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1章
28:全力の殺し合い
しおりを挟むジェネラルとの剣の勝負を勝ち取った俺はさらに気分を高揚させて周りの敵を斬り殺して進む
暫くして魔物の数が少なくなった所でそいつはこちらに向かって来た。残った魔物に囲まれた中から殆ど人間と言っていいヤツが現れた。身長は俺よりも大きいがゴブリンジェネラルほどてはない。体表は緑色でゴブリンの特徴を持っているが顔つきは普通のゴブリンの様に潰れておらず割と整った顔つきに白色の髪。腰には艶のある黒色の鞘に入った細剣。そして、何よりもそいつが纏う雰囲気。
師匠との模擬戦で何度か本気の殺気や闘気を当てられたことがあるが、今出てきたやつは正にそれを放っている。恐らくだがあいつがゴブリンキングなのだろう。そして俺の隣にはいつの間にかソウマが来ており、冒険者達は各々で戦っている。ソウマの手には槍がない。まあ、普通の槍だったのでソウマの攻撃に耐えられなかったのだろう。
「あんたがゴブリンキングか?」
「ああ、俺がゴブリンキング。名をガグと言う。子供ながらにして強者のお前達の名も教えてくれ」
本当に流暢に人間の言葉を喋るな。しかもこいつは戦いに生きる者のようだ。
「俺はクウガです」
「ソウマだ」
「クウガにソウマか。その名、しかと覚えたぞ。では始めるか、命のやり取りを」
ゴブリンキングが発される魔力と闘気が大気を軋ませて悲鳴を上げさせられる。
これは凄まじいね。ソウマとの共闘になりそうだけどそれでも苦戦しそうだ。
「ソウマ」
「ああ、最初から全力だ」
魔力の循環率を上げていく。魔力は血管とは別に体中に張り巡らされた魔力回路を流れている。
身体強化はこの流れている魔力を魔力回路から出してイメージにより身体能力を強化している。練度の低い身体強化なら魔力は消費されてしまうが、高いものであれば魔力回路に戻すことが可能になるので魔力は消費されない。なぜなら、低ければ魔力が放出され空気中に拡散してしまうが高くなれば魔力を留めておくことが可能となりそれを魔力操作によって回路に戻しているのだ。
そして魔力の循環率を上げると、その身体強化や魔術、魔法の効力が上がるのは勿論のこと。さらに身体強化を使っていない状態でも身体能力が上がるのだ。皮膚が衝撃や斬撃に強くなったり骨や筋肉の強度などが上がったりと言った具合に。
循環率が上がったことにより、俺とソウマの周りもゴブリンキングもとい、ガグのように大気が悲鳴をあげる。それと感情の昂りで闘気や殺気も放たれる
「ふっ、その歳にして既にその域に足を踏み込んでいるか!では、そろそろ始めよう!」
ガグから笑いが消えていき、その腰にある細剣を抜く。その剣身は細い、だが柔な印象は受けない。当たり前のように剣からは魔力が感じられる。ガグは左足を引き半身となり細剣をもった右手を胸の前で剣を垂直に立てる。ガグの雰囲気が鋭くなっていく
俺は足を少し開き腰を落とす。アギスは右手に知覚速度の引き下げを行う
そして3人がその場から消え、次の瞬間には中間の辺りでガグが突きを連続で放ちクウガがアギスで逸らす剣戟が始まりクウガがアギスの能力を発動して意表を突きガグの細剣を打ち上げると同時にその場から離脱する。そこへ上からソウマが強襲する。それに対してガグは細剣をソウマに向けると、細剣から風が渦を巻きソウマが飛ばされる。
「ぬおっ!」
どうやらあの細剣は風の属性を持つようだ。それにしても、ガグはやはり強い。突きの戻しが速くて手数が足りなくなりそうだ。手数を増やそう。風が相手なら炎じゃ散らされるから雷かな。
俺はガグへ向けて駆け出しながら左手に雷魔術で刀を作成する。刀とは師匠の前の世界で侍という人達が使っていた斬ることに特化した武器だ。
さらにアギスの重さをゼロにして切り掛かる。
雷刀で切り掛かるとガグは細剣で流そうとしたようだが、止めて回避する。アギスで切り掛かれば、細剣で流され反撃の突きが飛んでくる。アギスは接触する瞬間に重さがとてつもなくなっている筈なのだが流されている。そこにソウマも加わる。ソウマは隙をみては爪に【魔纏】により雷などを纏わせ攻撃したり、魔術を放つ。魔術は俺も使うのだが炎は魔剣の風で散らされ、雷なら向こうも雷の魔術で相殺してくる。
