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2章
88:希望の光
しおりを挟む「なあ、セルっち~」
「わ、私のことかい?」
ソウマにいきなり変な呼び名で呼ばれて微妙な顔をする大天使セルフィアト
「そうそう。クウガが戻ってくるまでどんくらい?」
「その呼び名は不本意だが今は置いておこう。早くて10分。遅くて20分もすれば戻ってくるよ」
「わかった。あんがと、セルっち」
クウガはセルフィアトにお礼を伝えると空中から降りてきて、その場で寝転がった。寝て時間を潰すつもりなのだろう
「ああ、そうだソウマくん。君に聞いておきたいことがあったんだ」
「ん?」
寝る体勢になっていたソウマが体を起こし、セルフィアトの方を向く
「君は彼を、クウガを裏切らないと誓えるか」
どちらかと言えば女性寄りで柔らかな表情をしていたセルフィアトはその雰囲気を一変させ、底冷えのするような声でソウマに問いかけた
ソウマに対しての質問であって己に対してのものではないのに、背中にびっしょりと冷や汗が
そんな重圧に晒されてもソウマはその姿勢も態度も崩さずに何時ものように答える
「はっ!そんな事は絶対にありえねぇ。意見が対立しようが、女を取り合おうが、喧嘩しようが、俺があいつを裏切る事は絶対にねぇよ」
「そうか。では、彼の秘密と背負う運命を知ってもなお君は同じ事を言えるか?」
「あぁ?何のことだよ」
無い、とそう断言したソウマに意味深な笑みと共にそう問いかけるセルフィアト
僕からしたらこの場はとんでもなく居心地が悪いので早くクウガには戻ってきてもらってセルフィアトには帰ってもらいたいな~
「彼は君の事を友達だなんて思っていない」
え?
「せいぜいが使える駒といったところなんじゃないかな」
それってどういう……
ソウマの方を見るが、此処からではソウマの表情は見えない
クウガがソウマの事を友達だと思ってない? そんな事あるの? でも天使は嘘がつけないって遺跡で見つけた文献にあった筈。じゃあ、本当に?
「ショックなのは分かる。だが、彼を責めないで欲しい。なんせ彼は「感情が殆ど存在しないから、だろ?」! 、知っていたのか」
「えっ?」
ど、どういう事? クウガは普通に笑ったりしてたのに感情が存在しない?
「知ってるに決まってんだろ。俺は馬鹿でも鈍感でもねぇ。それに何年一緒に過ごしてきたと思ってんだよ。つまりだ、あんたはクウガの感情を偽物だと言いてぇんだろう?」
「……」
「沈黙は肯定として受け取るぞ。1つ聞こうか、あんたはどのタイプだ?」
「!? 。何故君がそれを知っている!」
「そんなのはどうでも良いだろうが。答えろよ」
んー、いきなり分かんなくなったぞ。何さ、タイプって
「創られた者だ」
「ふーん。んじゃあ、それを踏まえて聞くけどあんたの感情は本物か? 本物の感情の定義は何処にある?」
セルフィアトは答えない。ソウマの事をじっと見ている
なんか、何時ものソウマと全然違う。それに戦っている時の感じとも違う
「本物か偽物かなんて意味ねぇよ。それにクウガは俺の事を親友だと思ってるし、俺も思ってる。そこを否定すんのは誰であろうとも許さねぇ。例え、古の大天使でもな」
「何だ、私のこと知っていたのかい」
「いや~、今さっき思い出したばっかし。そんで? 俺は合格かい?」
ちょっ、ちょっと待ってよ何かいきなり場の雰囲気が変わっちゃったんだけど。しかもソウマの声が弾んでる。ぜっっったいに! あのニヤニヤとした笑い顔してるよ!
