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拾われた僕
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拾ってくれたのは“平野エミちゃん”
僕をお持ち帰りするなり、風呂場に直行した。
「綺麗に洗ってあげる」
エミちゃんは洗面器の中に僕を置くと頭からシャワーをかけた。僕は本能的に水は嫌いだと感じた。けれど、エミちゃんのすらりとした長い足と、ピンク色のペディキュアに目がクギづけになってしまって、僕はされるがままに身をまかせた。
「これね、一本千円もするシャンプーなんだよ」
エミちゃんは優しく話しけながら泡を落とす。
なぜネコなのだ? なぜオオカミやトラに生まれ変わらなかったんだ。いや、違う。なぜ人間の男じゃない。こんなにも、かわいい女の子と二人きりで風呂場にいるんだぞ。僕は自らの運命を呪った。
「綺麗になったら、ずいぶんイケメン君になったね」
嬉しくなった僕はニャーと礼を言ってエミちゃんの頬を舐めた。
「でも、よくよく見ると、君はとても凛々しい顔立ちをしているね。そうだ、名前は凛太郎くんっていうのはどうかしら?」
りんたろう?!
少々古風な名前だが、僕は凛太郎と呼ばれて嬉しくなった。
「ちょっと古くさい名前かしら。やっぱり、違うのがいい?」
僕は凛太郎がいいと咄嗟に思った。
「ねぇショコラとかはどうかな」
ショコラは……犬っぽくない?
リンタロウがいい、リンタロウがいいと僕は目で訴える。
「やっぱり凛太郎がいいね」
良かった!
エミちゃんはふふと笑いながら僕を抱き寄せた。
「ねぇ凛太郎、お腹すいたよね?」
僕は“うん”と鳴く。
エミちゃんは冷蔵庫を覗いた。女の子の手料理に僕は心躍らせた。しかし、ごそごそするが見つからない。
「どうしよう、何もないわ、あっそうだ。凛太郎はネコだからお魚が好きよね。田舎から送ってきた煮干しがあったんだっけ」
ええ?
僕はお魚はあまり好きじゃない気がした。短パン姿のエミちゃんの足元をそわそわと行ったり来たり。
だが(違うのがいいかも)と、提案してもネコの鳴き声ではさっぱり通じない。エミちゃんは台所の棚を開けると、茶筒の中から煮干しをカランコロンと皿の上に落とした。
「さぁ凛太郎、召し上がれ」
エミちゃんは満面の笑みで僕を見つめる。干からびたミイラみたいな魚に思わず、呻き声を漏らした。鼻をつまみたいのをガマンしながら、煮干しを口に入れる。奥歯でガリッとやった。
(うえぇ、にがあぁぁぁい)
苦さにぺろっと舌を出す。大急ぎで水をぴちゃぴちゃと舐めた。
どんなに腹が減っていようが、これ以上一尾だって無理。渋く光る物体を見ただけで、吐きそうになった。僕は顔をそむけた。
「あれ、凛太郎、もういらないの?」
エミちゃんは不思議そうな顔をする。
「そうか、嫌いなのね。他に何かないかしら」
カウンターにポテトチップスの袋があった。僕は椅子に飛び乗り、そこからカウンターに登るとポテチの袋をガサゴソとひっかく。
「凛太郎、ポテチがいいの?」
うん!
