Heroic〜龍の力を宿す者〜

Ruto

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1章

31:冒険者達の戦い

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ギィン!

ゴブリンの棍棒を剣で弾き、胴を横薙ぎにしてゴブリンの身体を2つに分ける。

「孤立して囲まれないようにしろ!パーティごとで連携を取れ!」

周りを確認しながら指示を出す。

当初の予定では魔術での奇襲のあと、散発的な攻撃を街まで繰り返して少なくても良いから数を減らす予定だったんだけどな。

あの力は想定外すぎるな。

冒険者の一団とは離れた所で風やら炎やらゴブリンやらが吹き飛んでいる。あそこでとんでもない力を発揮して暴れているのはまだ9歳の子供だ。この目で目にしなければとても信じれるものではない。しかし、今現在この目で見ているのだ信じないなどという愚行はしない。これでもベテランの中でも腕が立つと言われるランクAの冒険者だ。歳もそれなりにくっているかれ才能やら何やらも割り切っているつもりだ。だが、割り切ってはいても何もしないでいられるわけではない。 自分の子供と年齢は近いのだそんな奴らに全てを任せたのでは情けないことこの上ない。

「クウガやソウマの方にも近づきすぎるな!巻き込まれるし邪魔になっちまうからな!」

指示を出しながらもゴブリンを斬って減らしていく。

ここに来て奇襲組のリーダーであるこの男は感じていた。これはこのまま相手を追い返すことが出来るのではないかと。

それ程までにクウガとソウマの力は凄いのだ。確かに、ゴブリン程度であれば自分もあれに似たようなことは可能だが、数が問題となるし、なによりもまだ敵は多いのだ。それなのに2人は余裕そうだ、表情からそれが読み取れる。

それから10分かそこらで、ゴブリン、ゴブリンアーチャー、ゴブリンメイジは全滅した。

「怪我人は離脱しろ!回復すれば大丈夫なやつはすぐに回復して準備を整えろ!」

指示を出しつつ警戒していると敵に新たな動きがあった。敵陣からボブゴブリン、ソードオーガ、ミノタウロスがこちらにきているのだ。ゴブリンはFランクで農民が鍬などで撃退が可能なレベル。しかしこれは単体の場合で数が増えればランクは上昇する。ボブゴブリンはDランクで農民では太刀打ち出来ないレベル。理由は武器を武器として使えるようになるからだ。ソードオーガはオーガの系統に属しているが、オーガがDランクなのに対してランクはAだ。腕の鎌のような刃は鋭利で、普通のオーガよりも動きが速い。ミノタウロスは単純な膂力が半端ではない。こいつはBランク。

こいつはマズイな。今の戦力では全滅してしまう。そう考え撤退の指示を出そうとした時、途轍も無い魔力の高まりと共にソウマの声が響き渡る

「みんな耳塞いで!」

一瞬疑問に思ったが、ソウマの妙に焦りを含んだ声音から何かあるのだと察して直ぐに耳を塞ぐ。そして、その数瞬後

ガアァァァァァァァ!

咆哮と共にクウガがブレスを放った。

俺はその爆風に目を逸らしてしまったが、そのブレスが通った所にいた魔物は炭化していた。こちらに迫ってきていた魔物の半分程だ。

まじかよ、どんな威力だよ。しかもクウガの顔が変わってるのは変化系のスキルか?獣人でも割とレアなスキルって聞いた気がするぞ。そんなことを考えているとさらに

「残りは俺に任せろ!」

ソウマが大声で言い、槍を仕舞うと。またしても魔力の高まりを感じた。

ソウマは両手を胸の前に翳して2つの属性の球を生み出し、一緒にして敵に向けて放った。

炎と風を内包した球体は残った敵の中央で弾け、残っていた魔物もいなくなってしまった。

2属性の同時行使にも驚いたが、それを混ぜて放つのもびっくりだが、何よりもその威力だ。2人揃ってとんでもないな。

だが今は有難いことだ。もう既に敵は少ない、このまま行けば全滅させることも出来るかもしれない。しかも怪我をした者は出ているが死者は出ていないのだ。

俺達が2人の放った攻撃に惚けている間に2人は残りの魔物に駆けて行ってしまった。

「俺たちも行くぞ!続けー!」

「「「「「「「「おおー!!!」」」」」」」」

クウガとソウマが戦闘を始めるのに少し遅れて俺らも攻撃を開始する。敵はゴブリンアーミー、ランクはCだ。ゴブリンアーミーがいるならジェネラルもいるだろう。気を引き締めねば。

「魔術、弓、放てー!」

俺の指示のもと、魔術が敵へ降り注ぐ。

「壁役は前進!」

盾を持った敵の攻撃を受け持つ壁役を前進させる。壁役が攻撃を弾いた所を後ろに控えていた攻撃役が剣や槍を繰り出し、敵を屠っていく。

クウガとソウマがここでも敵を大部分蹴散らしてくれているので俺たちの担当は少ない。だが、まあ苦戦と言うのは免れないものなんだな。

俺達の前にアーミーとは別格の雰囲気を持つ金属の鎧で所々をカバーした槍持ちのゴブリンが現れた。装備、雰囲気、そして知性を宿す目から分かる。こいつがジェネラルだ。しかも今まで戦ったことのあるジェネラルよりも感じられる威圧感が強い!

「全員3組に別れろ!1組は休憩!1組は周りのアーミーを!もう1組はこいつの相手だ!」

100人を3組に分けて応戦する。俺は勿論ジェネラルの相手だ。

「でかい魔術の詠唱を始めろ!妨害系の魔術も頼んだぞ!壁役は踏ん張れ!攻撃役は隙を見て攻撃を叩き込め!」

「「「「「「「「おう!」」」」」」」」

指示を出してジェネラルとの交戦を開始する。




ドンッ!「ぐあっ!」

ジェネラルの槍を受けた壁役の1人が盾を破壊されながら吹き飛んでいく。攻撃をした後のジェネラルに魔術が殺到するが、槍を振るい魔力の斬撃を飛ばして散らされる。散らされなかった僅かな魔術が命中するも、堪えた気配はない。そこに数人の冒険者が攻撃を仕掛ける

「クラッシュ!」

「ファイアソード!」

「二連突き!」

各々の武技を繰り出しジェネラルに仕掛ける。しかし、それは全て有効打とはならない。クラッシュは避けられ、ファイアソードは魔力を纏った槍に弾かれ、二連突きなど突きで返され槍が破壊されている。

あんなスキルアシスト頼みの武技の使い方ではあのジェネラルに傷をつけることなど出来はしない。早急に手を打つべきか

ジェネラルとの戦いは苛烈を極めた。壁役の者達が数人しかジェネラルの攻撃に耐えられなかったのだ。一撃をくらうと大きく飛ばされて戦線から離されてしまうのだ。さらに、強力な魔術を撃とうとしている魔術士を邪魔してくるのだ。速攻系の魔術を敵が行使して。それもとても的確に、小さい力で最大の成果を上げるのだ。攻撃も華麗に槍を駆使して逸らされ、弾かれ、反撃が飛んでくる。その攻撃によって腕を吹き飛ばされたり、重大な怪我を負って離脱する者が増えていく。それでも組を入れ替えながら、少しでもダメージを与えていく。

壁役が攻撃を受け止めて動きが止まったジェネラルに攻撃を仕掛ける。上からの振り下ろしが槍で防がれるが、止まることなく剣を振るい攻撃を続ける。斜め下から掬い上げ、敵の目を狙った突き、横薙ぎ、袈裟斬り、たまに擦り傷を与えるくらいだが、続けていく。そして、横薙ぎをジェネラルが躱したところで体勢を崩した!ジェネラルの後退に合わせて土魔術で足を引っ掛けたのだ。素晴らしい技量とタイミングだ!

俺はその隙を逃さず、強く一歩を踏み込み魔力の消費を上げて身体強化を強め武技スラッシュを念じて発動する。武技を発動したことでスキルアシストが働き、動きが引っ張られる。その引っ張られる力に任せるだけでなく、その動きを生かすように腰の捻り、手首の力の入れ具合を自分で加える。これがスキルアシストを有効に使い武技をしっかりと使えていることになる。スラッシュは武技の中でも初歩中の初歩だ。だが、初歩だからと侮っていいものではない。武技は使い手次第なのだ。

スラッシュにより威力とスピードを高められた斬撃がジェネラルの首へ迫る。だが、ジェネラルは己の右から迫る刃に槍では間に合わないとして右手を盾にする。右手の御蔭で避ける時間が稼がれ首は無事だ。そして、追撃を背後から掛けてきた冒険者へ見ずに槍を振るい吹き飛ばす。冒険者はガードが間に合ったようで無事に着地する。

前線から一度引きながらジェネラルについて考える。やっぱり、ジェネラルにしては強すぎるだろ。俺が戦ったことのあるやつ全然強さがちげぇ。技量も判断力も力も、どれをとっても普通のゴブリンジェネラルよりも強い。

だが、そんなに強くても1体だ。傷も増えてきている。このまま押し切るんだ。

「攻撃は効いてる!このまま続けて行くんだ!」

指示を出して俺も再度攻撃を加えるために前線に戻る。




激闘の末、サンダーランスがゴブリンジェネラルの胸を貫き倒すことに成功した。しかし、敵はまだ残っているので戦闘は終わっていない。敵に退くつもりはないようだ。そして、残った敵の集団から一体の魔物が前に出てきた。その魔物を見た瞬間、俺は冷や汗がどばっと噴き出したように感じられた。そいつの放つ殺気が先程のジェネラルなど比べ物にならない程だったのだ。よく見れば少なくない冒険者がへたり込んでしまっている。無理も無いことだろう。Aランクである俺でも膝が笑ってしまっているのだ。

魔物の見た目から言っておそらくゴブリンキングなのだろう。キングは集団から離れ、少しの場所で止まった。誰かと対峙しているようだ。考えるまでもないがクウガとソウマだ。2人も相当な実力を持っているがあんな化け物に勝てるのだろうか?

キングと2人が言葉を交わしているようだ。声は遠くて聞き取れない。そして、会話が終わったかと思ったらクウガとソウマから感じられる圧力が変わった。その圧力はキングにも引けを取っていないかもしれん。キングの声と共に3者はその場から消えクウガとキングが斬り合いを始めた。

俺にはその動きが捉えられなかった。消えたと思ったら居て、剣戟が始まっていたのだ。剣が目で追えない。

クウガのことは前から知っていた。俺がお世話になっている鍛冶屋のラウルさんの息子だという事で何回か見たことがある。それが4年くらい前だったか、ラウルさんの奥さんが魔王軍の襲撃の時に亡くなってから一時見なくなった。そして、今回の奇襲組にあいつらが来てクウガが噂のとんでもないやつだと知った。4年前は何てことはない唯の子供にしか見えなかった。それが4年だけで俺は越されてしまったようだ。しかもあの剣には見覚えがある。剣を使う身として憧れた《剣鬼》が使っていた宝具アギスだ。一度戦場で《剣鬼》が使っているところを見れたことがあったから間違いはない。クウガは《剣鬼》の弟子なのか?

そんなことを考えているとキングの持つレイピアを上に弾き離脱した。するとソウマが空から降ってきた。何だって空から降ってくるんだよ。あいつ狼系の獣人だろ?

ソウマが攻撃を仕掛けたがキングのレイピアから風が巻き上がりソウマを吹き飛ばす。キングの持つレイピアは魔剣のようだ。そしてまたクウガとの剣戟が始まる。だが、先程とは違いクウガのやつは2つの劍を振るっている。片方はもちろんアギスだが、もう片方は全体が黄色で時折電撃が剣身を走っているように見える。魔術で作ったってのか?なんかもう色々なことが起きすぎてわからん

剣戟が続いていたのだが、キングの動きが一瞬止まり、クウガが右腕を肩から斬り飛ばした。

「おお!」

「すげぇ!」

「いけぇ!」

周りで戦闘は既に起こっていない。冒険者から歓声が上がる。

右腕を飛ばされたキングにソウマからの追撃が決まり、倒したかに思われたが土埃が晴れるとキングは生きており、異形の姿へと変化した。クウガ達の活躍により緊張が無くなっていたが。最初にキングを見た時よりも強い圧力を浴びて座り込んでしまった。

さらに、クウガが吹き飛ばされた。俺の目には最早、見えていなかったのでクウガが着地したとこを見て、推測したにすぎない。変化したゴブリンキングはソウマをも殴り飛ばした。俺は2人がやられることで絶望に支配された。俺よりも強い2人が太刀打ち出来ないのだ、死は確定したものと思われた。

だが、クウガが剣を構え剣に炎が纏わり付いて何かをしようとしているのが分かり希望が芽生える。そして、クウガが3人に増えた。何をしたのかは判らない。だけどクウガが仕掛けたのだ。キングが1人のクウガを殴るとそのクウガは消えた。確かとんでもない速さで動いて作れる残像と呼ばれるものだった気がする。キングは続けて魔術で残りの2人を攻撃した。これじゃあ攻撃が!と俺が思ったのも束の間、クウガが何もなかった空間から現れ、劍を振り上げキングを斬り裂いたのだ!さらに!殴り飛ばされたソウマが上空から回転して踵落としをキングの頭へと繰り出し爆散させた。キングは斬られ、頭を失い後ろに倒れていく。

これからもさらに強くなり、名声を得て、伝説を残すだろう2人の子供

その伝説の1ページを俺は目撃したのだ。
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