Heroic〜龍の力を宿す者〜

Ruto

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2章

68:速やかに行動します

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緊急事態が起きた事を確認して直ぐ様、俺達は行動を開始した

フレッドに1から説明している暇など無いので、フレッドを担いで転移陣を使って入口へと戻った

フレッドが少し喚いたが無視して、外への階段を一足跳びで駆け上がる

「ソウマ!」

階段を上がりきって外に出れば、アルクスの方でドラゴンが多数飛んでいるのを捉えた

転移をする為にソウマに手を出しながら呼びかけた

それだけで俺の意図を察したソウマは俺の手を取る

それを確認して、学園の正門へと転移した

「え?」

フレッドが間の抜けた様な声を出す

ソウマは着いてすぐに全速力で校舎に向かった

ナキアさんから緊急事態の知らせが入ったから様子を見に行ったのだ

向こうはソウマに任せればいいから俺は街の人達だな。フレッドは……まあ、後で説明すればいいか

混乱するフレッドをそのままにして一先ず、安全確保の為にスキル、【領域の支配者】を発動する

このスキルはエクストラスキル。その効果は絶大だ

俺が指定した領域は俺の支配下に置かれるとだけスキルの説明欄には記されている。スキルは効果が曖昧なほどその発揮する力が大きい傾向にある

これもそのうちの1つだ。領域の指定は俺の処理能力に左右され、支配するのは領域内の物、人、動物、魔物、全てに及ぶ

まあ、やりたい放題出来るわけです

上向けた掌から4本の紅い特徴的な形の短剣が生成される。これが領域を指定する為の楔、今回は指定する領域をこのアルクスの外壁に合わせる。4本の短剣が4方向に別れて飛んでいく

その速度は途轍もなく速く、直ぐに領域の指定が完了する。完了したと同時に敵の立ち入りの禁止、既に中に侵入していた敵を外へと追い出して安全を確保する

これで一先ずは安心だ。被害者もいないみだいだから良かった

じゃあ、次は戦力の確認かな。【魔力感知】と【気配察知】使い敵の数を弾き出す

敵は……突出した強さのドラゴンが3、大体同じくらいの強さのドラゴンが5200、それと人が2000って所だね

狙いが何か分かんないから1人は生かして捕らえよう

ドラゴンは一般的に強いと言われていても所詮はAランク。それほどの脅威では無い。5200は中級竜で3の方は古竜かな、結構強い方だけど龍には及ばない

数が多いし、逃すのも勿体無いからさっさと始めよう

アイテムボックスから2本の連結剣、6本の剣、4つのチャクラムを取り出して飛剣にて操る。最初こそ魔力で剣を作っていたがリンガと父さんに作ってもらった物を操った方が良いということに気づき、こうなった。だが、今回は敵の数が数なので魔力で剣を増やす。100本あれば充分かな