「お腹こわしちゃうよ?」
僕は必死になって爪を立て、袋を開けようとする。とうとう根負けしたエミちゃんは、袋を開けると、煮干しの横にポテチを入れた。
僕はバリバリいわせながらポテチを食べる。味はコンソメ。普段から食べ慣れた味だった。
「お腹こわさなきゃいいけど……」
エミちゃんの心配をよそに、僕はあっという間に平らげる。
満足して眠くなった僕は、寝床を探すためにふらりと隣の部屋へと行った。水色のふりふりの服に目を留めた。
「凛太朗、これはハロウィン用のドレスだから、遊んじゃ駄目よ」エミちゃんはかけてあったドレスをタンスにしまう。その隙に僕は花柄の布団の上に飛び乗った。これはエミちゃんのベッドだ。低反発の枕は収まりがいいうえに、ほのかに高級シャンプーの香りまでする。気持ち良くなった僕は、枕の上でうつらうつらと眠りに落ちた。
僕をお持ち帰りするなり、風呂場に直行した。
「綺麗に洗ってあげる」
エミちゃんは洗面器の中に僕を置くと頭からシャワーをかけた。僕は本能的に水は嫌いだと感じた。けれど、エミちゃんのすらりとした長い足と、ピンク色のペディキュアに目がクギづけになってしまって、僕はされるがままに身をまかせた。
「これね、一本千円もするシャンプーなんだよ」
エミちゃんは優しく話しけながら泡を落とす。
なぜネコなのだ? なぜオオカミやトラに生まれ変わらなかったんだ。いや、違う。なぜ人間の男じゃない。こんなにも、かわいい女の子と二人きりで風呂場にいるんだぞ。僕は自らの運命を呪った。
「綺麗になったら、ずいぶんイケメン君になったね」
嬉しくなった僕はニャーと礼を言ってエミちゃんの頬を舐めた。
「でも、よくよく見ると、君はとても凛々しい顔立ちをしているね。そうだ、名前は凛太郎くんっていうのはどうかしら?」
りんたろう?!
少々古風な名前だが、僕は凛太郎と呼ばれて嬉しくなった。
「ちょっと古くさい名前かしら。やっぱり、違うのがいい?」
僕は凛太郎がいいと咄嗟に思った。
「ねぇショコラとかはどうかな」
ショコラは……犬っぽくない?
リンタロウがいい、リンタロウがいいと僕は目で訴える。
「やっぱり凛太郎がいいね」
良かった!
エミちゃんはふふと笑いながら僕を抱き寄せた。
「ねぇ凛太郎、お腹すいたよね?」
僕は“うん”と鳴く。
エミちゃんは冷蔵庫を覗いた。女の子の手料理に僕は心躍らせた。しかし、ごそごそするが見つからない。
「どうしよう、何もないわ、あっそうだ。凛太郎はネコだからお魚が好きよね。田舎から送ってきた煮干しがあったんだっけ」
ええ?
僕はお魚はあまり好きじゃない気がした。短パン姿のエミちゃんの足元をそわそわと行ったり来たり。
だが(違うのがいいかも)と、提案してもネコの鳴き声ではさっぱり通じない。エミちゃんは台所の棚を開けると、茶筒の中から煮干しをカランコロンと皿の上に落とした。
「さぁ凛太郎、召し上がれ」
エミちゃんは満面の笑みで僕を見つめる。干からびたミイラみたいな魚に思わず、呻き声を漏らした。鼻をつまみたいのをガマンしながら、煮干しを口に入れる。奥歯でガリッとやった。
(うえぇ、にがあぁぁぁい)
苦さにぺろっと舌を出す。大急ぎで水をぴちゃぴちゃと舐めた。
どんなに腹が減っていようが、これ以上一尾だって無理。渋く光る物体を見ただけで、吐きそうになった。僕は顔をそむけた。
「あれ、凛太郎、もういらないの?」
エミちゃんは不思議そうな顔をする。
「そうか、嫌いなのね。他に何かないかしら」
カウンターにポテトチップスの袋があった。僕は椅子に飛び乗り、そこからカウンターに登るとポテチの袋をガサゴソとひっかく。
「凛太郎、ポテチがいいの?」
うん!
「お腹こわしちゃうよ?」
僕は必死になって爪を立て、袋を開けようとする。とうとう根負けしたエミちゃんは、袋を開けると、煮干しの横にポテチを入れた。
僕はバリバリいわせながらポテチを食べる。味はコンソメ。普段から食べ慣れた味だった。
「お腹こわさなきゃいいけど……」
エミちゃんの心配をよそに、僕はあっという間に平らげる。
満足して眠くなった僕は、寝床を探すためにふらりと隣の部屋へと行った。水色のふりふりの服に目を留めた。
「凛太朗、これはハロウィン用のドレスだから、遊んじゃ駄目よ」エミちゃんはかけてあったドレスをタンスにしまう。その隙に僕は花柄の布団の上に飛び乗った。これはエミちゃんのベッドだ。低反発の枕は収まりがいいうえに、ほのかに高級シャンプーの香りまでする。気持ち良くなった僕は、枕の上でうつらうつらと眠りに落ちた。
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