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2章
87:裁定者の試練
しおりを挟む周り一帯が真っ黒な場所を
前方から差し込む光で作られた道を行く
その道程は孤独で、長くて、心細くて
けれども、前から差し込んでくる光が。時折周りに現れては消える光が
俺の足を前へ前へと進ませる
ただ、前に進む
それだけの事なのに次第に足が重くなる
足が下に沈んでいくような感覚
さらに闇が形を成し、足へ、腕へ、体へと巻き付き動きを阻害する
それでも俺は、歩みを止めはしない
体に巻き付く闇を引き千切り、沈む足を持ち上げて、前へ
闇が巻き付いては引き千切りを繰り返し、途中から痛みを感じるようになっても止まらない
巻き付いてくる闇は怖いし、引き千切る時に感じる痛みは激痛だ。もう、止まってしまおうかと考えるくらいには
だけど、その度に光が見える
俺が進む道を照らす真っ白に輝く光が
俺を励ますように現れては消える青や緑などの色をした光が
そして、己の内側。その奥の底から前に進めと、そう声が聞こえる
痛みに耐えるために下がっていた目線を上げ、前方を、進むべき場所を見据える
そこは遠く、決して辿り着く事など出来ない様に思える
でも、俺はそんな不可能に思える所を目指している
弱気になどなったら、この歩みを止めてしまったら、それこそ決して辿り着く事など出来やしない
だから1歩
また1歩
足を前へと踏み出す
闇を引き千切る時の痛みなどもう感じない
己の全てを前に進むために
歩いて遠く感じる道なら
走ればいい
全力で走ればいい
俺を拘束しようと伸びる闇を置き去りにして俺は駆ける
速く、もっと速く
ただ光のその先を目指して走る
そして……
~~~~~~
暗い水の底から浮上する様なそんな感覚と共に意識がはっきりとしてきて、目を開けた
そうして、現状を把握する
辺りを見回せば、そこは森
木々が青々と生い茂り、木々の隙間から差し込む光が影を作り、風で木が揺れる。魔物か動物か何かの声がかすかに聞こえる
そんな何処にでも有るような景色を眺めていると
「誰かー!助けてー!」
そんな悲鳴が聞こえた
俺はそれを聞いて直ぐに、悲鳴が聞こえた方向に走り出した
乱立する木々を右へ左へと避け、森を駆け抜ければ街道へ
そこでは1人の女が6人の男達に襲われる寸前だった
そんな光景を視界に捉え、走る速度を上げて、今正に襲いかからんとしていた男と襲われそうになっていた女の間に入って男を蹴り飛ばす
ドンッ! 「ぶぎゃ!」
女を自分の後ろに庇うように立つ
しかし
女を庇うようにして立ち残りの5人の男達を相手にしようとした瞬間
背後からの攻撃が繰り出された
後ろに庇った女からの攻撃だった
さっき迄のが演技だった事に驚きはしたが、躱せないはずは無かったのだ。風を切る音と殺意を感じ取った
ドスッ 「一丁上がり~」
しかし、俺の体は何かに押さえつけられたように動かず、ナイフをくらってしまった
避けれた筈の攻撃。けれど俺は体を動かさなかったのだ
今行なっているのはセルフィアトの試練。セルフィアトはこう言っていた。ある男に突きつけられた選択と似たようなものを体験してもらうと
つまり、この女からの攻撃は必ずくらうものという事。この試練の元となった男の人はこの攻撃をくらったということだろう
取り敢えず、ここに居るのは全員敵だ
ナイフには毒でも塗ってあったのだろう。女はもう終わった気でいて、緊張など欠片もしていないので女からだな
腰に差していた剣を抜き、手早く処理しようとするが、剣のある筈の場所には剣が無く、俺の手は空を切った
見てみると先程まで、渦の中に入る前はあったのが無くなっていた。それによく見たら服も違うものになっている
まあ、今はそんな重要なことでは無い。幸い体は問題ない。ならば徒手空拳で倒せばいいだけの事
