹かれるのは、致し方ないことですわ」
好きな芸能人は誰? クラスの誰が好き? それに似た内容の会話を大人の女性としているのは、なんだかこそばゆい。
年齢関係無くできる女子トークというのは、こんな感じなんだろうか。
「でも、恋に盲目になってしまってはダメですわよ」
吸い込まれてしまいそうな深緑の瞳が、鋭さを宿す。
陽菜は咎められ、責められているような気持ちになった。
「盲目って、そんな……」
立場は、ちゃんと、わきまえてはいるつもりだ。
ツクヨミは神様で、陽菜はただの子供。会えたのも、本当に奇跡的な偶然の出来事。
だからこそ、もう一度……会えるなら、会いたい。
会えないと分かっているからこそ、想いだけが雪みたいにどんどん積もっていく。
中秋の名月の日に、陽菜が暮らす世界と同時に存在する異なる世界に迷い込んでしまってから、今日までに同じ経験を何度かしている。何度も経験せず、ただの一度きりだったのなら、諦めもついていただろう。
そして今は、今までで一番近いところに居る。千載一遇のチャンスなのだ。
「好きになったら、気持ちは止められないものね」
織姫の声に、陽菜は思考の沼から意識を呼び戻す。
同情するように、織姫は憂いの表情を浮かべている。
「私くしも、そんな時期がありましたわ」
陽菜が知る織姫の相手は、一人しか思い浮かばない。
「彦星さんと、出会ったとき?」
「えぇ、私くしのステキな旦那様ですのよ」
えっ? と、陽菜は耳を疑う。
「旦那? え! えっ? 恋人じゃなくて、夫婦?」
織姫は混乱している陽菜を見て「ふふふっ」と笑い、ええ、と肯定した。
「私くしは……それまで仕事一筋で、殿方と顔を合わせるような機会は皆無でしたの。それを心配した父上が間を取り持って巡り会わせてくださったのですけれど……私くし、一目惚れしてしまいましたのよ。こんなステキな殿方が居らしたのねって。嬉しいことに、彦星様も私くしのことを気に入ってくださってね。一緒に過ごす日々は、とても楽しく幸せでしたわ」
でも……と、織姫は悲しそうに目を伏せる。
「自分達のことばかり優先させ、仕事をおろそかにしてしまった。そして、父上の怒りに触れてしまいましたの」
「それで、一年に一度しか会えなくなっちゃったんだよね」
一年に一度。七夕の日に、カササギ達が天の川に橋を架ける。天の川を挟んで離ればなれになってしまった織姫と彦星は、カササギの橋を渡って会うことができるのだと。
「あら。そちらの世界では、そのように伝わっているのね」
「違うの?」
しんみりしている陽菜に、織姫は軽い調子で答える。
「毎日、仕事の休憩中に会っているわ」
「えっ!」
意外な事実に、陽菜の中で悲恋の妄想がガラガラと音を立てて崩れ落ちた。
今まで、一年に一度しか会えないのは辛かろう、寂しかろうと同情していたのに。
実際には、同居している家族同然に顔を合わせている。
帰ってからだけでなく、仕事の休憩時間にまでも会っているのなら、それ以上の頻度だ。
「なんで、一年に一度だけって……誰が言ったんだろう」
「哀愁があって、よしとされたのかもしれませんわね。そのほうが、物語として面白い、とか」
どうということは無いというように、あっけらかんと答えた織姫は、真剣な眼差しを陽菜に向ける。
「それと……私くし達の寿命は、とても長いですわ。人間の時間軸からしてみれば、私くし達の会う頻度が、一年に一度という間隔に相当するのかもしれませんわね」
織姫の真剣な声音に、陽菜は神妙な心持ちになった。適当に聞き流してはいけない。そんな雰囲気。
「だからこそ、陽菜ちゃんは長くココに居てはダメ。アチラに帰ったとき、何十年、何百年と経過してしまっていては……いけないの」
「私、浦島太郎みたいになっちゃう……?」
浦島太郎が竜宮城で楽しく過ごした三日間は、人間の世界へ戻ると三百年という年月に相当していた。
このまま長居をすれば、陽菜も、そうなってしまうかもしれない。
七夕の夜に行方不明となり、死亡したものと判断を下されてしまうかも。そうなれば、陽菜の家族を悲しませることになってしまう。言い換えれば、陽菜も、二度と家族に会えなくなってしまうということだ。
だから、端午の節句のときも、義経達は陽菜を早く帰そうとしていたのだろう。
小さな嘆息と共に、織姫は立ち上がる。
「さぁ、ツクヨミ様に会えるか分からないけれど……掛け合ってみましょうか」
