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第8章 魔法使いのいる世界で、魔力を持たないまま生きていく君へ。

345.シグル・ドレマンによる使用人を帯同しない貴族の男子寮の内偵二日目。今日は、日が高い。おや、男子学生が入っていく。ついていこう。

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使用人を帯同しない貴族の男子寮にきたシグル・ドレマン。
今日は、昨日と違い、日が高い。

空を見上げると眩しい。

昨日に引き続き、男子寮を歩き回れというマーゴットの指示。
同じ建物なのに、時間帯をずらしただけで、見るものに違いがあるだろうか?

シグル・ドレマンは、建物に入る前に、つらつらとそんなことを考えていた。

そのとき、シグル・ドレマンの後方から歩いてきた人物が、シグル・ドレマンの横を通り過ぎて、男子寮に入っていく。

入学一年目、もうすぐ二年目の男子学生だ。
学生のつけている腕章が、学年を表している。

男子学生が、寮にいるのは、授業が終わったか、寮に戻る用事でもあったのだろう。

昨日は、寮生を見なかった。

今日は、寮生が、シグル・ドレマンの目の前にいる。

昨日との違いは、明らか。

男子学生を追いかけよう。
とシグル・ドレマンは決めた。

今日、シグル・ドレマンは、既に、一つ、新しい発見をしている。

新しい発見の後をたどれば、さらなる新しい発見があるに違いない。

医術の進歩の瞬間のように。

シグル・ドレマンは、すぐさま行動に移した。

男子寮に入り、男子学生の後ろを歩くシグル・ドレマン。

男子学生は、慣れた足取りですたすたと廊下を歩いていく。

まだ部屋には着かないのか。

着いたら、話しかけようかな、暇だ、とシグル・ドレマンは思った。

一年目の学生なら、シグル・ドレマンの話し相手になりそうである。

後ろから、見る限り、男子学生の歩き方には、貴族らしい優雅さは欠片もない。

遠回し過ぎて、シグル・ドレマンには意味の分からない貴族の会話は、つまらない。

男子学生の雑さを見るに、意味が通じる会話ができそうだ。

部屋はどこだ?

男子学生が部屋に入るときに、一緒に入ろう。
とシグル・ドレマンは思った。

そうすれば、すぐ話ができる。

シグル・ドレマンは、男子寮に入ってきた見知らぬ成人男性につけられている男子学生の心の内など、考えもしない。

己の心の赴くままに行動することが、トラブル収集に繋がっているとは考えない男。

それが、シグル・ドレマン。

シグル・ドレマンは、上機嫌で、男子学生の後を追う。
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