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2章
54:剣術の授業
しおりを挟む演習場は本校舎の外、少し離れた場所にある。風紀委員会本部から本校舎の出入り口に移動し、同じ演習場に向かうだろう生徒達の視線に晒されながら演習場へ向かった
剣術の講義を行う第1演習場に着いた。集まった生徒の数は500人は居るだろうか、武科の生徒は2000名だった筈なので4分の1が居ることになる。それでも演習場にはかなり余裕がある。まあ、入ってすぐのところで固まっているので広さは今は関係ないが
生徒は各々で固まって喋ったり、ワクワクしているのが分かるほどソワソワしていたり、1人で静かに待つ者などなどその様子は様々だ。
と観察して見たが、俺も1人。つまりはボッチだ。
クラスで剣術を取っている人は居らず、知り合いもいない為だ。メアリーさんが剣を使えると言っていたが選択科目はナキアさんと同じにしたために剣術は取っていないらしい。
こんなことならソウマを無理やりでも一緒にすれば良かったかもしれない。というかソウマと同じ槍術にしとけば良かったかも。
前は槍術を学園にて習う予定だったのだが、俺の使う長物がパルチザンに決まり、槍の様に突くというよりも剣の様に斬ることの方に主眼が置かれた武器だから槍術を習う必要性が無くなった。それと学園に入るまでの間にある人に槍術の指南をソウマと共に受けたのでそもそも必要が無かったのだが、既に教えてもらったことで完璧に学園で習う必要が無くなったのだ
というか、なんか俺の周りが空白地帯になってるんだけど。どういう事?生徒はみな客席ではなく、フィールドにいる。その中で俺は壁際に寄り掛かって眼を閉じている。そして、そんな俺を中心にして半円を描く様に空白となっている。もしかして臭いのか!?いや、そんなことはない筈だ。体は浴場でしっかりと洗って入るし、なによりルルが何も言わない。なら臭いという事はない筈なのだがなんだ?この腕につけた風紀委員会の腕章か?腕章は風紀委員会本部を出る前に渡された物で、これを付けて風紀委員会所属と証明するらしい。
なんか他の生徒同士で話してるけど皆んなでざわざわしてて分からない。集中すればどうってことないが、わざわざする気も起きないのでもういいや
ソウマがいたらこの不可思議現象も解るんだろうけどな~。あいつは人の、というよりは他人の考えを読んだり雰囲気を理解したりといったことが得意なのだ。ちなみに俺は苦手
しばしの間そんな状態で待ち、時間になったのだろうパンパン!っという手を叩く音と共に声が掛かった
「よーし、時間だ。俺は剣術の担当のバルザオムだ。呼ぶときはバル先生でいいぞ~」
とても野太い声でそんな言葉が発せられた。姿は沢山いる生徒で見えない
「一先ずクラスごとで整列しろ。順番はどうでもいいが20人並んだら次の列を作れ。こっちがFだ」
他の生徒達が動き始めるたので俺も移動する。と言っても1人だし、恥に移動するだけなので特に問題はない。
と思っていたら足が横からニュッと俺を引っ掛ける様にして出された。出してきたのは見た目から自信に満ち溢れており、此方を見下した様な目をした少しガタイのいい男子。仕掛けてきたやつを確認して戦って楽しめそうでも無かったのでヒョイと軽く避けて何事もなかったかの様に自分の場所に向かった
背後から俺に対する憤りを込められた視線が感じられたが無視して進んだ。体の身のこなしがなってないし、何かこう強さって物を勘違いしてそうな奴だった
Aクラスの列を越えて1人Sクラスの場所に立つ。すると先程の声の主が確認できた。今もあの野太い声で指示を出していた。その後ろには10人以上の此方も教師と思われる人たちが控えていた
その人は立派な鬣と鍛え抜かれた肉体を持つ獅子の獣人の男性だ。獅子の尻尾と耳で顔は普通に人の顔だ。背には身の丈と同じくらいの刃引きのされた剣幅がかなりある大剣。
学園で俺が出会った教師の中では3番目の強さを持っている。因みに言っておくと1番は学園長。2番はサラちゃんだ。
冒険者のランクに当てはめれば最低でもSの実力はある事だろう。