「誰に?」
ニコニコしながら、不安そうにしている陽菜の元へ歩いて来ると、織姫はソッと陽菜の手を取り立ち上がらせた。
「行きましょう。父上の……天帝のところへ」
天帝。この世界の、最高神。
レベルは桁違いだけれど……一人で小学校の校長室へ足を運び、校長先生に会って自分の要望を伝えてくるのだと命じられたような、そんな二の足を踏む緊張感が去来した。
陽菜の視線は、目の前に置かれた透明ガラスみたいなポットに注がれている。
ポットの中で、ゆっくりと花びらを広げていくハマナスの花。お湯に浸かり、色素がジワジワ溶け出していく。興味深く、無色透明だったお湯が、対流に乗って淡く微かな紫色の濃赤色に変化していく様子を眺めていた。
ポットの中には、ひと摘みの緑茶の葉と、三粒の赤いナツメも一緒に入れられている。緑茶の葉もゆっくりと広がり、赤いナツメもハマナスと一緒にプカプカと浮いていた。
焦燥感に駆られていた陽菜の心は、ジワジワ広がっていく甘く優しい香りに、ゆっくりと包まれ、癒されていくようだ。
反物を片付け終えた織姫が、ポットとセットになっている透明ガラスみたいなカップを手にし、陽菜の前に腰を下ろした。
「いい香りでしょ? 薔薇茶は、飲んだことがおありかしら」
陽菜は頭をフルフルと横に振る。
「初めてだよ」
緑茶や番茶、麦茶に紅茶は飲むけれど、花が直に入っているお茶を飲んだことは無い。
「そう……お口に合えばいいのですが」
織姫はポットの中で色づいた液体をカップに注いだ。カップの丸みと注がれた勢いで、一気に香りが立つ。
より濃縮された香りに包まれ、陽菜は思い切り甘い匂いを鼻から吸い込んだ。
「あー……いい香り~」
「ふふっ、少しは緊張が解けたかしら?」
織姫は笑みを浮かべ、陽菜の前にカップを置く。陽菜は火傷をしないように気をつけながら、指先に意識を集中してカップを持ち上げ、ゆっくりと口をつけた。
湯気と共に、再び花の香りを吸い込む。ズズズと慎重に啜れば、少しの渋味が口の中にやってきた。薔薇茶の味は、ローズヒップティーに似ているかもしれない。
「どう? 落ち着いた?」
心配そうな織姫に、陽菜は頷く。
「うん、ありがとうございます。ちょっと、気持ちは落ち着いたかな」
「ふふっ、よかったですわ」
織姫もカップに口をつけ、薔薇茶の味と香りを楽しむ。ふぅ、とひと息吐くと、カップを置いて少しだけ身を乗り出した。
「落ち着いたのなら、聞かせて欲しいわ。陽菜ちゃんとツクヨミ様の馴・れ・初・め♡」
語尾にハートがついている。
恋バナを楽しむ少女のように、織姫の眼差しはキラキラしていた。陽菜もカップを置き、はぐらかすように苦笑を浮かべる。
「そんな、馴れ初めってほどじゃ……」
「ふふ、謙遜しなくてもよろしくってよ」
織姫は楽しそうにニコニコと笑い、さらにズイと身を乗り出す。
「それで……ツクヨミ様とは、どちらで?」
話しなさい、という、織姫からの期待を込められた圧が凄い。話さなければ、解放してもらえなさそうだ。
でも、語って聞かせるようなロマンティックな内容では無い。ただ単に、陽菜の一目惚れが、ツクヨミだったというだけなのだから。
どう話したものかと考えながら、陽菜はポツリポツリと語り始める。
「始めてコッチの世界に来てしまったときに、アッチの世界に帰らせてくれたのが……ツクヨミ様だったの」
今でも鮮明に覚えている。月の世界で、餅つきをしたときのこと。ツクヨミの白銀の髪と、翡翠色をしたキレイな瞳。柔らかく、優しい微笑み。
ツクヨミを思い浮かべれば、陽菜の頬がポッと熱を持つ。
「なるほど。ツクヨミ様が陽菜ちゃんの恩人だったのですね」
それから……と、織姫は頬杖を突く。ニコッと、紅を引いている唇が弧を描いた。
「初恋のお相手かしら?」
「あっ、う……それは」
返事が、しどろもどろになってしまう。
織姫は「ふふっ」と笑い、再びカップを手にする。
「たしかにツクヨミ様は、お美しい殿方ですもの。心惹かれるのは、致し方ないことですわ」
好きな芸能人は誰? クラスの誰が好き? それに似た内容の会話を大人の女性としているのは、なんだかこそばゆい。
年齢関係無くできる女子トークというのは、こんな感じなんだろうか。
「でも、恋に盲目になってしまってはダメですわよ」
吸い込まれてしまいそうな深緑の瞳が、鋭さを宿す。
