Heroic〜龍の力を宿す者〜

Ruto

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1章

30:ソウマの戦い

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この奇襲組のリーダーが何か言っているが今の俺にはあまり頭に入ってこない。大事なことは聞いているけど戦いが近づいていて心が昂ぶっているからかな。

どうやら敵を補足したようだ。俺は少し前から補足していたが。

敵の横から魔術を放つみたいだ。敵に気づかれないように回り込み、リーダーの合図を待つ

「魔術、放てー!」

来た!クウガが爆発系が良いって言ってたからちゃんと爆発つけないとな!

おしっ!いけ!

俺の周りに浮かんだ30個の炎の球が高速で飛んでいき、爆発を起こして敵を吹き飛ばす

俺とクウガの魔術が他の奴らよりも効果があって、騒いでいるみたいだ

まあ、そんなのは気にせずに奇襲をくらってあたふたしてる敵へと駆け出す。クウガとは少し距離を開ける、近すぎすると効率が悪いからな。

槍を両手でしっかりと持ち、引く。【魔纏】の応用で槍に風を纏わせ、正面のゴブリン共目掛けて突き出す。槍に纏わせていた風が突きと共に解放され、風が荒れ狂いゴブリン共を斬り裂き吹き飛ばしていく。

「まだまだ行くぜー!」

槍を素早く引き戻し、今度は炎を纏わせる。そして先程とは違い突くのではなく薙ぎ払うようにして横薙ぎにする。炎はゴブリン達へ迫る波と化し、触れた者から焼き殺していく。結構やったが、まだまだいるみたいだ。

「なら次はこれだ!」

槍を腰溜めに構えて近くのゴブリン、近いと言っても先程かなり倒したから普通に10m以上は距離があるが、狙いを付けて槍の穂先に雷を宿し突きを繰り出す。ビュン!と突きに合わせて槍の穂先をかたどった雷が飛んで行き、狙い違わずゴブリンの頭に命中し爆散する。これを連続で放ち、数を減らしていく。時折敵の後方から弓やら魔術やらが飛んでくるが全部撃ち落とす。

途中から冒険者達も加わりゴブリン、ゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジの掃討は完了した

続けてボブゴブリンにソードオーガ、ミノタウロスがこちらに向かってくる。

突撃だ!と意気込んで駆け出そうとしたらクウガから静止の声が掛かる

「ソウマ!ブレスやるから少し待って!」

え?まじで?

そう思って少しボケっとしている内に準備が完了したようだ。やばい!

「みんな耳塞いで!」

自分の耳を塞ぎながら冒険者に声をかける。力を見せたからだろう、素直にみんな従ってくれた

ガアァァァァァァァ!

クウガの変化した口からブレスが放たれこちらに向かってきていた半分を消し炭にした。

ははは、やっぱりあれとんでもねぇよな
なら俺もいっちょやったりますか!

「残りは俺に任せろ!」

声を出しながら槍を仕舞い、両手を胸の前に少し距離を開けて構え、魔術を行使する。左手には風の球、右手には炎の球。その2つを近づけていき、混ぜ合わせて1つの球体にする。俺はクウガみたいに【属性合成】のスキルは取れなかったから色々考えた結果生み出したのがこれだ。2つの属性を1度に行使してそれを混ぜる。最初はこれで【属性合成】が取れることを期待してたんだが取れなかった。まあ、それでもこれはこれで強いんだけどな。

風と炎を内包した球体を敵中央に撃ち出す。敵中央に到達するまでは球状を維持していたが、中央に到達するとその内包したエネルギーを爆発させた。

ヒュッ  ビュォォォォ!

炎の風と言える物が吹き荒れ、それが晴れたところには何もなく、ただ少し焦げたような地面があるのみ。うん、上出来だろ!

「お、さっきのってこないだ考えたやつだよね?」

「おう!属性合成とは違う相乗効果を狙っての魔術は成功だぜ」

お、後ろの冒険者達は呆然としてんな~

冒険者達を見てそんな事を思っていると残りの魔物がこちらに突撃してきた。

「ソウマ、行くよ」

「おうよ!」

そろそろ雑魚掃除は飽きてきたから強いやつとやりてぇな~、とそんなことを考えながらクウガに続いて駆け出す。ここでも最初と同様に少し距離を開けて別々の場所に突っ込んでいき、切り崩していく。

ゴブリンアーミーの槍持ちが待ち構えているがそんなのに付き合ってやる必要はない。槍をしっかりと構え体全体に雷を纏う。雷で身体能力を上げ、さらに足裏から風が噴射するイメージでの魔術を行使して、俺自身が一条の槍と化して敵に突撃する。ブウン!と音がして周りの景色を置き去りに俺は魔物共を蹴散らしながら突き進む。

そのままの勢いでかなりの魔物を蹴散らして止まると横合いから攻撃がきたので魔力で覆った槍で受ける

ドゴンッ!