この学園の教師でお年を召した学園長などのご老人なら冒険者としては既に活動だったりはしていない。生産職ならば別。しかし、まだ年齢の若い先生方で怪我をしたりしていない先生は現役の冒険者だ。
見た感じ彼には欠損などの怪我は見られないので内部に何か問題が無ければ現役の冒険者だろう。騎士では無さそうだ。
「よし、並んだな。それじゃあ今から剣術科目の説明に入る」
そう言って説明を始めた
説明を纏めると、行う事はクラス別。下の方のクラスは素振りや体力筋力作り、幾つかある剣の流派を選んで型の稽古などをする。S、A、Bのクラスはひたすら模擬戦らしい。生徒同士と先生対生徒でやるそうだ。上のクラスの者でも希望すれば体力作りの走り込みや型の稽古にも参加できるそうだ。
「それじゃあ、早速授業を始めて行くぞ。それぞれの担当の先生の話をよく聞くように」
バル先生は全体にそう言って此方に来る。まあ、ここにいる先生達の中で1番の実力者っぽいからそうだろうとは思っていたけど。
「お前らの担当は俺だ。今回は最初という事で好きなやつと組んで模擬戦を順番にやってっていく。次回からは今回のを俺が判断して組み合わせを決めていくからな」
そうバル先生が言えば、どんどんとペアが決まっていく。相変わらず俺の周りには誰も近寄ってこないな~嫌われてんのかな~とか思っていると先程、足を引っ掛けようとした奴が俺の方にやってきた
「おい、銀髪!俺と戦え!」
俺を指差してそう言い放ってきた。
うーん。正直に言えば弱そうだしめんどくさい。しかし、ペアがいないという事実。仕方ないか、今回は此奴にしておこう。
「いいよ、その勝負受けて立つよ」
不敵に笑いながら返事を返してやると。顔を真っ赤にしながら
「そのすかした顔が気にいらねぇ!先生!俺達からやらして下さい!」
少し煽っただけでああなったので沸点ひくいなと思ったが先生に敬語を使っているので冷静でなくなったわけではないようだ。
「まあ、いいが。本当にやるのか?」
「当たり前でしょう!あんな奴ソッコーで叩きのめしてやりますよ!」
どこからその自信が湧いてくるんだろうかね
「はぁ、んじゃやって良いぞ。剣はそこにあるから好きなやつを使え」
バル先生は溜め息をつき訓練用の剣を入れた箱を指し示す。お互いに剣を持ち皆の前に出て対峙する
「あっと、始める前に1つ。戦う前には自分の名前を言うように」
「クウガ」
「オストロ」
「んじゃ、双方準備は良いな?始め!」
先生の合図で始まると同時にダンッという音をだしてオストロが距離を詰めてくる。しかし、遅い。まあ、最初の方は攻撃させてあげよう。
「おらおらおらおら!」
上段からの振り下ろしを左に少し移動する事で躱す。ここで既に大きな隙があった、が攻撃しない。振り下ろした剣の勢いを殺しきれず少し次の攻撃が遅くなる。ここでも隙。下から逆袈裟での振り上げ。剣速が遅い。後ろに下がる事で回避。向こうは今ので腕が伸びきってしまっている。本当に隙だらけだ。勝負を挑んでくるのだから強さは感じられなくとも多少は期待していたのだがやはり振り回すという剣を扱うという事を考えていない。オーガやオークなどの武器を使う魔物と同程度だ。なんなら魔物のが膂力などが高いので強い。
その後も少し様子見をしていると
「なんだよ、ぜぇ、守るだけで、ぜぇ、精一杯かよ。Sクラスなんてこんなもんかよ」
お前は疲れすぎだろう。そんなんだったら直ぐに死ぬぞ。体力作りからやり直すべきだな。彼我の実力差もわかっていないみたいだし。というかもうめんどくさいだけだから終わらせよう
と思っていたら武技を使ってきた
「十字斬!」
剣身が赤く光り先程よりも剣速が上がって上と右から十字を描くように剣が襲いかかる。実際に剣は振り下ろされているが横からは赤い光しかない。だがこれが武技による効果でちゃんとした攻撃で普通に剣で斬られるのと同じ効果を発揮する。
まあ、武技の補助に頼りきりで腰も入ってなければ剣筋がブレており半分も威力を発揮していない。
こんなものか。こいつのレベルで最初に出てきた位置から推測しておそらくAの下位。うーん。この剣術の授業は失敗だったかも