「そこまでバレていたのか」
「ああ、感覚的にそうなんじゃねぇかってな。まあ、勘だな」
「-----」
「何か言ったか?」
聞き取れない声で何かをボソボソっと呟き、ソウマ、僕、ラキアさん、ルルくんと視線を動かすセルフィアト
「いや、何も。それよりも、君は合格だ。後は彼次第だよ」
セルフィアトはそう言葉を発し、クウガの消えた渦に視線を移した
~~~~~~
王女様を助けてからは完全に体は動かせ無くなった
1歩後ろで誰かの後を追っているような感じで場面が過ぎ去っていく
いや、これはセルフィアトが言っていた通りに俺の知らない誰かの記憶を体験しているのだろう
過ぎ去るような速さで流れていく記憶。その中でみろと言わんばかりにゆっくりとなる時がある。その時は体がある程度動かせる
魔物に襲われた村に駆けつけた時
襲われていた馬車を助けた時
王との謁見の時
それら全ては人間の醜さを、弱さを見せるものだった
村を助けてもらった筈の村人達はもっと早く来なかった事と被害を抑えれなかった事を責め、石を投げつける
助けられた馬車の持ち主だった奴隷商人の罠
王や貴族達の理不尽な要求
そして……
~~~~~~
「なんで、なんで、血が、血が止まんないよ」
泣きじゃくる少年が、胸を貫かれ血を流す女性の横でどうにかしようと必死になっている
「もう、どうにもなりませんよ。涙を、なが、さないで。ゴフッ……」
「死なないでよ、アイリスっ」
倒れる女性は俺が助けた王女だ。そしてこの少年がクウガの体験している経験をした張本人
唐突に現れた悪魔の攻撃から少年を王女が庇ったのだ
「僕、アイリスのこと好きだよ。死なないでよ」
涙を流し、必死に自分の思いを告げる少年を王女は優しい眼差しで見る
この間にも一緒にいた仲間や騎士達が悪魔と戦っている
そんな中で王女は最後を悟り、心の内を曝け出す
「エルス、私はね貴方のことを利用するつもりだった」
「え?」
「でもね、貴方のことを、輝いていて真っ直ぐな貴方のことを、好きになってしまった。自分も弱っちい癖に弱い者、困っている者、泣いている者、助けを求める者を放っておけない貴方のことが」
今にも消え入りそうな声でそう言って、儚い笑顔を少年、エルスに見せた
「あ、アイリス?」
その今にも無くなってしまうような笑顔から死んでしまうことを意識してエルスの言葉が震える
「私は好きだよ。それに、貴方は本当は凄い人なの。私はもうこの先を一緒に歩めないけど、貴方なら世界を、暗い闇が立ち込める未来を……」
言葉が止まる
「アイリス?」
返事がない
「ねぇ、アイリス。返事してよ」
涙が止まらない。エルスは顔を俯かせる
そこに見たのは安らかに眠ったようにしか見えないアイリスの顔。けれど握った手は冷たくなり始め、死の実感が押し寄せる
そんな所に声が聞こえる
「ぎゃあ!」
「うぅ」
「い、いでぇよ」
「だれか、助けて……」
悪魔にやられた騎士達の声
「ぐぅっ!」
「リガ!」
エルスの仲間の1人が悪魔の腕振りで飛ばされる
「ここで仕留めるんだ!絶対に行かせるな!」
行かせまいと、声を出し、悪魔に立ち向かう仲間達の声
そして、思い出す
アイリスの言葉
そして、エルスを光が覆う
その光は大いなる力の発現
この混沌に満ちた世界の闇を払う希望の光
ここから彼の救世主としての過酷な道のりが始まった
~~~~~~
記憶の体験が終わったのか、俺は白い空間に1人、ポツンと立っていた
というか、あれで終わりなのか? 結局試練らしいことはなかった気がするんだが
正直拍子抜けな気もする
そんな事を1人考えていると
俺の前にセルフィアトが現れた
「お疲れ様。最初に言っておくけど記憶の追体験はついでだから」
「は? つまり、他に試練みたいなことがあって、しかも既に終わってるってことか?」
「そういう事。追体験で君を試すのは記憶の一時封印とかリスクを負わないと意味ないからね。そして、試練は合格だ。ここから先、何かあれば私は君の力になろう」
ちょっとばかし納得がいかないが、セルフィアトの力を頼りに出来るというのはかなりデカイ。それに免じてよしとするか。何か理由があるにしても本人が分かっていなさそうだし
「じゃあ、ここから出ていいか? ソウマ達に色々と話さなきゃなんないからね」
「ああ、いいよ」
了解を貰ったことだしさっさと戻ろう
此処はセルフィアトの魔法が作り出した特殊な空間。空間であれば時空魔法により、移動が可能だ
転移を使い、ソウマ達の待つ場所へと帰還した
~~~~~~
「エルス、君の言った通りに星が集い、成長しているみたいだ。君の成し得なかった事を彼等なら成し遂げてくれるかもね」
クウガが去り、1人残ったセルフィアトが独り言をこぼす
それは、誰もいないこの空間だから漏れた本音
そしてセルフィアトは表情を真剣なものにして
「だけど、あのクウガを取り巻く力とプロテクトは
何だ? あれは神ですら及ばない程の力だぞ」
自分の魔法がクウガに使えなかった理由。クウガにはリスクを伴うからと言ったが、実際のところは、クウガに弾かれたからである
本人が弾いたわけではない。クウガを取り巻く何かに弾かれたのだ。それによってそのあり得ないほどの力の存在に気づいた
「あの方に聞けば分かるだろうか」
セルフィアトは心当たりをつけながら自分も帰還した
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