陽菜は咎められ、責められているような気持ちになった。
「盲目って、そんな……」
立場は、ちゃんと、わきまえてはいるつもりだ。
ツクヨミは神様で、陽菜はただの子供。会えたのも、本当に奇跡的な偶然の出来事。
だからこそ、もう一度……会えるなら、会いたい。
会えないと分かっているからこそ、想いだけが雪みたいにどんどん積もっていく。
中秋の名月の日に、陽菜が暮らす世界と同時に存在する異なる世界に迷い込んでしまってから、今日までに同じ経験を何度かしている。何度も経験せず、ただの一度きりだったのなら、諦めもついていただろう。
そして今は、今までで一番近いところに居る。千載一遇のチャンスなのだ。
「好きになったら、気持ちは止められないものね」
織姫の声に、陽菜は思考の沼から意識を呼び戻す。
同情するように、織姫は憂いの表情を浮かべている。
「私くしも、そんな時期がありましたわ」
陽菜が知る織姫の相手は、一人しか思い浮かばない。
「彦星さんと、出会ったとき?」
「えぇ、私くしのステキな旦那様ですのよ」
えっ? と、陽菜は耳を疑う。
「旦那? え! えっ? 恋人じゃなくて、夫婦?」
織姫は混乱している陽菜を見て「ふふふっ」と笑い、ええ、と肯定した。
「私くしは……それまで仕事一筋で、殿方と顔を合わせるような機会は皆無でしたの。それを心配した父上が間を取り持って巡り会わせてくださったのですけれど……私くし、一目惚れしてしまいましたのよ。こんなステキな殿方が居らしたのねって。嬉しいことに、彦星様も私くしのことを気に入ってくださってね。一緒に過ごす日々は、とても楽しく幸せでしたわ」
でも……と、織姫は悲しそうに目を伏せる。
「自分達のことばかり優先させ、仕事をおろそかにしてしまった。そして、父上の怒りに触れてしまいましたの」
「それで、一年に一度しか会えなくなっちゃったんだよね」
一年に一度。七夕の日に、カササギ達が天の川に橋を架ける。天の川を挟んで離ればなれになってしまった織姫と彦星は、カササギの橋を渡って会うことができるのだと。
「あら。そちらの世界では、そのように伝わっているのね」
「違うの?」
しんみりしている陽菜に、織姫は軽い調子で答える。
「毎日、仕事の休憩中に会っているわ」
「えっ!」
意外な事実に、陽菜の中で悲恋の妄想がガラガラと音を立てて崩れ落ちた。
今まで、一年に一度しか会えないのは辛かろう、寂しかろうと同情していたのに。
実際には、同居している家族同然に顔を合わせている。
帰ってからだけでなく、仕事の休憩時間にまでも会っているのなら、それ以上の頻度だ。
「なんで、一年に一度だけって……誰が言ったんだろう」
「哀愁があって、よしとされたのかもしれませんわね。そのほうが、物語として面白い、とか」
どうということは無いというように、あっけらかんと答えた織姫は、真剣な眼差しを陽菜に向ける。
「それと……私くし達の寿命は、とても長いですわ。人間の時間軸からしてみれば、私くし達の会う頻度が、一年に一度という間隔に相当するのかもしれませんわね」
織姫の真剣な声音に、陽菜は神妙な心持ちになった。適当に聞き流してはいけない。そんな雰囲気。
「だからこそ、陽菜ちゃんは長くココに居てはダメ。アチラに帰ったとき、何十年、何百年と経過してしまっていては……いけないの」
「私、浦島太郎みたいになっちゃう……?」
浦島太郎が竜宮城で楽しく過ごした三日間は、人間の世界へ戻ると三百年という年月に相当していた。
このまま長居をすれば、陽菜も、そうなってしまうかもしれない。
七夕の夜に行方不明となり、死亡したものと判断を下されてしまうかも。そうなれば、陽菜の家族を悲しませることになってしまう。言い換えれば、陽菜も、二度と家族に会えなくなってしまうということだ。
だから、端午の節句のときも、義経達は陽菜を早く帰そうとしていたのだろう。
小さな嘆息と共に、織姫は立ち上がる。
「さぁ、ツクヨミ様に会えるか分からないけれど……掛け合ってみましょうか」
「誰に?」
ニコニコしながら、不安そうにしている陽菜の元へ歩いて来ると、織姫はソッと陽菜の手を取り立ち上がらせた。
「行きましょう。父上の……天帝のところへ」
天帝。この世界の、最高神。
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