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第3章 混じり気のない黒は、濁りのない白と同じくらい純粋で強烈。だから、惹きつけられる。

44.隠されていた本音を隠れて聞いてみたら?人が三人以上になれば、ベクトルは固定されない。妹は、お母さんがいることが絶対条件で生きてきた。

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大きな口が離れ、妹は、姿を現した。

「ずっといたよ。」
と妹。

妹の声もよく聞こえる。

ずっと信じていたお母さんに裏切られて、心をズタズタにされて、痛みに絶望したいよね、くーちゃん。

お母さんは、妹を見つけ、私に愚痴をこぼしていたときの様子とは一変した。

「実月!お姉ちゃんなんだから、くるみちゃんを巻き込まないで!暗くなる前に、くるみちゃんと早く帰りなさい。」
とお母さん。

妹は、お母さんの顔を見れなくて、下を向いている。

「私は、お姉ちゃんと一緒じゃなかった。
私は、ずっとお母さんといたよ。
ここに来るのだって、お母さんを追いかけてきたんだよ。

お母さんは、ここに来るまで、一度も私を見てくれなかった。
返事もしてくれなかった。」
と妹の怨念のこもった声。

「ごめんね、くるみちゃん。気づかなくて。気が立っていたのよ。」
と、妹に謝るお母さん。

「お母さん、気が立っていたって、誰に?」
と、お母さんの愚痴をシャワーのように浴びていた妹は、納得しない。

「もちろん。それは」
とお母さんが、答えを言う前に。

「私によね?」
と妹は、腹の奥底から声を出した。

「聞こえていた。聞いていたよ。私のことを話していたよね。楽しそうに話していたよね?
お母さんは、ずっと、私が重荷だったの?」
と妹。

「くるみちゃんを重荷だなんて、誰がくるみちゃんに言ったの?」
とお母さん。

「私は、お母さんが見てくれているから、頑張っていた。お母さんと一緒だったから、誰といても楽しかった。」
と妹は本心を語った。

「お母さんも、くるみちゃんがいるから楽しかったわよ。」
とお母さん。

お母さんも妹も、楽しかった、が、過去形になっているね。

「今のお母さんは、私がいなくても、誰とでも楽しんでいる。

私は、お母さんがいなかったら、何も楽しくないのに。」
と妹は、恨めしそう。

「くるみちゃん?」
とお母さんは、困惑している。

お母さんの思考は、妹の思考と合わさらない。

「お母さんは、ずるい。」
と妹。

困ったお母さんは、妹を説得することにした。

「お母さんも、くるみちゃんと過ごす時間がいつまでも続けばいいと思ったわ。

でも、お母さんにもくるみちゃんにも、どうにもできない理由で、お母さんとくるみちゃんは離れ離れにならなければならなかった。

そこのところは、くるみちゃんにも分かってほしいわ。」
とお母さん。

お母さんが、妹に理解を求めるのは、初めて。

「お母さんは悪くなくて、お母さんの思ったような出来じゃなかった私が悪いの?」
と妹。

お母さんが妹を説得するのは、当たり障りない言葉を並べるだけじゃ、足りない。

お母さんの本心にプラスした、いくばくかのトゲ。

お母さんの口から飛び出した言葉の数々は、妹の心に突き刺さり、妹の心の表面だけじゃなく、内側までえぐったばかり。

「そんなこと言っていないわよ。」
とお母さん。

「今は言っていない。
でも、さっきは、話していた。
私のこと、電話で話していたよ!」
と妹は、お母さんの発言を正確に理解している。

お姉ちゃんは、嬉しいよ。

「本当に?お母さんだった?」
とお母さんは、しらを切る。

お母さんには、大きな口が一緒にいた妹の声を聞いていない、姿を見ていない。

妹がお母さんの本音を浴びるように聞いていたと知らないお母さんは、妹の変化についていけていない。

何より。

今のお母さんは、お母さんの不倫相手が働いている会社の建物の出入り口から、私を引き離すことが、最優先。

妹のご機嫌よりも。

だから、妹と会話しながらも、お母さんの視線は、妹に集中しない。

私は、私を建物から引き離したいお母さんの気を引いてみる。

「私は、絶対に、お母さんの不倫相手に会って、満足いくまで話をする。

待っている間に、お母さんとくーちゃんは、ここで話し合ったら?」

「実月、帰りなさいって言っているのよ。くるみちゃんを連れて行きなさい。」
とお母さん。

私は、親切にも、アドバイスをした。

家族だからね。

「お母さんは、不倫相手に会うより先に、くーちゃんと話をした方がいいよ。

お母さんの言うことを素直に聞くだけだったくーちゃんは、自分で考えるようになったよ。

短時間で成長著しいよね。」

私とお母さんと妹が、お母さんの不倫相手の建物の出入り口で揉めている間に、動きがあった。

お父さんのところに移動させた大きな口が、来た来た、と騒いでいる。

不倫相手は、私がいる表側じゃなく、裏口から出ていったらしい。

『大きな口。お父さんに言って。お父さんが、お母さんの不倫相手に話しかけるの。お母さんの不倫相手と話しながら、不倫相手を足止めして。』

『かははは。止める、止める。』
と大きな口。

私は、建物の出入り口から受付に向かって叫んだ。

「お母さんの不倫相手は、この建物の裏口から出ていったので、私の待っている側に来るように伝えてほしいんです。

今、裏口で、お父さんが、お母さんの不倫相手を引き止めています。」

「止めなさい!妄想です。この子の妄想ですから!」
とお母さん。

「妄想か、どうか、確認しにいこう?
お父さんが、一足先に待っているよ。」
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