雷刀もアギスも重さはないので軌道を変幻自在に変えて見せるのだが当たらない。雷刀はきっちりと躱しアギスは流される。
そして何度目かのアギスの縦の振り下ろしからの袈裟斬りをガグは流そうとした。俺はここで仕掛ける。触れる瞬間に重さの操作ではなく【魔纏】によって雷をアギスに纏わせたのだ。
「ぐっ!」
電撃による一瞬の硬直。本当に僅かな時間だがそれでも充分な時間だ。雷刀で右手を斬り飛ばし離脱した所へソウマの炎牙が直撃し、破壊の風が吹き荒れ土埃が舞う。
「やったか!?」
ソウマ、それはフラグと言うものだった気が・・・
「フハハハハハ!滾る滾るぞ!」
風が吹き土埃が飛ばされる。そこには右腕を失い、右半身が焼け焦げたガグが高笑いを上げて立っていた
「ここまでやられるとは流石だ。此処からは第2ラウンドだ。ぐ、ぎ、お、おおぉぉぉぉォォォォオオオ!」
ガグが急に苦しみに耐え出したと思ったらそれは段々と雄叫びへと変わり、魔力とは別の何かがガグを覆う。腕を切り落とされた右肩から腕が生える。だが、それは普通の腕では無かった。ガグの胴体よりも太く長さは膝まで伸びている。左腕も同様の変化をし、ガグを覆っていた何かが晴れる。
現れたのは、緑だった体表は黒みが増し巨大化した腕には剣のような鋭さを見せる黒色の毛が腕を覆い、額からは角が生え、黒に黄色の瞳孔だった眼は赤に染まっている。
あの魔力とは違う何かには覚えがある。2年前の巨人になる前に男から感じたものと同じものだ。
「それは何だ」
理性が残っているかの確認も込めてガグに問う
「コレハ、アクマカ、ダ。マオウニ、アタエラレタ、チカラダ」
「俺はそれと同じものを見たことがあるが理性は無かったぞ」
「ソレハ、セイギョ、デキナ、カッタ、ダケ」
次の瞬間、変化したガグが消え、ガグのいた場所は地面が割り砕かれ、俺の横に肥大化した拳を振りかぶった体勢で現れたように見えた。
くそっ!集中切れてた!
俺は咄嗟に【魔力障壁】を5層で構築したが
バリーン!
何もないかのように破られ、俺に拳が迫る。障壁により、ほんの少し遅らせる事が出来たのでアギスを滑り込ませる事に成功する。
ドンッ!
「クウガ!」
俺は吹き飛ばされるも空中で体勢を直し、無事に着地する
「バカ!横!」
俺が殴り飛ばされたことでソウマの注意が一瞬ガグからそれ、その隙にガグは地面を割り砕きソウマの横に移動する。
「うおっ!」
ソウマは何とか飛び上がって回避する。ガグは追い打ちを掛けるようにソウマへ向けて拳を引きながら跳ぶ。ソウマは【空歩】で空中を蹴り、魔力を纏った後ろ回し蹴りで対抗するが呆気なく飛ばされる
俺は雷刀を消し、アギスを両手で持ち右下に構え、炎で剣身を伸ばす。魔力の高まりを察知したガグがこちらに着地と同時に突撃してくる。
俺は【縮地】、朧、光魔術を使い、あたかも俺が3人になったかのように増える。俺が立っていた場所、ガグの右横、後ろに。
ガグはそのまま朧で先程まで立っていた場所に作り出した俺に攻撃し、からぶる。何故ガグほどの奴がからぶったかと言うと、朧で作り出した残像が魔力を纏っていたからだ。魔力とはイメージによって効果を発揮する。朧を使うときに残像が魔力を纏う様にイメージしたのだ。ギュル爺に使った時に簡単に見破られたからギュル爺にばれない様に工夫した結果だ。
ガグはからぶったものの体勢は崩れたが魔術を放ち他の俺を牽制した。
しかし、残っていた2人の俺はそれで消える。
つまりどちらもミラージュで作った偽物ということだ。
そして、俺は光魔術のステルスと魔力を遮断していた障壁を解きガグを逆袈裟で斬りあげた。
ガァァァァァァァ!
ガグの体をアギスが深々と斬り裂き、炎でその身を焼く。
更にそこへ上空から
「はっ!」
ソウマの魔力で覆われた足が回転踵落としで脳天に叩き込まれて頭部は爆散した。
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