80 / 122
2章
78:気持ちの整理と……
しおりを挟むグレイス先輩の挙動から少し不安に思いつつも、今後についての話し合いをしてから別れ、部屋で考え事をしていたら日が暮れてしまった。ソウマが帰ってきて、気づいた
長い時間考えていたのはグレイス先輩のこと
グレイス先輩との偽恋人を演じるのは暫くは続けていくこととなった。急に断ってしまうのもなんか悪いと思って了承したのだ
グレイス先輩は俺に好意を持っているかもしれないと思ってしまったらずっとその事について考えてしまった
まあ、嬉しくてそれしか考えられなくなったとかではなくて、どうしてこうなったのかを考えていた
自分は何人もの女性と関係を持ちたいとは思っていない。まあ、複数の人を平等に愛する自信がないと言った方が良いだろうか。それに、もし俺が女性の方で自分の愛する人が他の女性も好きだと言い、俗に言うハーレムを築いたのだとしたらと考えた時、自分の中でドロドロしたものが蠢くのを感じた
だから自分は1人の人を愛そうと随分前から心に決めている
俺のお嫁さんとして自分の隣を一緒に歩いて欲しいと思えるのはラキアだけ。だけど未だにこの気持ちは伝えられていない
もし、彼女が駄目だと、無理だと言うなら諦める。そう思っていても好きな人に拒絶されるかもしれないと思うと辛い
そして、それを分かっているから俺はなるべくラキアやナキアさん辺りの女性以外には多少なりとも気を配ってきた。あまり深く関わらないように。好きになられないように
好きといっても色々とある。俺が気をつけてきたのは、愛へと変わる好きだ。添い遂げたいと、そう思うような
もし、告白されたなら俺は断ってしまう。そしてきっとその断られた人は悲しい思いをしてしまう。だから、気をつけてきた筈だった
ソウマ達近しい人達以外の前ではポーカーフェイスで感情を表に出さず、近寄り難い雰囲気を出してきた
けれども、やはり徹底的にやっていなかったからなのか、俺の予想であって確かな確信などないが、グレイス先輩が俺に対して好意を持ってしまった
もし、これが貴族として親に言われて仕方なくだとか、打算的な考えの元での表面だけの好意なら何も俺の心は痛まなかった、悩まなかった
だけど、分かってしまった。それが、誰かに言われたからそうしているというような紛い物ではないことが
悲しい思いをさせたくないのなら、断らなければ良いのだと思った。それか気にしなければ良いと思ったこともある。けれども、気にせずにはいられない。心変わりが悪いものだと思ってはいないけど、これは曲げたくはないと少なくとも今は思ってる
こういったことの話はソウマと何回かした。あいつは来るもの全てを受け入れるわけではないけれど、絶対に1人と言うわけでもない。既に1人ではないし
あいつは言っていた、「女の人を養うのは男の甲斐性であり、強さを持つものの定めであり義務だ」と。あいつの言いたいことも、どうしてそういう考えがあるのかも分かっている。あいつの女となった人達がそれを当たり前のように容認していることも知っている
けれども俺の気持ちは、思うところは変わらなかった
父と母の幸せそうな生活を、姿を、この目で見ていた。自分もあんな風になりたいと、幼いながらに思い、夢見た
そして幼い頃に母が好きだと言いながらよく読んでくれた、昔あったとある国の騎士の物語。幼い頃に将来を誓い合った騎士と王女。しかし、王女は病で亡くなってしまう。騎士は強かった。当然のように女性からのお誘いがある。けれども彼は誰にも応じず、ただ鍛錬を続けた。騎士は誓ったのだ、泣きながら、死にゆく王女に
「僕が唯一愛した、君が愛するこの国を僕が護るよ。僕の生涯を君の騎士として捧げよう」
そうして騎士は、約束を守った。そして、その生涯を独身のまま終えた
綺麗だと
そう思った
そして、憧れた
その騎士の生き様に
その在り方に
だから俺はグレイス先輩の気持ちには答えることが出来ない。たとえ2番目でいいと言われても俺が許容できない。それは少し驕りが過ぎるかな
だから考えていた。早めにこの事を伝えて悲しい思いをさせてでも諦めてもらうか。告白されないように、立ち回るか。気付かないフリをし続けるのか
結局答えは出なかった。こういった明確な答えが無いものはやはり難しい
けれどもこれが青春ってやつなのかな? ちょっとズレてる気がしないでも無いけど
学校を卒業すれば、目標に向けて全速力で突き抜けるだけ。今この時しか、こんな事は考えていられないだろう
明日からはまたダンジョンだ。気持ちを切り替えないとね
~~~~~~
「くそが!」
割れた花瓶や、倒された家具が散らかされた部屋で1人の男が苛立たしげに暴れて更に散らかった部屋を酷いものにしていく
自分がやらないからといって好き放題だ
「何故だ何故だ!何故思い通りにならん!私の物にならんのだ!」
男は疲れたのか、動きを止めて額に浮かんだ汗を乱暴に拭う
「これもあのクウガとか言う奴のせいだ!グレイスは俺の物だ! あいつになど渡してたまるか!」
他人が聞けば可笑しいと思う言葉でも本人はそれが当然だと、間違っていないと思っているのだろう。何がそこまで男に自信をもたらすのか
「彼奴さえ居なくなれば……」
男の呟きが静かになった部屋に妙に響いた
そして
『我がその願いを叶えてやろう』
突然の声
「だ、誰だ!」
急に聞こえた声に対して誰何の言葉を発して周りをキョロキョロと見回す男
『我を探しているなら無理だぞ。お前には見えん』
周りを見るのをやめて先程と同じ事を声に聞く
「お前は何者だ。それと願いを叶えるとはどう言う事だ」
『我が名はエルーン。お前の望んでいた通りにクウガというものを消してやろうと言っておるのだ』