浮かび上がる、100を超える剣

魔力で作った剣の属性を変えていき、煌びやかになる宙に浮く数多の剣

俺は背中から翼を広げ、腰に下げていたふた振りの剣を抜き放つ。上空を見上げ此方に先程からブレスを浴びせようとしたり、侵入しようとしているドラゴン達を見据える

殲滅を開始する



~~~~~~



その光景は、冗談としか思えなかった

中級竜とは言えども力の、強さの象徴とも言われるドラゴンがそこいらのゴブリンの如く殺されていく

それを成しているのは銀と金の化け物

魔王様の命によって、ある餓鬼どもを始末しにこのアルクスという都市に過剰すぎる戦力を持ってして、奇襲した

条件をあまりつけない魔王様にしては珍しく付けられていた条件。人質を取って確実に始末しろとの条件だったので、ターゲットがダンジョンに向かったのを確かに確認して全戦力を始めから投入して、人質を確保しに隠密に長けた手練れを数人送り込んだ

其処までは良かった筈なのだ。陽動として中級竜のブレスを一斉に放って結界を破壊した

そうして、適当に蹂躙しながらターゲットが戻ってくるのを待つ筈だったのだ

しかし、それは出来なかった。急に展開された最初にあった物よりも数段上の結界により、攻撃が一切通らず、侵入すら出来なくなった

そして、目標の1人が蹂躙を開始した

100以上の剣が空中を浮遊し、飛び回る。ドラゴンの命が、部下の命が線が走る度に消えていく

更にそれを操る当の本人も自ら飛び回り、両手に持つ剣と、背中に生やす翼で持って切り裂いていく

時には強力な魔法まで放たれ、1度に多くの戦力が削られる

そんな蹂躙が続く中、別の場所から金の魔力を揺らめかせたもう1人のターゲットが戦いに参戦し蹂躙が加速した

何故こんなにも早くにターゲットが舞い戻ったのだ!

しかも此方の戦力が次から次へと殺されていく

聞いてないぞ!

強いとは聞いていたがここまで強いなんてのは話が違う!

何なんだ、あの空を自在に飛び回る剣と

乱れ飛ぶ威力の可笑しい無詠唱の魔法

そしてそれを成しながら自らも戦う銀髪の竜人と金髪の狼人は!

あの、強さに絶対の自信を持つ3体の古竜でさえも怖気付いている

しかも、人質を捕らえに行かせた者からも連絡が何もない

恐らくあの何方かに既にやられてしまったのだろう

く、くそ!

どうすればいい!

周りには自分よりも弱く、頭の悪い部下。盾にしかならないような奴らしかいない

そして、化け物達は怖気付く3体の古竜との戦いを開始した

この隙に撤退したい所だが来るときに使った転移のマジックアイテムのチャージがまだ終了していない。普通に逃げたのでは確実に殺される。それだけは分かる

そんな風にグズグズしていると、古竜が1体倒された。他の2体もすぐに倒されてしまう!

何か!何かないのか!

其処まで考えて私の目の前が真っ白に染まった。何が起きたのかは理解できなかった。ただ微かに何か獣の雄叫びのようなものが聞こえた気がした



~~~~~~



状況が動いたのは殲滅を続けて古竜の3体と戦闘を開始し、その内の1体を倒した時だ

突如、遠方から特大で強力なブレスと思われる攻撃が俺に向かって放たれたのだ

ブレスは間にいた敵を消し去り、俺の前にいた古竜を貫通して俺に迫ってきた

俺は直ぐ様、障壁を10枚展開した。しかし、目算が甘く障壁は一瞬だけ拮抗するも容易く破壊されてしまった。俺は拮抗した僅かな時間で退避していたので直撃は免れたが、とんでもない一撃だ

追撃が来なかったので攻撃の来た方向を確認した

其処にいたのは異形と表現する他ないものだった

その姿はキメラに近い。色々な生物の特徴を無理やりくっ付けたようだった

背中から生える2対ある翼と羽。腕は人の物が4本。頭には1つ1つ違う7本の角。足はドラゴンのよう。刺々しい尻尾まで生えている

そんな姿だが顔は人間の物

そして、俺と異形の視線が交錯する

その瞬間感じた衝動

戦え

そんな誰かに決められたかのような、命令されたかのような衝動

しかし、俺自身の直感も戦えと言っている

普段は外れることの多い俺の勘だが、こと戦闘に於いては冴え渡る

ならば衝動のままに、直感のままに

「ソウマ、アレとは俺がやんなきゃいけない気がする」

隣に移動して来ていたソウマに声をかける

「ああ、行ってこい。俺の直感もお前じゃなきゃ駄目だと言ってる。ただ、気をつけろよ」

俺の事を考え、気遣ってくれる親友に感謝しながら返事を返す

「ああ、行ってくる。掃除は任せたよ」

「おうよ」

強敵と戦える喜びと、突き動かしてくる衝動を胸の内に納めながら異形の元へと飛んだ



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