物凄い力を受けたのでその衝撃を地面に流すが、地面はクレーター状に陥没してしまった。

「いいね~、強いやつを待ってたんだよ!」

槌を受け止めていた槍を押し返して敵を弾く。弾かれた敵は無事に着地をし、こちらを見据えてくる。重厚な全身鎧を着て、両手に槌を持っていて、腕は丸太くらいあんじゃねえかな

「おら!行くぜ!」

【縮地】によって空いていた間合いをゼロにして槍を連続で突き出す。だが、敵はそれを避ける避ける避ける。あんな重そうな鎧着て途轍もない身軽さだな。そして、反撃の槌が振り下ろされる。槍を横から当て軌道をずらして対処する。さらにもう片方の手に持っていた槌を繰り出してくる。今度は横薙ぎだ。さっきくらった感じだと膂力がとんでもねぇから普通にやったら飛ばされちまうな。そう考えてその場で1回転して槍を槌に叩きつけて俺も魔物も弾かれる。

「ツヨイ、ナ」

「喋ってる暇なんか与えねぇぜ」

風でいくか。槍に風を纏わせて突きを繰り出す。風を纏ったことで攻撃範囲が上がり、敵は大きく回避しなければならなくなった。そして何度目かの回避で風を避けきれずバランスを崩した

「はっ!」

「ムンッ!」

その隙を突くために放った俺の槍と奴が迎え撃つ為に放った槌が衝突する。

ドンッ! バキン!

槍の穂先に風を集中させていたのが駄目だったのか、それとも普通の槍だったからか、俺の持つ槍の穂先が砕け散ってしまった。そして衝撃でまた両者が吹き飛び距離が開く。

あちゃー、槍壊れちまったよ。今度はもっといいやつ買うかね。

穂先がなくなった槍を捨て、足を軽く開き腰を少し落とす。腕は変化で爪を出してダラんと下げる。俺が爪を主体とするときの構えだ。

敵は槌をひとつ捨てた。どうやら先程の衝突で向こうの武器にも被害があったようだ。残った槌を両手で構え突っ込んできた。

おそらく、両手で持ったことで先程までとは破壊力は桁違いだろう。だが、俺の爪を使うスタイルはスピードで攻めるのだ。もう既に破壊力など関係ない!

敵はフェイントも何もなく、突っ込んできたまま槌を振り下ろしてきた。俺はそれを引き下げた知覚でしっかりと捉えて槌を紙一重で躱し、すれ違いざまに爪を一閃した

敵、ゴブリンジェネラルは槌を地面に打ち付ける前に体がバラバラになって崩れ落ちた。

いや~、やっぱり雑魚とは違うな!課題は新しい槍かな。ん?なんかもっとすげぇの来たな。クウガのとこに向かうか

すこし離れた所に立っていたクウガの所に向かう。そして残った100ほどの魔物の中からこちらに強いやつが歩いてきていた。

すげぇ殺気だ。あんなん浴びたら心が躍っちまうじゃねぇか。

「あんたがゴブリンキングか?」

クウガが問う

「ああ、俺がゴブリンキング。名をガグと言う。子供ながらにして強者のお前達の名も教えてくれ」

普通に人の言葉喋ってんなこいつ。頭良さそ

「俺はクウガです」

「ソウマだ」

「クウガにソウマか。その名、しかと覚えたぞ。では始めるか、命のやり取りを」

そう言うとキングから感じられる威圧感が増していく。こいつ、循環率上げれるのかよ。とんでもねぇな。

敵の実力を感じ取り自然と口端が釣り上がる。

「ソウマ」

「ああ、最初から全力だ」

俺達も、魔力の循環率を上げていく。

「ふっ、その歳で既にその域に足を踏み込んでいるか!ではそろそろ始めよう」

ガグが腰に差していた細剣を抜いて構えを取る。俺とクウガも構えを取る。クウガとの共闘なら俺はただ速く動き、隙を逃さねぇことを考えねぇと。恐らく2人が剣戟を躱すはずだ。意表をつくには

その場から3人が消え、クウガとガグの剣戟が始まる。俺は宙にでて、【空歩】で移動しながら隙を窺う。クウガがアギスの能力で剣を打ち上げ離脱する。そのクウガの生み出した隙を逃さないように空中からガグへ突撃する。しかし、ガグの剣から渦巻く風が生み出され飛ばされてしまう。

「ぬおっ!」

まじかよ、いいの持ってんな~

あれがあるなら空中からじゃ駄目だな。近くでクウガと一緒に仕掛けよう

クウガとガグが再び始めた剣戟の渦中に近づき、俺も参加していく。魔術で攻撃すると当たり前のように相殺の魔術が放たれる。

うへー、俺もまだあんま出来ねぇのに。もっと頑張らんとな~

そんなことを思いながらもしっかり攻撃は続ける。隙をみては爪やら魔術やらで攻撃を繰り出すが掠りもしない。

ん?クウガ、何かしようとしてるな。ならでかい奴の準備しとくか。

クウガが何かをしようとしているのを感じたので一旦離れ、炎牙の準備をする。少し、右足を後ろに引き炎を纏わせていく。もっとだもっと。纏わせた炎を更にグリーヴの刃へと集中させる。

そこで、クウガが仕掛けた。雷魔術で生み出した刀を警戒させておいてアギスに打ち合う瞬間雷を纏わせたのだ。かなり器用なことをする奴だ。

クウガが雷刀でガグの右腕を斬り飛ばしたのに続いて俺も攻撃する

「炎牙!」

引いていた右足を思いっきり振り上げ、炎の刃を繰り出し、当たると衝撃で風が吹き荒れ砂を巻き上げる。

「やったか!?」

父さんから聞いて、言ってみたかったことを言ってみた。フラグって言うんだって。これを言えばまだ戦えるんだって!すげぇよな!

「フハハハハハ!滾る滾るぞ!」

おー!フラグってすげー!

「ここまでやられるとは流石だ。此処からは第2ラウンドだ。ぐ、ぎ、お、おおぉぉぉぉォォォォオオオ!」

なんか前やった巨人に変化した時みたいな感じだな。ま、大事なのはさっきよりも強くなってんのかどうかだよな

「それは何だ」

「コレハ、アクマカ、ダ。マオウニ、アタエラレタ、チカラダ」

「俺はそれと同じものを見たことあるが理性は無かったぞ」

あ、やっぱりあの時の巨人と同じなんか

「ソレハ、セイギョ、デキナ、カッタ、ダケ」

何かペラペラ喋ってくれるやつだな~、なんて思ってたらガグがその場から消えたかのように見えるほどの速さでクウガの横に移動した。

クウガはかろうじて防御したようだが吹き飛ばされてしまった

「クウガ!」

思わずクウガが心配になり、敵から注意を一瞬怠ってしまった。

「バカ!横!」

「うおっ!」

クウガの声で気配を横から感じて飛び上がって回避する。ガグは追撃を放ってくる。避けられないが、まともに受けたらやばいと思い、【空歩】で何もない宙を蹴り、後ろ回し蹴りで迎え撃つ。しかし、呆気なく吹き飛ばされる。しかもガグの腕力はとんでもなく、少しだが受け流しきれずダメージをくらい、かなりの上空に飛ばされてしまう。

ああ、もうこのまま攻撃する。落下の勢いに回転して踵落としだな!

早速回転を始める。下ではクウガが仕掛けていた。それはギュル爺から1本をとった攻撃だった。

斬り裂いた所に俺の超回転踵落としを決めてやらぁ

回る、足を畳み、落下しながら回転する。

ガァァァァァァァ!

クウガがガグを斬り裂いたところで俺が超回転踵落としを頭部に叩き込む。

「はっ!」

バァーン!

ガグの頭部が爆散し、体が仰向けに倒れた。

いや、回りすぎた。気持ち悪い。

「ソウマ何してんの?」

吐き気をこらえながらクウガに返事を返す。こんな所で回転しすぎたなんてダサい理由で吐きたくねぇ!

「な、なんでもねぇよ。それより、残りの魔物は他の人に任せて上の叩こう」

「わかった。じゃあ、俺が最初行くから逃げ出したやつ頼める?あと情報聞いてから殺してね」

「おけおけ」

半分聞いてなかったが返事をしといた。クウガは翼を出して空に飛んでいく。

俺も翼欲しいかも
お、早速逃げ出したな。じゃあ、行くか。

【空歩】で空を蹴り、上昇して逃亡者の前に出る

「逃さねぇよ」

「うるさい!そこを退けー!」

なんか、糞隙だらけなんだけど。

「はいはい、お疲れ」

繰り出された剣を片手で受け止めて爪で首を飛ばして終わり。弱くね?

ワイバーンも攻撃してきたので顔の横から蹴りを入れて頭吹き飛ばして終了。

うん、弱いね。クウガの方が楽しそうだ。先に地上戻っとこ。

俺が地上に戻って少ししてクウガも来た。

「お、そっちも終わったか」

「うん。ソウマ、ちゃんと情報聞き出した?」

「え?」

クウガの口から思わぬことが飛び出し、固まってしまう。あれ、そんなん言われたっけ?

「え、まさかソウマ。何も聞き出さずに殺しちゃったの!?」

やっべー、取り敢えず何か言わんと

「え、えっとさ、お前の方で聞き出すんじゃなかったっけ?」

あ、顔が怒ってる。しまった~

「ソウマにお願いって俺は言ったよ!」

「はい、ごめんなさい」

やらかした

「まあ、次からは気をつけてよ?多分、今回は師匠の方で何か調べてくれてると思うから」

「おう…」

次は気をつけよう。てか、新しい槍欲しい。
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