「なに!? それは本当かなのか!?」
何か分からずに声に対して警戒をしていたがつい先程まで望んでいた事が叶うかもしれないと希望が見え、警戒が緩んだ
『ああ、本当だとも。我が其奴を消してやろう。そうすらば、女はお前のものだ』
「おお!」
男は歓喜に震える
だが、もしここに第三者がいれば、その男の様子の変化に気付いたことだろう
『だが、お主にはやって貰わなければならんことがある』
「何だ、早く言え!」
『我にその体を貸すのだ』
「分かった!どうすればいい」
『簡単だ。我の問いを承認するだけだ』
「なら早くしろ!」
目は血走り、口からは汚い唾が飛ぶ。最早男は正気では無かった
『汝、我に体を明け渡すか?』
「ああ、開け渡そう!」
男がそう答えた刹那、男の狂ったような様子が変化した。血走っていた目が元に戻り、正気に戻ったのだ
「可笑しい、私は何を」
正気に戻るも、先程までのことを覚えていたのだろう。男が疑問に思っていたのも束の間
男の周りに黒い煙が現れ、纏わり付き始めた
「な、何だこれは!何が起こっている!」
男は慌てふためき、煙を払おうと我武者羅に動く。しかし、相手は煙だ。物理的なものでは意味をなさない
そして、段々と煙が増え、煙に纏わり付かれるどころが増えてくると、手足が動かせ無くなっていく
「誰か!誰かおらんのか!」
男はその事に恐怖し、喚き散らして助けを呼ぶ
けれどもその男の叫びは誰にも届かなかったようで、部屋の扉が開く事は無かった
「あ、ああ……」
男が完璧に煙に飲み込まれた
その太った体に合わせて丸いシルエットとなっていたのだが、煙が蠢き、そのバランスを変えていく
そして、先程までとは全く違うすらっとしたシルエットに変わると煙が晴れ、別人のように変わった男の姿が現れた。いや、別人へと変わったのだ
「はははははは」
歓喜を含んだ笑い声。その笑いには狂気も浮かんでいた
「やはり、馬鹿で強欲な奴はやり易い」
腕を組み満足そうに頷く男。だが、途端にその満足そうだった表情は憎悪に歪む
「やっと復活したぞ、クウガ~。今度こそお前を、殺してやる」
男は笑う
その顔に狂気を貼り付けて
0
あなたにおすすめの小説
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~
月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』
恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。
戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。
だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】
導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。
「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」
「誰も本当の私なんて見てくれない」
「私の力は……人を傷つけるだけ」
「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」
傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。
しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。
――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。
「君たちを、大陸最強にプロデュースする」
「「「「……はぁ!?」」」」
落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。
俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。
◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。
お小遣い月3万
ファンタジー
異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。
夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。
妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。
勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。
ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。
夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。
夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。
その子を大切に育てる。
女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。
2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。
だけど子どもはどんどんと強くなって行く。
大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる