言霊の手記

かざみはら まなか

文字の大きさ
35 / 121
第2章 憶測で語らない。可能性は否定しない。

36.牡丹の庭小学校の児童と牡丹の庭中学校の生徒のどん詰まり。最初に開発されたままの土地で再開発できるものがあるなら、それは?

しおりを挟む
「牡丹の庭中学校以外の中学校へ進学しようとする意思を失わせるまで、嫌がらせは続く。」
と萃。

「中学受験を希望した当該児童は、中学受験して牡丹の庭中学校以外の中学校へ行った?」
と奈美。

「牡丹の庭中学校へ進学し、一度も登校せずに、通信制高校へ進んだ。」
と萃。

「小学校の同級生が敵ばかりとなれば。

小学校の同級生が持ち上がる中学校には、登校しない方が生存率が上がる。」
と透雲。

「このときに、牡丹の庭中学校へ進学しても制服も買わない、一日も登校しないことで、写真を撮られないことに成功するという事例が出来た。」
と萃。

「同じ方法は、もう使えなくされている?」
と奈美。

「次の年からは、中学校の制服の採寸と受け渡しが、小学校の行事に組み込まれた。

採寸は、クラス単位。

制服の受け取りは、家からではなく、小学校から中学校へとなっている。」
と萃。

透雲は、失明した三人の保護者が、小学校卒期前の女子児童三人が、中学校で中学校の制服を受け取る日に、子ども達とは別行動をしていて、中学校に押し入ろうとした意味を理解した。

「小六への中学校の制服受け渡し日に、保護者が、中学校の中へ押し入ろうとして捕まったという理由が分かった。

中学校の制服の受け渡しが小学校の学校行事に組み込まれていたからか。

行事を中断させる部外者は、業者ではなく、保護者の方になる。」
と透雲。

萃は、軽く頷く。

「抜け出そうとする児童や、抜け出させたり、休ませようとさせる保護者はいなかった?」
と奈美。

「児童の付き添い、お手伝いとして、採寸と引き渡しの二日間は、児童が逃げ出したりしないように、大人が張り付く。」
と萃。

「小学校のPTAの方々?」
と透雲。

「牡丹の庭小学校の児童の成長を見守る地域の有志の方々。」
と萃。

「有志は、市の施策で団地に入居した人達?」
と透雲。

「そう。有志の方々には、二日間の日当と昼食代が支払われている。」
と萃。

「児童がスーパーから逃げようとすると、どうなる?」
と奈美。

「客に紛れ込んだ有志の方々に捕まり、採寸後は、小学校に戻って学年裁判。」
と萃。

「牡丹の庭小学校の女子児童を牡丹の庭中学校以外に行かせないように、地域住民の有志が有償で協力?」
と奈美。

「有償協力した地域の有志の方々へ渡った金の出処は、どこだ?」
と透雲。

お金について親から念を押されている透雲は、お金の流れと大人には厳しい目を向ける。

「団地の自治会と小学校のPTA会費から。」
と萃。

「市の施策で、市の補助をもらって団地に入居した家庭は、自治会費の支払いを拒否して団地の自治会に入らなかったんじゃなかった?」
と透雲。

「入っていない。」
と萃。

「他人の出した金で、日当と昼食代を受け取り、他所の子どもを地獄に送り込む獄卒をやるのか。」
と透雲。

「牡丹の庭中学校を狩り場にするための市の施策だったのか?

市の施策を利用して、牡丹の庭中学校を狩り場にしたのか?」
と奈美。

「牡丹の庭中学校の校区は、最初の開発計画に、校区の土地全ての開発が盛り込まれて実現されている。

団地からの転居者が相次いだとき。

近隣に代わりの建物を用意するから仮住まいで、団地の建て替えを待って再入居するという話が持ち上がっている。

牡丹の庭中学校の校区内には土地にあそびの部分がない。

市が提供可能な仮住まいは、牡丹の庭中学校の校区と駅を挟んで反対側、さらに駅からも遠くなるという提案だった。」
と萃。

「小中学生の子どもがいる家庭は、子育てのために住んでいることを理由に引っ越しを拒否した?」
と奈美。

「このときは、子どもが巣立って二人になっている家庭の方が強く転居を拒否した。

再開発は必要かもしれないが、今はまだ必要ない、と。」
と萃。

ああ、人か、人だったか、と透雲は、小さく繰り返した。

「牡丹の庭中学校の校区は、再開発されていないような気がしていたけれど、違ったかも。」
と透雲。

「牡丹の庭中学校の校区のどこを再開発した?」
と奈美。

「牡丹の庭中学校の校区は、建物を取り壊すことなく再開発が進んだ。

再開発されたのは土地ではなく、土地に住まう人。」
と透雲。

奈美、萃、透雲の三人は、会話を止めて考える。

「牡丹の庭中学校の件。」
と奈美。

「うん。」
と透雲。

萃は、黙って奈美に続きを促す。

「牡丹の庭中学校に通う生徒と保護者は、突然の嵐に見舞われ、右往左往して逃げそびれた。」
と奈美。

「市の施策が始まってすぐから転出者が相次いだ時期に一緒に逃げ出し、団結して集団で攻勢に転じる方法もあったけれど、もうその方法は封じられた。」
と萃。

萃は、牡丹の庭中学校の校区の土地の金額が右肩下がりになっていくグラフを示す。

奈美は、グラフを見ながら発言する。

「市の施策で入居してくる人以外が増えきる前に、牡丹の庭中学校の校区から一気に大量に転出を済ませ。

市の施策で入居してきた家庭の子どもしか、牡丹の庭中学校の校区にいない状態にしてしまえば。

牡丹の庭中学校の校区に住まう少女を狙う目論見は、空振りに終わらせることが出来たんじゃない?」
と奈美。

萃は、うん、と頷いている。

一方、透雲は、奈美の見解に賛成していない。

「牡丹の庭中学校の校区にある持ち家のローンを払いながら、新しい生活のための費用を揃えないといけない、と考えて、転出しなかった人が残ったなら。

さらに状況が悪くなるところまでは、とても考えられなかったんじゃないかな。」
と透雲。

「何も考えたくなかった、ということもかもしれない。」
と萃。

「引っ越しをしたらお金が足りなくなると分かっている。

今、何とかなっているから、と決断を先延ばしにして様子を見ようとしていた?」 
と奈美。

「他にも買った土地や建てた家に思い入れがあったから、ということもあるかもしれない。」
と透雲。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...