女によってナイフが吹き抜かれるのと同時に右回りに反転をしながら跳び上がり、蹴りを女の頭へ。ゴキッと音がして、首がへし折れ生命活動を停止する
女を蹴った左足から着地を決め一瞬の上に予想外の事で驚き呆けている男どもに攻撃を加える
ここは手早く正確に女と同じように首をへし折っていく。殴って、握り潰して、蹴って
確認のため1人を残して全員を殺した。ここに居たのが全員ならこれで終わりだし、まだ居るのならついでに片付けてしまおう
このやり口は助けようとした善良で勇気ある人が報われない
だから、潰す
~~~~~~
アジトの場所を聞き出して全員が帰ってきた所を襲撃し、盗賊団は壊滅させた
今は街道を進んでいる
これはセルフィアトの試練だ。盗賊団を壊滅させた所で終わるのかと思ったのだが、まだ終わらない
アジトに居座ってもしょうがないと思ったので動いているだけ
捉えられたりした人などは居なかったので1人で街道を進む
どのくらい歩いただろうか、道具はないし、アイテムボックスも使えず、時計がないので正確な時間が分からない
まあ、結構な距離を進んだ所でまたトラブルだ
今度は何か馬車が此方に来ているのだが、その馬車はどうやら襲われている模様。全身甲冑を着込み馬に乗った見るからに騎士な人が5人ほど馬車に攻撃を加えており、馬車の方は御者の1人と、中に乗っている1人が応戦している状態
俺は迷う事なく駆け出した
さっきの盗賊の件もあったので警戒するべきなのだろうが、即座に観察は終え、確信を持ったので行動に移した
先ほどの盗賊の時は、観察する為に必要な少しの時間すら無かった
今回はまだ絶体絶命と言うわけでもなく、どちらを助けるべきかも分かりやすかった
騎士達の下劣な表情
御者をしながらも戦う男性の何かを背負い、守る時の表情
馬車の中から戦う人は女性
もう、これだけあれば判断材料としては十分だ
馬車は此方に来ているので俺が馬車に向かって走れば距離がグングンと縮まっていく
御者の人は騎士への対応で手一杯で片方の騎士の攻撃を止め、背後から騎士が攻撃を繰り出した
このままならば、御者の人は剣でバッサリと斬られて死んでしまうだろう
まあ、俺がそんな事はさせないのだが
剣で斬撃を飛ばす時の応用で拳によって空気の塊を打ち出し、御者の人へと後ろから斬りかかろうとしていた騎士に飛ばした
ボッと音を立てて、俺の拳打によって打ち出された空気の塊が騎士に直撃。鎧を盛大に凹ませながら騎士は吹き飛んでいく
突然、1人の騎士が吹き飛んだ事で御者も他の騎士達も周りを確認し、俺を発見したら警戒を露わにする
御者の人には後で説明するとして、片付けを終わらせよう
馬車は止まらずにまっすぐ進んでくる。交差する前に俺から見て右側を先程と同じように空気の塊を打ち出して始末する
今度は全員が俺の方を見ていた為何かをしたのはわかった筈だ。だが、空気の塊は見えにくい。右側にいた騎士達は避けきれずに鎧を破壊されながら転がっていく
そして、馬車と交錯
「死ね!」
という言葉と共に斬撃が俺に繰り出されるが、それを体を僅かにズラすのみで避け、手刀で鎧の隙間を切断して首を刎ねる
「ひっ、ひいぃ!」
最後の騎士は自分以外の奴がやられたことに気づき逃げようとする
が、騎士は馬に乗っており急な静止に反転は不可能。何とか止まろうとした騎士へ向けて跳び上がりながらの回転蹴りをお見舞いした
このまま死体を放置すれば通行の邪魔になるだろうと思い、道の脇に移動させれば、馬車が戻って来た
馬車は俺の横で止まり、扉が開く
中から出て来たのはドレスを来た、陽の光を浴びて光る金の髪を持つ少女。年は15か16くらいだろうか
「助けて下さりありがとう御座います。私はアイリス・ラル・ウルシャギナ。ここウルシャギナ王国の第2王女です」
助けたのは王女様だったみたい
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