そんな事を考えながら、最小限だけ後ろに下がり剣が俺の前を通り過ぎる。で隙だらけになったところで開いた距離を1歩で詰め、剣を首目掛けて横一閃。刃引きされていようが斬ることを磨いた俺には関係なし、首に線が入りズレて落ちる。次の瞬間には身体と首は消えて観客席の方にドサッという音がなる
「勝負あり!勝者クウガ!」
バル先生の勝者宣言によって拍手やらざわめきが起こる。ざわめきはすげー、刃引きされてるんじゃなかったか?、なんだあれ、うっぷ、などが聞こえてきた。あと、きゃーやらかっこいい~なども聞こえてきた。
「やっぱりこうなったか。にしても予想以上だな」
と周りの様子を見ているとバル先生が話しかけてきた
「こうなるって分かってたんですね」
「そりゃ当たり前だ。相手の実力くらい測れんと冒険者なんてやってられんよ」
まあ、当たり前か
「おい!どんな汚い手を使ったんだ!普通刃引きの剣で人なんて斬れねぇだろ!」
いや、普通じゃないだけなんだが。
「刃引きされてないの使ったんだろ!反則だろ!」
どうしたものか
「おい、オストロ」
「なんすか!」
バル先生がオストロに声をかける
「こいつの剣はしっかりと刃引きされている。へんないいがかかりなどつけずに負けを認めて大人しくしていろ」
「な!?俺は負けてねぇ!あいつが汚い手を!」
ドンッ!
バル先生が大剣を地面に振り下ろした音だ
「ならもう一度構えろ、俺がお前の負けた理由を教えてやる」
そう言ってオストロに剣を構えさせる
「いいか!お前らもよく見て、よく聞いておけ!」
他の生徒に向けてそう言う
「ほら、はよかかってこい」
真剣な顔で攻撃を促すバル先生
オストロは理解が追いつかないのか変な顔をしているが俺の時同様、距離を詰めて剣を上段から振り下ろそうとする。
ギィン!
剣と剣のぶつかる音がしてオストロの武器が手から弾かれる
「敵の前で大振りに振り上げて隙を晒す馬鹿がどこにいる!?狙いがあるなら構わんがお前のはただの考えなしだ。そんなんじゃ負けて当たり前だ。早く拾って続けろ」
オストロは攻撃を再開する。一応はさっきの助言を聞き大振りではないが
ギィン!とまた弾かれる今度は手からすっぽ抜けることはなかったが。
「ダメだ!力みすぎだ!剣筋がブレブレだし剣速も遅い。次は武技を使ってこい」
武技の使用を促され先程俺にも使った十字斬の発動体勢をとる
剣から赤い光が発せられると武技が発動し十字の赤い閃光が見えた。が、しかし
ギギィン!
とバル先生の大剣にも関わらずかなりの速さで繰り出された斬撃により相殺。いや弾かれた。
「武技の補助に頼りすぎだ。詳しいのは武技訓練でやるだろうが補助頼りなんかではどこかで躓く。取り敢えずお前は体力作りからやり直しだ」
「んな!?それは」
「なんだ、文句があるのか?あんだけしか動いていないにも関わらずもうバテバテじゃないか。さっさといけ」
そう言われすごすごと体力作りをしている場所に向かった
「こん中でも自信ない奴は行っていいぞ」
すると数人がオストロの後を追うように移動する
「よし、残ったのは70人くらいか。お前らにもう一度言っとくが武技に頼りすぎるな。武技は強力だ。だが、それもしっかりと使いこなせたらの話。オストロなんかは半分も使いこなせていなかった。いいか!ひたすら剣を振り、考えろ。分からなければ俺のところにこい。俺はこれでも冒険者ランクはS。それなりの経験と知識、鍛錬を積んできた。お前らの成長を手助けしてやれる。わかったか!」
「「「「はい!」」」」
全員が返事をし、それにバル先生はニカッと笑いながら
「いい返事だ。そんじゃ模擬戦を再開する」
その後は順調に模擬戦を消化し、授業は終了。終わったので次の授業に向かおうとしたらバル先生に呼び止められた
「おい、クウガ」
「どうしかしましたか?」
「次ん時は俺と模擬戦な。楽しみにしとくぜ」
とそんな事を言い、獰猛な笑顔を残して行ってしまった。
その時の顔と目を見て確信した。
あ、あの人も戦闘狂だと。
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