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第二章:サジェット食堂
17話 さくっと!お手軽サンドウィッチ④
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「あ~しまったなあ~どうしようかなあ~」
私は、2日前の失態のカバーを未だできずにいた。
その上、あの店は卵を使っているらしいぞという噂が流れ、あんなに繁盛していた食堂でさえも閑古鳥が鳴いている。
思いがけない形ではあるが、まさかの形でリチャトさんに迷惑をかけてしまうことになり、なんだかやるせない気持ちになる。
そもそも、私は最近になるまで忘れてしまっていたのだ。
この世界はこの世界の食文化があり、それを守らなければならないということを。
リチャトさんがただ、食に対していろいろ経験を積まれていることもあって、私が考案する食材に対してあまり文句を言わなかったという、簡単なことを。
この国が、卵を食すことを嫌がることを。
そんなことも忘れて、調子に乗って自分ならヒット作を連発することができるとうぬぼれてしまっていたのだ。
「リチャトさん。本当にすみませんでした」
先ほどまで座っていた丸椅子が、勢いよく立った影響で悲しくカラカラと音をたてる。
何も言わず、いつも通りの椅子に座り、通りの行きかう人を見つめるだけのリチャトさんは本当に珍しくて、威勢よく立ち上がったのはいいものの、隅っこでおどおどするだけになってしまう。
手持ち無沙汰なのが嫌で、服の裾をぐじぐじといじり時間が経つのを待った。
「ちょっと……働き方を変えてもらおうかねえ」
服の裾がよれてかなりでろんでろんになったころ、リチャトさんはそう呟いた。
「えっと、つまりそれはどういうことですか?」
「当分は新メニューはやめてもらおうかね、不信感が残っているし」
「はい……わかりました」
「あとは……配達を積極的にして、あんたの信用回復につとめな」
「つまり、料理には関わるなってことですか」
「そうだね……あたしもあんたはかわいいが、自分の店が1番この世でかわいくて愛しているから、大切なんだよ」
そう言ったリチャトさんの顔は今まで見たことないほどに切なく、悲しいものだった。
そんな顔を見て私は、何も言えずグッと唇を噛み締める。
「しかし……サンドウィッチ自体はとても美味しかったし、流行るものだと思う」
「え……?」
「だから、最後にサンドウィッチだけは流行らせなさい。これは店主命令、もし、うまくいけば……どうにかしてあげよう、例えばあんたの名前がしれてないところで存分に料理をつくるとか」
「なんで……」
「あんたが料理を作らないのはらしくない、過ごした月日は確かに短いが、そう思うんだ。配達とか、そういうのであんたの時間を浪費させたくない。だから、ほら、まずはサンドウィッチ。はやく作りな」
ほら、ほら、と背中をぐいぐいと押され、厨房に押し込められる。
あれよあれよという間に、食材が私の前に並べられ、手には包丁が握らされた。
「え、や、ちょっと、こんな状態で料理なんて作れないですよ」
「何言ってるんだ?なんであんたが口答えできるんだ、私の店に初めて閑古鳥まで鳴かして。あんたが、この状況をどうにかせずに誰がするんだい」
「でもっ……!」
「馬鹿だねえ、店主の言う通りにしてればなんとかなるんだよ、なんてったってここはあたしの城だからね、ほら、さっさと手を動かす!」
「は、はい!」
半ば強制的に再開させられたサンドウィッチ考案であったが、とにかく手を動かし、頭を働かせる。
釈然としないところは、数えきれないほどあるし、聞きたいこともたくさんあるが、とりあえず今はあとだ。
じんわりと奥から漏れ出てくる涙をすんと啜りながら、ざくりざくりとレタスをちぎった。
私は、2日前の失態のカバーを未だできずにいた。
その上、あの店は卵を使っているらしいぞという噂が流れ、あんなに繁盛していた食堂でさえも閑古鳥が鳴いている。
思いがけない形ではあるが、まさかの形でリチャトさんに迷惑をかけてしまうことになり、なんだかやるせない気持ちになる。
そもそも、私は最近になるまで忘れてしまっていたのだ。
この世界はこの世界の食文化があり、それを守らなければならないということを。
リチャトさんがただ、食に対していろいろ経験を積まれていることもあって、私が考案する食材に対してあまり文句を言わなかったという、簡単なことを。
この国が、卵を食すことを嫌がることを。
そんなことも忘れて、調子に乗って自分ならヒット作を連発することができるとうぬぼれてしまっていたのだ。
「リチャトさん。本当にすみませんでした」
先ほどまで座っていた丸椅子が、勢いよく立った影響で悲しくカラカラと音をたてる。
何も言わず、いつも通りの椅子に座り、通りの行きかう人を見つめるだけのリチャトさんは本当に珍しくて、威勢よく立ち上がったのはいいものの、隅っこでおどおどするだけになってしまう。
手持ち無沙汰なのが嫌で、服の裾をぐじぐじといじり時間が経つのを待った。
「ちょっと……働き方を変えてもらおうかねえ」
服の裾がよれてかなりでろんでろんになったころ、リチャトさんはそう呟いた。
「えっと、つまりそれはどういうことですか?」
「当分は新メニューはやめてもらおうかね、不信感が残っているし」
「はい……わかりました」
「あとは……配達を積極的にして、あんたの信用回復につとめな」
「つまり、料理には関わるなってことですか」
「そうだね……あたしもあんたはかわいいが、自分の店が1番この世でかわいくて愛しているから、大切なんだよ」
そう言ったリチャトさんの顔は今まで見たことないほどに切なく、悲しいものだった。
そんな顔を見て私は、何も言えずグッと唇を噛み締める。
「しかし……サンドウィッチ自体はとても美味しかったし、流行るものだと思う」
「え……?」
「だから、最後にサンドウィッチだけは流行らせなさい。これは店主命令、もし、うまくいけば……どうにかしてあげよう、例えばあんたの名前がしれてないところで存分に料理をつくるとか」
「なんで……」
「あんたが料理を作らないのはらしくない、過ごした月日は確かに短いが、そう思うんだ。配達とか、そういうのであんたの時間を浪費させたくない。だから、ほら、まずはサンドウィッチ。はやく作りな」
ほら、ほら、と背中をぐいぐいと押され、厨房に押し込められる。
あれよあれよという間に、食材が私の前に並べられ、手には包丁が握らされた。
「え、や、ちょっと、こんな状態で料理なんて作れないですよ」
「何言ってるんだ?なんであんたが口答えできるんだ、私の店に初めて閑古鳥まで鳴かして。あんたが、この状況をどうにかせずに誰がするんだい」
「でもっ……!」
「馬鹿だねえ、店主の言う通りにしてればなんとかなるんだよ、なんてったってここはあたしの城だからね、ほら、さっさと手を動かす!」
「は、はい!」
半ば強制的に再開させられたサンドウィッチ考案であったが、とにかく手を動かし、頭を働かせる。
釈然としないところは、数えきれないほどあるし、聞きたいこともたくさんあるが、とりあえず今はあとだ。
じんわりと奥から漏れ出てくる涙をすんと啜りながら、ざくりざくりとレタスをちぎった。
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